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ブランドリーダーズ インタビュー

星野 俊夫

株式会社リクルートホールディングス
ブランドマネジメント部 部長

※部署名・役職名は、Japan's Best Global Brands 2015インタビュー当時のものです。

昨年のリクルートの大きな動きとして、株式公開が挙げられると思います。株式公開とブランドの関係をどう捉えていらっしゃいますか?

株式公開自体は、リクルートにとってグローバルな信頼を拡大させ、ナンバーワンを目指すためのひとつの通過点に過ぎないとトップは語っています。あくまでも最終的なゴールはブランドメッセージで掲げている「まだ、ここにない、出会い。」を提供することで、一人ひとりが「FOLLOW YOUR HEART」で暮らせる社会の実現です。しかしブランドの観点から言えば、株式公開は、自らの存在を問い直す大きな契機になりました。公開に伴い、カスタマーやクライアントに留まらず、投資家、あるいは社会、世界に対して、リクルートとは何者か、どんな魅力があるのか、つまりコーポレートブランドをメッセージする機会が急増したからです。

当初、海外の投資家に対して、リクルートらしさを一生懸命プレゼンテーションしても、まったく話がかみ合わないだろうと想定していたんです。なぜなら、特に長期保有を大事にされるような機関投資家は「らしさ」なんてどうでも良くて、大切なのは業績数字に尽きるのではないかと考えていたからです。しかし実際にグローバルでの投資家の意見を聞くと私たちが伝えたかった「らしさ」こそが実は非常に大切なポイントだった。業界のポジションはどうか、なぜそんな収益が挙がるか、それは今後も約束されているか。ここを突き詰めていくと「らしさ」に行きあたるからです。ユニークネスが強さに結び付いていると大きな説得力を持つ。ブランドの根源が、ユニークネスにあったんです。

リクルートのユニークネスはどこにあるとお考えですか?

私たちのユニークネス。そのひとつが「リボンモデル」というビジネスモデルです。
たとえばHR(ヒューマンリソース)ビジネスのグローバルトップブランドは、いずれもHR専業ですが、リクルートはHR事業で国内トップでありながら、結婚、旅行、家選びなど、HR以外の領域もいろいろ手がけています。この時点で、国内も海外もリクルートのポジションが分からなくなる。さらにネットからカウンター、情報誌など商品サービスのカタチもさまざまあることが、さらに混乱を深める。そこで、我々のビジネスモデルはクライアントとカスタマーを「つなぐ」リボンモデルであり、HR領域に留まらず、ほかの領域もすべて同じビジネスモデルなんですと言うと、「非常に理解できるようになった」という評価をいただきました。いたずらに事業を多角化しているわけではないことをご理解いただけるわけです。さらに多領域でナンバーワンブランドを持っていること。しかもそれらを全部、自前で立ち上げていることに高く評価をいただきました。

多領域でナンバーワン、しかもそれをグランドアップで、自前で次々と立ち上げている。なぜそれが可能なのか、今後も大丈夫なのかという問いに対する答えが、もうひとつのユニークネス、「企業文化」です。リクルートでは、社員一人ひとりが「おまえはどうしたい?」と問われ続けます。フラットなコミュニケーションとフィードバックが日々繰り返されて『圧倒的な当事者意識』が育まれること。さらに『起業家精神』を持った個人に若いうちから大きな機会が与えられ成長すること。そして厳しいほどの『個の可能性に期待し合う場』を大切にしたチームが運営されていること。この3つを「企業文化」として明文化しました。 国内ではありがたいことに人材輩出企業と呼んでいただいていますが、確かにリクルートの価値の源泉は人です。でも単に優秀な人が集まっているだけではなく、ひとりひとりが切磋琢磨してチカラを引き出す場がある。これが55年続く企業文化として根付いているので、次々とグランドアップでナンバーワンブランドを育て上げていくことができる。情報誌の時代から、ネットの時代を経てモバイルの時代になったら、トッププレーヤーは変わるのが普通です。その激動の中で、ずっとトップでいられるのは、常に時代に求められる価値を検証し、新しいサービスを出し続ける企業文化があるからに他なりません。こういう説明を投資家に行ったところ、非常に高く評価していただけました。

「ビジネスモデル」と「企業文化」。このふたつのユニークネスを武器に、揺るがないスピリットである「FOLLOW YOUR HEART」の世界を実現していく。それがリクルートというブランドだと考えています。

特に海外から見た、リクルートのユニークネスとはどんなものでしょうか?

海外の識者の方とディスカッションする中で、企業のユニークネスは、what(何をやっている会社か)、how(どのようにそれをやっているのか)、why(なぜそれをやっているのか)の3階層で表現すると分かりやすいと気づきました。what=製品や事業領域、how=技術やノウハウ、why=事業の目的やビジョンですが、「how」まで語れても、「why」を語る日本企業は少ないと言われました。ところがリクルートはこれを一生懸命語ろうとする。さらに言われたのは「why」のありかです。強烈なトップのいる会社では、「why」は社長が持っている。リクルートはこれを社員一人ひとりが持っている。ここもユニークだと評価されました。
さらに、リクルートには「長期的な視点」とか、「改善し続ける」とか、「従業員の価値を信じている」とか、「カスタマーサービスをよくしていこう」など、日本企業のよさもあります。
グローバル企業が持っているような視点を持ち、日本企業が大切にしている部分もある。この両面を兼ね備えている点が非常にユニークなのではないかと位置づけました。

こうしたRecruitのユニークネスを、社内ではどういう体制で検討していったのですか?

経営ボードでは、我々のユニークネスを探求し自覚化することは非常に重要なことだとの思いのもと、これについての議論に、多くの時間を割き、フルコミットメントしていただきました。インターブランドさんがよく言われているように、この熱意こそ、まさに「ブランド=経営」を表していると実感しました。
このユニークネスを維持強化していくには、どれだけ言葉を尽くしても多分駄目で、やっぱり人事制度とか組織制度に展開されてなくてはいけないと思います。リクルートでは、例えば入社の垂れ幕とか考課制度から、事案提案制度と、起業家精神を支える制度に至るまで、すべてがユニークネスと紐付いているので、基本的には、これが分かってなくてもこの制度を通じてこうした企業文化が継承されるのです。

近年注目されているパーソナルとかカスタマイズといったテーマへの対応についてはどのようにお考えですか?

我々の商品サービスは、昔から1人に対して1メディアと言われてきましたから、カスタマイズについては、かなり前から時代に先駆けて注力してきました。それが今、ビッグデータなどテクノロジーの力で、当たり前のように最適化されています。先ほどのビジネスモデルを表現した「リボンモデル」のコアをなすコンセプトのひとつに「ベストマッチング」というコンセプトがあります。我々の商品サービスを利用していただく一人ひとりにベストな出会いを生むために努力をし続けなくてはいけない、という言葉です。ベストマッチングの精度を高めていく努力は、事業で毎日続けられています。
ただ、それだけでは不十分で、いま各事業のトップが語っているのは、社会が抱える課題に対して、きちんと取り組まなければならないということです。社内では社会期待事業、と呼んでいます。

今、注目しているブランドとその理由は?

ひとつはペイパルです。ペイパルのサービスやブランドではなく、ペイパルをつくった人たちがペイパルから起業してインターネットの技術を次々と革新していくあり方が、リクルートの感覚と非常に似てるなと思っています。リクルートから業界をけん引するような素晴らしいリーダーが出て欲しいという願いを込めて、素晴らしいと感じています。

もうひとつ、注目しているのは日本のマザーハウスです。リクルートで数年前にグループ経営理念を策定した際、経営ボードではいかに社会課題に向き合うかを時間をかけて議論しました。

そのときに、創業者の方がソーシャル・アントレプレナーであるマザーハウスに注目したのがきっかけです。世の中をもっと良くするために参加するようなものの買い方って、やっぱりあるのだなと気づかされました。作り手の顔が見えるだけではなく、その作り手の心のありようとか、本当にその商品が売れると世の中良くなってくのかとか、それはお客さんにとっても、むしろ働いている人にとっても、大事なこと。リクルートとしても、学ぶべきところは多いと考えています。 ペイパルも、マザーハウスも、我々がありたい姿に非常に近いと思うんです。

あと事件や不祥事で失墜したブランドが、それを糧に更によくなっていく過程にも非常に興味があります。
弊社もリクルート事件という大きな事件があり社会から大変なご批判をいただきました。当時の経営陣やリーダーたちが何を改めるべきか徹底議論して、経営理念の見直しと倫理綱領を制定しました。今だにリクルート事件については社内の教育プログラムに入っています。私たちは批判をいただくと、真正面で何が悪かったのかを考え、反省すべき点を反省して、改善のための努力をします。そういう自浄作用が働く組織であり続けることは、すごく大事なことだと思います。そういう意味で私たちのリクルートブランドとは、まさに社会に育てていただいた55年間の積み重ねだと思っています。

星野 俊夫

星野 俊夫
株式会社リクルートホールディングス
ブランドマネジメント部 部長