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Voice of Japan 12
ポストコロナ時代、「会社と働く人の関係」はどう変わるか?

3行でまとめると

  • 働き方を選べる時代。職場は会社と働く人が共に創るものとなった。
  • 働く人にとって「働き甲斐」よりも「働き続けやすさ」が重要となった。
  • 「働き続けやすさ」の鍵となるのが、DXによって「人任せ」をやめること。

イントロダクション

2023年、働き方についての新しい動きが世界中で注目されています。DXや価値観の多様化により、働く人と会社の関係が大きく変わろうとしているのです。この新しいトレンドに目を向け、今回インターブランドのオンラインコミュニティの20代-50代の働く人を対象に、職場に対する素直な気持ちや理想をヒアリングし、これからの会社のあり方について考えてみました。

インターブランド・ジャパンでは、生活者オンラインコミュニティRIPPLEを通して、様々な年代からなる生活者300名と継続的な対話を行い、日々変化する暮らしの状況に合わせて人々の内面はどのように変化しているのか、理解を深めています。

会社と働く人は、職場を共に創るパートナーへ

正社員の転職率の上昇は止まらず、2022年には過去最高水準を記録しました(*1)。このトレンドの背景には、以下の様な社会の変化があります。

価値観の多様化大多数が認める社会的な評価よりも、一人一人が自分らしくいられることの方が重視されています
情報やモノの選択肢の増加自分のニーズを叶えるための選択肢に溢れ、代わりのいない唯一無二の存在はなくなってきています
働き手の不足働き手の不足から人材の需要が増えており、働き手にとっては職場選びの自由度が高まっています
終身雇用文化の終了会社の見方が、人生を預けるものから、その時々の自分のニーズに合わせて自在に選ぶもの、変えるものへと変貌しています
新しい働き方の仕組み化コロナ禍をきっかけにした、多様な働き方の仕組み化が進行しています

この背景から、会社と働く人との契約関係が、生涯に亘って固定的なものから、柔軟に変化するものへと変わったことが読み取れます。そのため会社は、長く居続けてもらうために、社員の声に積極的に耳を傾けることが大切になりました。働く人を、職場を共に創るパートナーとして位置付けし直すことが必要になったということです。

このような時代にあって、最近「人的資本経営」という言葉を聞く機会が増えました。コロナ禍以前の様な決まった働き方には縛られない、一人一人に合ったスタイルで活躍できる場を提供しようという動きが広がってきています。これは、シニア世代や外国人を含めた、働く人の幅も生むことにもつながっていきます。

経済産業省のレポートでは、人的資本経営は、働く人を「効率的に消費すべき資源」から「利益や価値を生む、投資すべき資本」と捉え直し、5つの人材戦略を、「働き甲斐(動機付け要因)」と「働き続けやすさ(衛生要因)」の2つのポイントでまとめています(*3)。

職場づくりは、「働き続けやすさ」が肝

従業員一人一人の希望を十分汲んだ 雇用を続けてもらえる
「働き続けやすさ」こそ、 今の職場で勤務を続けたい最大の理由です。 (女性20代)

今回、「働き甲斐」と「働き続けやすさ」のどちらが最も重要なのかを、現在働いている人たちにヒアリングしてみました。すると、「働き続けやすさ」に多数の票が集まりました。更に、働き続けやすい職場の条件として、以下が挙げられています。

別の調査でも、「働き甲斐」と「働き続けやすさ」の重視度を聞いたところ、「働き続けやすさ」に72. 2%の票が集まったというデータがあります(*4)。この理由は、選択肢が多い時代において、他でも手に入る「働き甲斐」から得られる価値よりも、心理的な安全を保障する必要不可欠な「働き続けやすさ」にこそ注目が集まっているから、と読むことができないでしょうか?

奥さんが体調を崩し、子供の面倒を看るために早退した男性社員に対して、
「この忙しい時に本当に迷惑だ」と騒ぐ同僚たちと、
それに同調した自分自身を含めた社風に幻滅しました。
一人がいないくらいで回らなくなる職場の仕組みに問題があったのだと思います。(女性30代)

奥さんが体調を崩し、子供の面倒を看るために早退した男性社員に対して、「この忙しい時に本当に迷惑だ」と騒ぐ同僚たちと、それに同調した自分自身を含めた社風に幻滅しました。一人がいないくらいで回らなくなる職場の仕組みに問題があったのだと思います。(女性30代)

数年前は仕事中心の考え方で、休みも少なくて良いのでしっかり稼ぎたい、という気持ちが強かったですが、コロナ禍の自粛期間を経て、稼ぎよりもプライベートの時間や過ごし方を大切にし、より充実させたいという気持ちが強くなりました(女性30代)”

パワハラをする上司、自身の機嫌で他者を振り回す同僚などがいない、人間関係が和やかな職場だと働き続けたいです。(女性20代)”

男性の育休も珍しくなくなるほど、近頃は家庭の事情を汲んでくれる文化や仕組みが広がってきています。それでも日本はまだまだDEI後進国であり、理解や実践が進まない職場もまだまだ多くあります。協力し合える環境がなければ、DEIの推進や一人一人の多様な働き方を通じた「働き続けやすさ」は実現できません。

DXの活用で「脱!人任せ経営」へ

オフィスインテリアで有名なOkamura社の「PROGRESS ONE」は、物流現場の「省力化」を実現する、自動と遠隔の運転が可能なAI搭載ロボットです。働く人の深夜業務の負担の軽減、働く場所の制約の解除、障害者の可能性の解放など、現場の負担減や幅広い働き手への雇用機会づくりを可能にしました。人や現場任せにしないアイデアが、「働き続けやすさ」を創っている例といえるでしょう(*5)。また、職場の「省人化」も叶えることから、会社にとっては、働き手が不足しても事業を維持することが可能であり、今後ますます進む少子高齢化への解決策を提案しています。

労災と縁のある職場なので、人が怪我をしないような機械化された設備に変化してほしい。(女性40代)”

インバウンドのお客様の接客では、英語圏ばかりではなく、また、非言語的な部分や文化的な部分まで翻訳してくれると、キャリアや客層の幅が広がる(男性40代)”

適切な部署への適切な人員配置、正確で公平な人事評価にAIを導入してほしい(男性30代)”

働く人がDXに担ってほしい業務は、第一にいわゆる3Kの様な負担の軽減です。次いで、例えば漫画のひみつ道具の様な同時通訳ツールによって様々な言葉を話す人々と交流する機会を得るなどの可能性の解放です。

その先では、働く人が、人にしか出来ない仕事に集中することができようになります。たとえば、人間関係が重要なカウンセリングの現場や、0から1を創造するようなクリエイティブな現場、人が五感で感じるような製品やサービスの開発などです。つまり、「働き続けやすさ」に注目することが、結果「働き甲斐」までも生み出すのです。

ゼロから1を作るクリエイティブの仕事は人の力で生み出し、1〜10や100などはテクノロジーに委ねても良いと思う。(女性30代)”

何が面白いと感じるのか、娯楽に限らず仕事内容に関してもエンタメ性はひとつの答えがあるわけではないので、 そこを追求できるのが人の可能性だと思っています。(男性30代)”

生きる喜びに、どれだけ働く喜びが占めるか

「働き続けやすさ」と「働き甲斐」を通じて、働く人は最終的に「働く喜び」を得られます。一方で、これまでの「働く喜び」は、「生きる喜び」とほぼ一致していましたが、これからの「働く喜び」は、「生きる喜び」に占める一要素でしかなくなります。したがって、会社は、働く人の「生きる喜び」に占める「働く喜び」の割合を増やすことで、「働く人にとって意味のある会社」としての存在感を示せます。また、そのような働く人の活き活きとした声が、SNSや口コミを通じて新たな雇用を生むのです。

 居心地の悪い職場にいる時は、仕事がお金を稼ぐためだけの「我慢の場所」でした。働きやすく、居心地の良い職場に転職してからは、職場が「生きがいの場所」になりました。(女性50代)”

周囲の協力を得られて、一人では成し得ないことにチャレンジさせてくれる職場が理想です。(男性50代)”

最後に

会社と働く人の関係は変化していっています。これからの会社は、そもそも働き手不足の中でDXを活用して働く人の負担を軽減することが、働く人の「働き続けやすさ」と「働き甲斐」を創り、同時に働き手不足に耐えられる体質を創ることが出来るのです。その様な職場から生まれた「働く喜び」は、きっと未来を豊かにしてくれるでしょう。

出典 :
*1 : 株式会社マイナビ「転職動向調査2023年版」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20230324_46906/
*2 : Izulメディア「Z世代の特徴や他世代との違い」
https://izul.co.jp/media/others/generation-z/
*3 : OBC360°「人的資本経営とは?メリットや情報開示のルールなど“基本のキ”をわかりやすく解説」https://www.obc.co.jp/360/list/post305
*4 : Manegy「働き方改革により離職者が増加したのは3社に1社」
https://www.manegy.com/news/detail/1709/
*5 : オカムラニュースリリース
https://www.okamura.co.jp/corporate/news/product/2022/progress_one_prototype.html


Interbrand Japan Director/Creative
新井 裕介 Yusuke Arai

2010 年よりインターブランドに参画以来、企業・事業・消費財と幅広いブランドの構築経験を持つ。特にインサイト探索とストーリーテリング力が強みであり、クリエイティブと戦略をシームレスにつなぐ役割を担っている。知見を活かしたセミナー講演やインタビュー、国内外の受賞歴も有す。