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ブランドリーダーズ インタビュー

日月 丈志

富士重工業株式会社
取締役専務執行役員
スバルグローバルマーケティング本部長

※部署名・役職名は、Best Global Brands 2014インタビュー当時のものです。

Subaruブランドを捉え直し、自ら市場を創り、居場所を創っていく。

注目されているブランドは何ですか。

このところSubaruが好調だと言われていますが、特に自動車業界は、投資負担が非常に大きいので、規模が小さいところは苦しい。Subaruのような小さいブランドが生き延びるために、BMWのような商品のラインナップやターゲットユーザーの絞り方、MAZDAの生き延びるための戦略等、参考にしています。

競合他社のラインナップ、価格帯、ユーザー、拠点の持ち方等、有形資産は、非常に分かりやすいですが、Subaruの事業では、ブランドをどういう位置づけで差別化しようとしていますか。無形なところでこうあるべきというのはありますか。

Subaruはシェアが小さいので、ブランドの認知度がどうしても低いです。 最近売れるようになってきた理由はおそらく、ブランドの認知度では、Subaruは思い出してもらえないけれど、四駆といえばSubaru、Subaruといえば四駆だと思ってもらえるからではないかと思います。つまりSubaruブランドというものに対して、お客様の心の中に、いかに明確な居場所が設定されているかということが重要と考えています。

四駆の他に、大切にしていることはありますか。

機能ではなく、「情緒的な価値」で売ろうとしています。お客様がやりたいと思っていたことがきちんとできる。実際に危ないシーンに遭わなくても、この車に乗っていれば心の安心感があるということを、安全性能という直接的、機能的なところではなく思っていただける、それが価値だと思っています。 「安心して毎日暮らしている、愉しく暮らしたい」。それが車でいうとSubaruだと思っていただきたいのです。

北米の市場や顧客のニーズの変化で、お気づきの点はありますか。

昔に比べると車の種類が非常に増えました。多様化してきているので、車に対する価値も従来のものではなくなっています。
お客様が自分のライフスタイルに合ったものを買おうとして、ライフスタイルそのものに対する意識が非常に強くなっている。昔は定番商品の中から一番いいものを選べばよかったのが、今はお客様が自分で車を選ぶ理由を見つけなければならなくなっています。
またインターネット社会で、情報の細分化、情報量の拡大が起こっています。特に、ベビーブームや団塊の世代の次の世代は、メディアの情報を信じていません。クオリティは低いのに声の大きいネット情報の方が流通するケースもあります。お客様とこちらとのコミュニケーションの形がすごく変わってきています。
また、ランキングやレーティングが非常に多い。自動車雑誌のランキングではなく、個人的な発信が出てきています。

そのような発信源への対応策は。

FacebookにしろSNSにしろ、ひとりのユーザーと巨大な自動車会社が対等な立場になっています。自動車会社やブランドがひとつの人格みたいになっている。対等な立場でどのようにつき合っていくかということですね。

特に中国市場が重要とのことですが、環境対応、ブランディング等、どのように取り組んでいかれますか。

大衆ブランドでありながら非常に小さいシェアの会社が、関税のハンディキャップを抱えた輸入車で事業をやっていくのは、事業構造的にすごく苦しい。プレミアムブランドにして収益を確保することができないとなると、ブランドとしての、ある特徴としての価値観を納得してもらわなければいけません。

安心感、安心して毎日を暮らすという点は、中国市場でも同じようにやっていきますか。

そうですね。たとえば、セダンは持っているけどレジャーの時にはこれがいいと思って買ったというお客様に対して、ちゃんとコミュニケートできるか。 中国市場は新興マーケットですので、そういうコミュニケーションをとることで、Subaruとしてのビジネスの仕方をきちんと確保していかないといけないと思っています。

自分のブランドだとお客様に感じていただくために、重要だと考えている点は。

Subaruは「安心と愉しさ」(Enjoyment & Peace of Mind)だと言っています。特に、個人の嗜好をベースにして行動している最近の若い人達の立場から見て、Subaruが何かということをちゃんと共有できるか。新聞やテレビでは、自動車会社=メーカーだと思っている。いい車を開発し、生産して市場に出すと、いい商品が出てきたからみんな喜んで買っていると思っています。そうではなく、「車という商品を媒体として、お客様に生活の中で喜びを感じてもらうことが大事」と思っています。最終的にはお客様がすべてを決めている。お客様とこちらとの共通認識を持つことでブランドをつくっていくのだと思っています。
お客様第一というのは、同じ喜びや不便さを共感できるということです。お客様の言葉にはなかったけど気持ちを想像できるというのが、コミュニケーションですよね。

スマートフォンビジネスやニューメディアに関して、最近特に注目していることは。

インターネットで情報が流通し、コミュニケーションができるようになってきているので、ある面で効率化されているといえます。しかし、お客様の要望に対して即時応えるのが当然になってきていています。情報発信にしても、たとえばSubaruのFacebookページを見たお客様は、Subaruという人格が何を言っているか、どんなことをやってくれるかという見方をします。ひとつひとつのアクションの持つ意味が、これまでとは違ってくるわけです。

FacebookやTwitter等、デジタル対応は、組織としてどのように管理されていますか。

デジタルメディアの特性を生かしながらやるのは専門部署の役割で、Subaruがどういう価値観でお客様とつながっているブランドなのかをちゃんと認識できていれば、あとは権限委譲できると思っています。

企業におけるブランドのリーダー、責任者、役割は、今度どのような形で変化、発展していくでしょうか。

ブランドというのはお客様がつくり上げてくるものですから、我々から見ると結果です。それに対してのマーケティング活動を行っています。マーケティング活動は、我々にとっての市場をつくる、つまり我々自身の居場所をつくることです。それは、お客様の心の中にSubaruの居場所をつくるということです。
我々がやろうとしているのは、かっこいい車、安全性能の高い車をつくるとか、かっこいいコマーシャルやウェブサイトをつくるということではなく、それをお客様から見た時に、Subaruはこうだ、こういう時はSubaruがいいと思ってもらうことです。それを、各部門がちゃんと認識しているかということです。

そのような認識を社内に浸透させていくために行っている活動はありますか。

我々のやろうとしていることがどういう理念や考え方に基づいているのかということはメッセージを出しますし、それぞれの部門で仕事を進める中でそれを議論してほしいと思っています。

社員のみなさんが価値観や共通認識をかなり持っていらっしゃると感じますが、なぜでしょう。

我々が五年前まで赤字で、どうやって生きていくかを考えざるを得なかったからだと思います。なんとか生き延びる道を見つけて、世界のマーケットの1パーセントのありかをこの辺にしよう、この辺にいれば他ブランドと戦わなくていいから、というような居場所を見つけなければいけなかったからではないかと思います。
「業界の中で、小さなブランドがどう生きていけるか」「Subaruというブランドの特徴に、いかに魅力を感じていただけるか」。経営の観点から、Subaruブランドを捉え直し、自ら市場を創り、Subaruの居場所を創っていきたいと思います。

日月 丈志

日月 丈志
富士重工業株式会社
取締役専務執行役員
スバルグローバルマーケティング本部長