MOLp - Japan Branding Awards - インターブランドジャパン

Rising Stars

中・長期経営計画の実現に向け、素材の力による社会課題の解決の可能性を社員が自由自発的に考え取り組みを行ったオープンラボラトリー活動。社員が生活者の視点で、素材の魅力をあらゆる感覚を駆使して再発見し、機能的価値だけではなく感性的な魅力を提示し、新たな事業創出に寄与するとともに、社内の意識改革に資することを目的とした活動

課題背景

2014年からの中期経営計画で「消費者価値の深耕を通じた社会課題の解決」を掲げるものの、多くの社員は自分事化できずにいた。また、業績悪化の影響もあり効率性が優先され、全社のエンゲージメントが低下、特に研究所で開発を担う部門の低さが危惧されていた。社内外に向けて素材が持つ可能性、三井化学の可能性を想起できるブランドイメージを構築し、認知を向上させることで、効率的なプル型のマーケティングに繋げるためにも、潜在顧客に有効な情報を開示していく必要性があった。また、合併後の設立から20年を迎えるにあたり、コーポレートブランディングへの取り組みの必要性も感じていた。

組織体制

一部でブランディングの必要性が議論されていたものの、当時は具体的な取り組みについての社内理解が低く、トップダウン式では進められない状況にあったため、コーポレートコミュニケーション部が中心となりボトムアップの有志活動としてスタート。現在は事務局が5名程度の体制で、広報、研究、新事業開発メンバーなど横断的に一体となって事務局運営を行っている。企画及び情報の受発信をコーポレートコミュニケーション部、テーマ化を研究開発企画管理部、研究実務を各研究所、事業化支援を開発室が担い、テーマに応じ即応できるフレキシブルな体制構築を行っている。

戦略・実行

「Create New Communication via Materials(素材を通して新たなコミュニケーションを生み出す)」をビジョンに掲げ活動をスタート。参画社員の自発性を前提とし有志活動のポジションを明確にすることで、本業とは別に取り組むことによる自由と心理的安全性を担保している。ファンセオリーに基づき、個人の内発的動機を基軸に良い意味で無駄と思われることを真面目に取り組んでいる。日々の雑談から小さな気付きや取り組むべき社会課題を発見し、横断的なメンバーの利点を生かして具現化している。また、外部のクリエイティブパートナーも交えた取り組みとすることで、場に継続的な求心力を確保するとともに、視点の異なる情報や上質な情報のインプットの場を設計している。活動発信は商材の特徴である、「見て・触れて感じること」を活かし、体験した人の創造力を引き出せるよう、素材の特徴を前面に出した、完成系ではなく余白を残したプロダクトとして表現した。その創造力を重視した体験できるプロダクト類を制作しコミュニケーションを展開したことで、これまでとは異なる潜在顧客とのコミュニケーションが実現できた。

活動の成果

本活動を知った潜在顧客から多くの開発相談を受け商談成果に繋がっており、新規顧客の創出・獲得の接点・入口の一つとなっている。海水から生まれたイノベーティブプラスチック「NAGORI」は、三井化学として初めてのグッドデザイン賞を受賞。著名ブランドとのコラボレーションによる新素材開発(翌年には全世界での販売開始)、本活動が起点となった新たなベンチャー企業との取り組みなど、様々な成果を上げている。社内においては、今では参画者は全社の1/3の部署から集まっており、参画メンバーの意識の変化、行動変容にも繋がり活動評価が高まっている。このような成果を受け、直近では、社長自ら長期経営計画の好事例として社内外に発信している。

ご担当者様コメント

当時コーポレートブランディングからスタートすることも考えたが、社風及び業種の特性から、コミュニケーションを軸に「人」と「素材」に着眼点を置いたブランディングから取り組むこととした。課題解決に向けたアプローチとして、最終製品の形態ではないが、「何にでもなれる」素材メーカーならではの強みを活かして、見て触れて感じることができる体験を具現化することにこだわった。当時は業績低迷も影響し、社員が自由な発想でやりたいことができず、閉塞感が生まれつつあった社内において、素材が持つ可能性を具体的に提示することで社員の意識(内部モデル)を変え、モチベーションを高め、結果、会社としての将来への可能性を内外に伝えることができてきたと考えている。またメディアや新規の問合せなどでの社外評価がブーメランで社内に還ってくる、好循環を生んでいる。

評価コメント

予算も組織もない中、有志メンバーを募りボトムアップで開始。このため、コーポレートのパーパスやブランドの中核概念をつくり、体験に落としていくという流れではなく、有志活動のミッションなどを定め活動の目指す姿を明確化した上で、「何にでもなれる」素材の強みを活かし、アートやデザインの力と組合せ、ブランド体験として具現化することに注力しています。それらの活動が中・長期経営計画で掲げたコーポレートが目指すあるべき姿の具現化の1つとして社外からの評価を得ることに成功しています。その結果、社員のモチベーションや社外のレピュテーション向上に繋がり、ボトムアップの活動が成果を生み、本業のビジネス成長にも寄与したことで、トップや役員が成功事例として社内外に発表するまでに至っています。BtoB企業、かつボトムアップアプローチとなると、多くの企業が苦戦を強いられている中、ボトムアップアプローチで成功した例として、多くのヒントが得られる活動として評価しました。

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