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Voice of Japan 14
日本の幸福度はなぜ低い?ショッピングと幸福度の関係

3行でまとめると

  • 消費行動(ショッピング)と人々の幸福度は密接に関連している
  • なかでも、人や社会とのつながりを実感できる消費行動「つながる消費」が、幸福度をよりアップさせる
  • 商品・サービスの訴求やコミュニケーションを検討する上でのヒントは、「つながる消費」+5つの要素

イントロダクション

最近、いつ「幸せだ」と感じましたか?
友人や家族との旅行ですか?
SNSでたくさん「イイね!」がついたときですか?
環境保全へ寄付をしたときですか?
欲しかった洋服を買ったときですか?
大切な人に贈り物をしたときですか?

―そのときあなたは、どんな気持ちでしたか?

経済心理学者のBrown氏とGathergood氏の研究(※1)によると、生活満足度には収入の変動より消費の変化がより影響を与えるとされています。たとえば、人は収入を得たときよりも何かを買ったときの方が充足感や幸福を感じやすいのです。欲しい商品やサービスへの対価として、苦労して捻出した時間とお金を費やすわけですから、当然のことかも知れません。では、具体的に、どのような消費活動が人々の幸福度アップにつながるのでしょうか。
インターブランド・ジャパンでは、生活者オンラインコミュニティRIPPLEを通して、様々な年代からなる生活者300名と継続的な対話を行い、日々変化する暮らしの状況に合わせて人々の内面はどのように変化しているのか、理解を深めています。今回はRIPPLEコミュニティのメンバーのコメントを元に、「ショッピングと幸福度の関係」について生活者の心理を紐解いてみました。

1. 日本の幸福度が低い理由は、”主観的幸福度”の低さが原因

世界各国の幸福度をランキングで示した、『世界幸福度レポート2023』(※2)では、日本は世界47位、主要7か国(G7)の中では最下位という結果です。アジア有数の経済大国とされる日本において、この結果は信じ難いものかも知れません。確かに、GDPの高さや健康寿命の長さから測られる“客観的幸福度”では、日本は高い水準を誇っています。しかし、その一方、社会的関係や身体・精神的疾患、経済的な自由度、社会に対する信頼感などから測られる“主観的幸福度”が世界的にも著しく低く、日本の幸福度の低さの要因となっているようです。

次の段落では、主観的幸福度を高める要因を、ショッピングというテーマの中で紐解いてみました。

2. 人や社会とのつながりを実感できる消費活動が、主観的幸福度をアップさせる

記事冒頭へ記載したように、人は消費活動を行ったときに充足感や幸福を感じると言われています。社会学者Oropesa氏も自身の研究(※4)から、ショッピング(消費活動)を楽しむ人ほど主観的幸福度が高いということを証明しました。では、具体的にどのような消費活動が、私たちの主観的幸福度を向上させやすいのでしょうか?

Q. “あなたの過去の消費活動を、思い出してください。最も満足度が高く印象に残るお金の使い道は、なんですか?”

今回このような質問を投げかけ、その回答結果を観察しました。すると、日常で必要な消費(食費や交通費など)に関しては言及されず『自分のための消費活動よりも、他者のため、または社会とのつながりを実感できる消費活動が、より記憶に残り主観的幸福度アップに繋がる』という結果が見えてきました。ここでは仮に、「つながる消費」と名称をつけてみます。
さらに、回答結果を分析すると、「つながる消費」は三つに分類することができます。それぞれ下記のとおり名付けました。

一つめは『顕示消費』
購入したもの、あるいは旅先での写真をSNSにアップし、フォロワーの反応によって満足感を得たということは、多くの人が経験されるでしょう。他者からの評価が、消費活動にそれ以上の意味をもたらすというものです。

今乗っているバイクは買ってよかったと思う。趣味が増えたし、インスタのネタも増えた。

(男性50代)

二つめは『社会消費』
自分のためではなく、周りの人や社会のための消費活動です。誰かへの贈り物、環境改善のための募金など。自分以外にお金を使うことで、誰かの役に立てているという充足感を得ることができます。

高校生の時に新聞配達で初めていただいたバイト代で、母に花を買ってあげたこと。

(男性60代)

三つめが『体験消費』
いわゆる「コト消費」です。商品そのものではなく、旅行やスポーツ観戦、習い事といった“体験”にお金を費やすことで、思い出として長く記憶に残る消費活動です。

ハワイ旅行。家族5人での旅行はかなりの出費だったが、結局これが最初で最後のみんなで行った海外旅行となった。

(女性40代)

これら3つの共通点は、先述のとおり人や社会とのつながりを実感できるということす。「つながる消費」を通して、幸せだと感じる人は多いようです。
自分の欲しいものを買う、ということももちろん嬉しいですよね。では、買ったものを周りに褒められたとき、誰かへの贈り物を選ぶときの気持ち、誰かと一緒に過ごす特別な時間を想像したときなど。その瞬間こそが、商品そのものよりも高い価値を持つのだとすれば、ショッピングが幸福度に直結するという方程式にも頷けます。

3. 「つながる消費」は、5つの要素でより魅力的に

このように、「つながる消費」により主観的幸福度が上がるのであれば、私たちは具体的に、何を意識すればよいのでしょうか。コミュニティメンバーの「つながる消費」をさらに掘り下げて観察したところ、5つの要素が見えてきました。

 

「社会消費」+”Relife”, “High Cost”, “Gift”

社会人になり母親の誕生日に高級懐石をご馳走したことです。とても喜んでくれて、幸せな思い出になりました。

(女性30代)

「社会消費」+”My First”, “High Cost”

初めての給料の大半を、震災で被災された地方に寄付したこと。迷ったが、これまでで一番満足したお金の使い道です。

(男性40代)

「体験消費」+”Surprise”

家族で行った富山~福井旅行です。福井で大きなお寺さんを観光中、知らず知らず檀家さん団体の流れに巻き込まれ、うちとは全く関係のない法要に出てしまったことは、忘れられない一生の思い出です。

(男性30代)

「顕示消費」+”My First”, “Gift”

大学生で初めてアルバイトをした時に、母に春物ワンピースをプレゼントしたことです。とても喜んでくれ近所に自慢して着ていました。

(女性50代)

このように、「つながる消費」をより魅力的にグレードアップしてくれる5つの要素が見えてきました。3つの「つながる消費」にこれらの要素をスパイスとして散りばめることで、記憶に残る大切な消費活動となり、その商品やサービスをより一層意味あるものへと昇華させます。

「つながる消費」の、代表例は”婚約指輪”

以上のことを企業目線で捉えなおすと、商品やサービスの訴求方法やコミュニケーションを検討する上でのヒントになるのではないでしょうか。たとえば、”婚約指輪”は主観的幸福度をあげる買い物の代表例だと言えます。他者(パートナー)との「つながる消費」でありつつ、”Relife Moment”、”Gift”、”High Cost/Time”、”My First/Last”、”Surprise”の5つの要素がすべて詰まっているからです。贈られた側ももちろんですが、購入した側の主観的幸福度がアップする代表例です。
婚約指輪以外にも、さまざまなジャンルにおいて訴求やコミュニケーションを考える際、3分類と5要素を意識することで、幸福度の高い消費行動を促すことができます。「幸せについて考える」という挑戦を続ける企業が、生活者のニーズを真摯に追求し、さらなる発展を遂げるのではないでしょうか。

RIPPLEコミュニティでは今後も生活者の意識変化の兆候を捉えるための活動を行っていきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献


Myoung Hyang Kim 金明香 
Interbrand Japan Consultant

2023年よりインターブランドに参画。顧客視点の発想で消費者インサイトや調査など、生活者心理の紐解きを起点に、ブランド戦略策定においてクライアントを支援。