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Voice of Japan 08
日本のサステナブルは砂上の楼閣!?

3行でまとめると:

  • 「サステナブルに疲れていない」という声が多いが、本音は懐疑的に捉えている人が多い
  • 解決に向けて:「弱みは強み」とする表現が生活者との共感を生む
  • 結果、等身大のブランドコミュニケーションがブランド自体をサステナブル(持続可能)にし、社会全体のサステナビリティにつながる

イントロダクション

2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発目標」SDGs(Sustainable Development Goals)が策定されて以降、日本の企業においてもサステナブルな活動が活発になっています。SDGsで掲げられた目標は地球を守るためにとても大切です。しかし企業が「サステナブル」という言葉を乱用し、実態の伴わないうわべだけの活動を行うなど、「サステナブル」という言葉に違和感を抱いているひとも多いのではないでしょうか。

インターブランド・ジャパンでは、生活者オンラインコミュニティRIPPLEを通して生活者300名と継続的な対話をしました。生活者が「サステナブル」というパワーワードを一体どのように感じているのか解剖し、日本の企業のブランドが今後追い求めるべき新しいサステナブルに関する表現について探索しました。

日本にはサステナブル疲れが蔓延?

まずは生活者がどれだけサステナブルにうんざりしているか、サステナブル疲れを感じているのかアンケートを取ってみました*。

結果、7割弱の生活者はサステナブル疲れを感じていないという予想外の回答でした。メディアやSNSを見渡すと、「サステナブル疲れ」という言葉が「サステナブル」と同じくらい使われている感触もあったのですが、単なるバイアスだったのでしょうか。

サステナブルという言葉・概念がどのように市民権を得られているのか確認のため更に深掘ってみたところ、多くの示唆に富んだコメントが飛び交いました。

『いかにもしっかり取り組んでいますという、周りに見せる表面的なものだけで、本当の意味での実益を考えていないのではと思える』60代男性

『言葉は形骸化しがちなもの。企業もサステナブルという言葉のみを声高に使うのではなく、問題は中身、実行力だと思います』50代男性

サステナブル包囲網に終始囲われながらも、生活者は受け取る情報をコントロールできるので、一見すると不満を感じていないように見えます。しかし一皮むけば懐疑的なコメントが半分以上のひとからでてくるということは、実際は無意識に防波堤をつくっているひとが多いとも言えます。そして「サステナブル」という言葉にリアリティが不足しているという意見が懐疑論の根っこに共通していることがわかります。日本においてサステナブルというパワーワードは砂上の楼閣に過ぎない、そのように感じてならなりません。

砂上の楼閣はどうやって突破する?

サステナブルという言葉が砂上の楼閣にであったとしても、地球規模で起こっている問題に対して傍観すればいいわけではありません。この調査の中で、サステナブルという言葉は表現方法によってはブランド毀損につながることも生活者は教えてくれました。どのブランドにとっても、このジレンマを突破するカギは大きな手がかりになります。そこで最後に、生活者に3つのサステナブル表現に対する評価をしてもらいました。

  1. Fact Based(サステナブル活動をすることによる地球への影響をデータで提示)
  2. Marketing Based(サステナブル活動をすることによる生活者へのメリットを訴求)
  3. Communication X(情緒的表現)

このうちFact Based とMarketing Based はすでにおなじみの表現手段ですが、少し角度の違うCommunication Xが他の2つの表現と同等もしくはそれ以上の評価を得たことが今回わかりました。これまでの表現方法で既にサステナブルに懐疑的なタイプにとって、代替え表現となりそうです。具体的にどのような感想だったのでしょう。

『全体的な口調として、地球が可哀想だからお涙頂戴的なトーンが終始漂っています。しかし・・・現実を上手く捉えながら今後の課題をさり気なく提起していて上手い表現だと思った』50代男性

上のコメントはネガティブな意見である反面「上手い表現」という言葉が示唆的で「一般的には聞かない表現だが新しく感じて印象的だった」という解釈もできます。

別の方は

『消費者の考えを理解している部分の切り口はオモシロイなと感じ、ストレートで良いと思う。お店も消費者とサステナビリティの間で板挟みになる形なのであれこれかくよりわかりやすくていいんじゃないかと思う』40代女性

というコメントで90点、そしてさらには99点の評価コメントがこちらです。

『思わず同意、頷きを誘う書き方でお客様に対して優しく感じられます』60代女性

「上手い表現」とおなじく「オモシロイ」や「思わず同意、頷き」という言葉からはポジティブな意表の突かれ方というニュアンスが込められています。Communication Xから新規性を感じ、生活者の心に変化をもたらしていることがわかりました。

Fact BasedとMarketing Basedが一般的な表現手法であることに対して、Communication Xは残り2つの表現と同じくらいもしくはそれ以上の評価を得たのみならず、「サステナブル」に対する生活者の思考を広げて新たな可能性を見せることができました。砂上の楼閣を突破するカギになるのではないかと考えました。

Weakness is Power

ブランドが機能的なメリットだけを消費者に伝えるのは時代遅れだということは既に広く知られているところです。サステナブルの文脈においても情緒は欠かせない要素ですが、情緒をどのように活用するべきかはまだまだ探求する余地があります。そこでCommunication Xでは、ブランドのある意外な特性に着目してみました。

その特性とは「弱み」です。ブランドのポジティブな側面を機能や情緒で訴求するのではなく、むしろネガティブ要素でもある弱みを積極的に開示することによるコミュニケーションに挑戦しました。

この意外な表現スタイルが生活者に受け入れられた理由は、サステイナブルにまつわる「砂上の楼閣」の感覚と密接につながっていると思います。実態がないものをさも存在するように偽るのはもってのほか、むしろ実態がないのならそのままの自然体を見せるべきなのではないでしょうか。

『正直ですばらしい。どうせならもっと正直になってほしい』40代男性

『正直な感じが、協力したくなる』40代男性

『「私たちも悩んでいます」というのが正直でわかりやすい』40代女性

ある方はこのような表現もしてくれました。

『ちゃんと欠点も述べていて、それでも納得してくれる人にわかりやすく説明しているのがガチャピンっぽい感じがした』40代女性

このように、Communication Xではブランド自らが弱みを露わにすることにより理想と現実のギャップが埋まり、生活者との共感が生まれていると考えています。

サステナブルを謳って消費を促すアパレルブランドを例にとってみましょう。エコな素材を利用しているのにもかかわらず、生産地では小さな子供に重労働をさせていたとしたら不祥事になるのは明らかです。この場合は

「子供たちに重労働をさせないと洋服としての持続可能性は担保できません。しかし、子供の人生にとってそれは持続可能ではありません。よって私たちの洋服はエコな素材ではないし安くもできません」と自信を持って表明するべきなのです。

生活者もこのように言ってくれています。

『最近はサステナブルを謳っている企業は多く、それ自体は良い取り組みだと思いますが、サステナブルよりも各々の個性や魅力を発信できる企業やブランドの方が素敵だと思います』30代女性

重要なのは主語がブランドであり、完璧な人間がいないのと同じくサステナビリティのために無理に完璧なブランドに見せないことです。ブランド自体がサステナブル=持続可能であり続けられるよう、できることできない事をはっきりさせることです。

等身大の魅力に目を向ける

前代未聞のグローバルな問題に対して設定されたSDGsは大変すばらしい取り組みです。ですが「サステナブル」という言葉に流されてしまうのではなく、まずはブランドとしての等身大の魅力を見せることに注力してみてはどうでしょうか。

リアルな生活者の声をもとに、今回私たちが導き出したHUMAN TRUTH(人の真理)を皆様のブランドコミュニケーションでも是非活用してみてください。ブランド自体がよりサステナブル(持続可能)になり、やがてそれが社会全体のサステナビリティにつながることを願っています。


クリエィティブグループ・デザイナー
山崎大作

グローバルITブランドの営業経験を経てデザイナーに転身後、制作会社にて主に中小企業のグラフィック開発に携わる。その後フリーランスとして自身のブランド運営を行いながら、国内SaaSスタートアップと組んでブランド開発に従事し、広告制作、パッケージデザインやサービス設計など多岐にわたる領域を経験。2022年インターブランドに参画。

※今回の調査を通して多くの会話を生活者と実施し、サステナブルに対する日本の心理的な生活者像がより鮮明になりました。ご興味のある方はこちらへどうぞ→日本のサステナブルは砂上の楼閣!? アーキタイプ編