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Voice of Japan 10
“実は体の健康だけでない!”健康対策に求められる価値とは?

3行でまとめると:

  • 年代を問わず「健康面での不安」を抱えている人は6割前後と多数を占めている
  • “体の健康維持や向上”を目的としてはじめた健康術を継続できている理由は“健康以外の副次的なベネフィット”の影響が大きい
  • 「健康」を価値とした商品・サービスを展開する際には、カテゴリーに捉われず、複数のベネフィットを組み合わせて提供することが顧客と長い関係性を築ける上で有効であると考える


イントロダクション

2020年3月、新型コロナウィルスによるパンデミックの宣言以来、世界の人々の生活は大きく制約されることになりました。それと同時に、健康に対する意識においても変化がみられています。東京都福祉保健局が実施した新型コロナウィルス感染症拡大に伴う健康意識の変化に関する調査結果(注1)によると、健康意識が「高まった」「やや高まった」と回答した人は8割を超えており、自分の健康に向き合う人が増えてきたことがわかります。こうした健康意識の高まりは、人々の深層心理にどう作用し、どのような行動を促しているのでしょうか。
インターブランド・ジャパンでは、生活者オンラインコミュニティRIPPLEを通して、様々な年代からなる生活者300名と継続的な対話を行っています。今回はRIPPLEコミュニティメンバーの健康意識を確認するとともに、健康維持や向上を目指し取り組んでいる日々の健康術の特徴について探索してみました。

1. 年代を問わず「健康面での不安」を抱えている人は6割前後と多数を占めている

まず、RIPPLEコミュニティのメンバーが「健康」をどれくらい意識しているかを確認するアクティビティを実施しました。将来において最も不安を感じる要素をあらかじめ「健康面(重病など身の回りの危険にかかわるもの)」「経済面(金銭的な困窮など)」「生活面(社会との断絶・孤独など)」に分解し、最も不安を感じる要素を確認したところ、若年層(20-30代)と中高年層(40-60代)のいずれも「健康」にまつわる内容が6割前後と、「健康面での不安」が最も大きい結果となりました。

若年層や中高年層ともに「健康面での不安」が最も大きい結果となりましたが、その理由は各層によって少し違いが見えています。

健康でないと生きていけない。自分の力で生活を立て直すこともできない(男性30代)

病気にかかり寝たきりや介護を必要とされる健康状態になること。生きている理由や生き甲斐が全て失われるから(男性60代)

若年層の場合、健康を失うことにより、自分の人生を自分が思う通りに生きていけないということに対する不安が大きい傾向にありました。他方、中高年層の場合、重病を患うことにより家族や周りへ迷惑をかけることや、生き甲斐を失っていくことに対する恐怖が大きいとみられます。
年代を問わず抱えている健康面での不安。その不安に対してみなさんはどのような向き合い方をされているのでしょうか。

2. 実は“体の健康”だけではない!日々の健康対策を継続する理由は「健康以外の副次的なベネフィット」

健康に対して不安を感じているみなさんは普段、健康のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。日々取り入れている健康術やその健康術をはじめたきっかけ、継続できている理由について深掘りしてみました。
すると、健康術をはじめたきっかけと継続する理由に違いがみられました。健康術をはじめたきっかけは“健康の維持や向上”である一方、継続する理由は“健康以外の副次的なベネフィット”であることがわかりました。
集まったメンバーの声から “健康以外の副次的なベネフィット”を5つのタイプに分類することができました。

一つ目のタイプは、「Refreshment」重視タイプ。健康のための取り組みを行われている際の日常からの解放感や精神的なリフレッシュ効果を体感したことが継続のモチベーションにつながっているタイプです。主に屋外でのアクティビティ(ランニングなど)やたくさん汗をかくことができる活動(サウナ、ホットヨガなど)を行っている方が
多く、心身ともに健康になることを重視する傾向がみられました。
二つ目のタイプは、「Relationship」重視タイプ。健康術を始めたきっかけは体の健康維持や向上のためではあるものの、その健康術を行う過程で生まれた人間関係が継続のモチベーションになっているタイプです。同じ目的をもって同じ取り組みを行うことで仲間意識が生まれ、その取り組み以外の領域での交流も広がり、仮に単純な運動であってもお互いが支え合いながら継続できているのが特徴です。
三つ目のタイプは、「Entertainment」重視タイプ。健康のための取り組みそのものをゲーム感覚で楽しむことがモチベーションになり、継続できているタイプです。そのために、自分の日々の取り組みを可視化するツール(アプリなど)を活用し、記録を更新していく体験を楽しんでいることが特徴です。
四つ目のタイプは、「Achievement」重視タイプ。健康のために行っている取り組みにより見た目や体の変化を実感することができ、その過程で得られた達成感が継続のモチベーションになっているタイプです。5つのタイプの中で、特に若年層(20-30代)の割合が高く、自分をより良い状態に持っていきたいという向上心の高さがみられるのが特徴です。
五つ目のタイプは、「Earning」重視タイプ。5つのタイプの中で唯一、“健康”と副次的ベネフィットの主従関係が逆転しているタイプです。“健康”よりも“経済的なメリット”の方が継続のモチベーションのウェイトとして高く、“健康維持や向上”は副次的な価値として捉えているのが特徴です。このタイプの方が行われている健康術の代表例は「自転車でのフードデリバリーサービス」です。そもそもサービスそのものが“健康維持や向上”を前面に打ち出しているものではありませんが、次第に「お金を稼ぎながら、健康的に体を鍛えることができる」という認識も広がり、金銭という成果が運動のインセンティブとして目に見える形で還元されることも継続のモチベーションになっているとみられます。

3. 「健康」を価値とした商品・サービス開発におけるアイデーションのコツ

高齢化の進展やコロナの長期化などにより、健康に対するニーズは今後も高まると予想される中、企業は「健康」を価値とした商品・サービスを開発する際に、どのような点を意識すべきでしょうか。
まず、「健康」という単一価値にこだわらず、「副次的ベネフィット」を切り口にビジネスを考える方法があるかと思います。例えば、「ポケモンGO」のように、最初は「健康」を価値として訴求していないサービスであっても、そのサービスを利用することが健康につながると感じるユーザーも多く、今回の調査でも「健康術」のひとつとして取り上げられています。

毎日ポケモンGOで1時間のウォーキングをしています。ゲームにはさすがにちょっと飽きてきましたが、今では「それでも健康のため!」と思って継続しています。(40代女性)

また、顧客との長い関係性を構築する方法の一つとして、複数の副次的ベネフィットを組み合わせて商品・サービスを展開することも考えられます。この代表例としてNIKEが提供するランニングアプリ「NIKE RUN CLUB(以下、NRC)」があります。
スマホのGPS機能を用いて、走っているときの距離やペースを表示したり、走り終わった後のアクティビティを保存し、記録として残すといった点では他のランニングアプリも提供している機能です。
しかし、NRCはランニングアプリに求められている“進捗の可視化”という基本価値の提供に留まらず、「Entertainment」「Relationship」といった複数の副次的なベネフィットを組み合わせてサービスを展開しています。
NRCは利用者数2億5500万人(2020年現在)と、全世界で最も利用者数の多いランニングアプリ(注2)でもありますが、こういった基本価値の提供にとどまらず、複数の副次的ベネフィットを提供していることが、数あるランニングアプリの中で、NRCが選ばれている理由になっているのではないでしょうか。

上記のように、「ポケモンGO」の事例から読み取れる「“健康”のカテゴリーに捉われないこと」と、「NRC」の事例から読み取れる「生活者への複数のベネフィットを提供すること」を視野に入れることが、今後「健康」を価値とした商品・サービスを開発する上でのカギとなるのではないでしょうか。
RIPPLEコミュニティでは今後も生活者の意識変化の兆候を捉えるための活動を行っていきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

  1. [1] https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kensui/territory2/kenkoudukuri/index.htm
  2. [2] https://shop.rxl.jp/blogs/column/running-app-run-long
  3. [3] https://pj.prismatix.jp/prismajournal/articles/221018/

RIPPLEコミュニティでは今後も生活者の意識変化の兆候を捉えるための活動を行っていきます。最後までお読みいただきありがとうございました。


Inyoung Jang
Interbrand Japan Senior Consultant

デジタル広告代理店にてコミュニケーション戦略策定、SNS広告運用を担当。2016年よりインターブランドに参画。
インターブランドにおいては、化粧品、FMCG、食品、製薬などB2C企業を中心に、コーポレート/プロダクトブランドのリブランディングをはじめ、ブランドアイデンティティの構築、ブランド価値評価、社内外コミュニケーション戦略立案などに携わる。