TBS | インターブランドジャパン

Japan Branding Awards受賞を契機に、 
さらに進化したブランディング 

TBSホールディングスさま

人々の意識も、生活様式も、価値観も変わるVUCAの時代。
自らの存在意義を問い直し、次の成長を見いだすために、改めてブランディングに取り組む企業が増えています。
そのなかで、Japan Branding Awardsにエントリーすることにはどんな意義があり、どんな成果をもたらしているのか?

2020年の「Winners」に選出されたTBSのブランディング・チームの皆さんにお話を伺いました。

  • 吉田裕二様(総合プロモーションセンター上級専門職局長待遇)
  • 松原貴明様(総合プロモーションセンター ブランドコミュニケーション戦略部長)
  • 中森卓也様(総合プロモーションセンター ブランドコミュニケーション戦略部)

インタビュアー

  • 広井勇吾(インターブランド Client Services & Solutions Group)

未来への危機感から始まったブランディング活動

広井:ブランディングを始められたきっかけは何だったのでしょう?

松原:2015年のテレビ放送60周年キャンペーンが契機になりました。当時、キャンペーンの企画と実施のために社内から横断的に人が集められ、30人ほどの委員会が作られました。私たちは1年かけて、番組制作をはじめとするさまざまな施策を実施したのですが、そのひとつとして「未来へつなぐ。From TBS」というキャッチフレーズを発表しました。このロゴをつくったり、見せ方を考えたりするなかで、TBSには企業理念やプロミスが明確に定義されていないことに改めて気付いたのです。

吉田:誰もがテレビを観る時代は他局との競争だけを考えていれば良かったのですが、動画配信サービスなどの台頭によってライバルが増え、自分たちの存在意義を改めて問い直す必要が生まれたという時代背景にも背中を押されました。放送局という枠組を超えて、「コンテンツ創造」の力を基軸にした、より強い「総合エンタテインメント企業」へ進化するために、企業理念の再構築を含めたブランディングを体系立ててやろうという機運につながっていたのです。

吉田裕二様

松原:TBSのブランドには何が足りなくて、何が必要なのか。いろいろ調べる作業からスタートしましたが、やればやるほど深く、時間もかかる。結局、そこから5〜6年かけて活動を続け、2020年1月にようやく企業理念とブランドプロミス、VIの策定に至りました。

活動の成果は、目に見える大きな変化へ

広井:企業理念とブランドプロミスを策定され、VIを統一できたことが、2020年のJapan Branding Awardsにエントリーされたきっかけだったのでしょうか?

松原:そうです。ブランディングの土台が整い、この先、自分たちが向かおうとしている道筋にズレがないかを確認したいという想いが強かったですね。

吉田:それとブランディングは結果が見えにくい、評価されにくい活動ですよね。外部から評価されることで、その先へ進む原動力にしたいという想いもありました。

松原貴明様

広井:アワード受賞後、社内外に変化はありましたか?

松原:それは、大きく変わりました。まずブランディングを担う専任チームが誕生。昨年は、そのチームがブランドコミュニケーション戦略部に昇格しました。4人からスタートした組織でしたが、今では専従のスタッフも10名に拡大しています。

中森:昨年4月には、ブランディングの発信拠点としてフラッグシップストア「TBS THE MARKET」もオープンしました。スタッフがデザインしたブランド・アイテムの販売に加え、「最高の“時”」を実感できる体験イベントなども開催しています。また、ブランドプロミスを体現するコンテンツとして、SDGsをテーマに、地上波・イベント・アート・リアルスペースなどを横断するプロジェクトも始めています。

TBS THE MARKET

吉田:社内に目を転じると、視聴率や売り上げという物差しに、ブランディングという目線が加わったと感じます。ブランディングという言葉が、社内の会話によく出てくるようになりました。実際、ブランディングに寄与した社員を表彰する「TBSブランディングアワード」が2020年にスタート。私たちにとって、年末の一大イベントになっています。

中森:就職ランキングでも、業種別でここ数年、10位以内へ、民放で唯一ランクインするようになりました。

広井:素晴らしい成果ですが、ご苦労も多かったのではないですか?

吉田:現在、ブランディングは、ブランドコミュニケーション戦略部と、グループ各社のメンバーで構成される約40名のブランドコミュニケーション戦略会議が両輪となって推進しています。この合意形成には非常に苦労しています。今思うと、ロゴを決めるのはわりと容易だったかもしれません。

松原:しかし、それをないがしろにすると、巻き込んでいけません。時間がかかっても、しっかりとファシリテートしてくことで、ブランディングをグループ全体でジブンゴト化できているのだと感じます。実際、グループ各社の目標設定や、番組の編成方針にも理念とプロミスの概念が多く盛り込まれるなど、意識変化を起こすことに成功しています。

EDGEの効いた総合エンタテインメント企業へ、一歩一歩。

広井:その後の活動についても、お聞かせいただけますか?

吉田:放送局ビジネスから総合エンタテインメント企業へ進化するために、EDGE(Expand Digital Global Experience)をキーワードに、創ったコンテンツの価値を最大化する活動に力を入れています。そのひとつが赤坂の街づくり「赤坂エンタテインメント・シティ計画」です。舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」などを中心に、赤坂をブロードウェイと並ぶエンタテインメント・シティ「AKASAKA」として盛り上げていくにはどうしたらいいかを日々考えています。

中森卓也様

中森:地域や自治体、他企業との協業にも力を入れています。この6月にはTBSがハブとなり、赤坂を盛り上げるイベントをサカスで開催。普段は交流のない多くの商店会に参加していただきました。コロナ禍でずっとこのようなイベントができなかったこともあり、それは大盛況でした。

広井:なるほど、順調な経過をたどっていらっしゃいますね。最後に、今年応募されるブランド担当者の方にメッセージをいただけますか?

中森:アワードへの参加は、他社がどんな活動をして、どこが評価されているのかに気づき、発見する機会になると思います。そうやって学び合えることがいちばんの利点ではないでしょうか。また、エントリーは、自分たちの足跡を俯瞰で見直すいい機会になったと感じています。それができただけでもエントリーの意味がありました。

吉田:ブランディングは、なかなか成果が見えにくい活動で、死ぬ気でやっているにもかかわらず、一部ではスカしてかっこいいことをやっているだけ、という見方をする人もいます。受賞という対外的な評価を得ることで、社内の空気が変わることを実感しています。

松原:今ではブランディングは企業の存続に欠かせない活動だという認識を、多くの社員が抱くようになりました。エントリーは、その大きな契機になったと思います。

広井:本日は貴重なお話をどうも有難うございました。みなさまのお話が今後少しでもブランディングを志してらっしゃるご担当者の方の参考になればと思いました。これからさらなるTBSのブランド成長、期待しております。

 

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