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ブランドリーダーズ インタビュー

清水 隆明

日本電気株式会社
取締役 執行役員常務 兼 CMO

※部署名・役職名は、Japan's Best Global Brands 2015インタビュー当時のものです。

最近、注目されているブランドや、興味深いブランディング活動について、お教えいただけますでしょうか?またその理由は何でしょうか?

最近、とても気になったのはある自動車メーカーのキャンペーン映像ですね。そこに私は工業製品の「美しさ」をすごく感じたんです。NECもまさに工業製品を作っているわけですが、私たちはそれが社会にどう貢献しているかを伝えることに注力してきましたが、「美しさ」にフォーカスしたことはありません。これまでのブランド訴求に足りなかったものが、そこにあるかもしれないと感じました。
NECは、2019年に120周年を迎えます。その際には、「社会価値の創造を追求するNEC」を社会に示すキャンペーンを展開することが必要になるでしょう。そのときには、技術的な視点、生活者に寄り添う視点、社会基盤を支えている視点、グローバルな視点などに加え、美しいNECという視点を描けないだろうかと考えています。

その美しさには、どのようなことが含まれていますか。

例えばスパコンやサーバのケージを開けたとき、そこに整然とチップが並んでいる姿にも美しさはあります。工業製品の美しさは機能の極致にあるんです。無駄がないこと、使いやすいことを突き詰めると、結果的に機能美が醸成されるということなんでしょう。ただ、そのまま写真を撮りたいというわけではなく、私が言いたいのは、今までにない、次元の違うNECの描き方を探っていきたいということです。

ICTの観点から、市場(競合)や、社会の変化、トレンドをどのように捉えていますか。

ICTも、ネットワークも、圧倒的なスピードで変化しています。その中心に身を置き、世界でいま何が起こっているのか概ね理解した上で、NECの立ち位置や戦う領域、ビジネスモデルを俊敏にチェンジし続けていかないと勝ち抜けないでしょう。115年、日本の社会を支え続けてきた信頼を大切にしながら、常にお客さまの先を行って、社会のトレンドや技術のトレンドをいち早く取り入れ、オープンイノベーションを追究し、ときには自社の技術に拘泥しないで必要なアライアンスができる俊敏な会社であるというイメージに変えていかなければいけない。そして、私たちが存在していること、それ自体が「お客様の価値」である、というようにしていかなければならないと考えています。

2014年6月に、ブランドメッセージ「Orchestrating a brighter world」を宣言されましたが、開発の経緯や込めた想いについて、お聞かせいただけますか。

NECのドメイン、ポートフォリオは、いまやほとんどがBtoBやBtoGフォーカスです。そのプロセスの中で一般マーケットに対する訴求が薄まってきて、NECがどんな会社なのかが分かりにくい状況が生まれています。一方、中計で打ち出しているように、社会価値創造型企業として「社会ソリューション」を追求していくためには、NECを端的に示すメッセージが必要だったのです。
これからのNECは、いかにリーダーシップを発揮するのか。その肝は、Sler(システムインテグレーター)としての強い意志をいかに表明するか、という点にありますが、私たちは自社の技術に拘泥するのではなく、あらゆるパートナー、あらゆるベンダーとともに協奏・共創して、より良い未来、社会を作っていきたいと考えています。その想い、メッセージを「Orchestrating a brighter world」に込めたのです。
さらに、NECが培ってきた社会ソリューションや製品群は、新興国でも先進国でもお役に立てるわけで、グローバルに目を向けたときに、行動的でポジティブなメッセージを英語で出す必要もありました。現地法人の社員も含めて、直接ステークホルダーからの意見を聞きながらやったというのも、1つの意味付けですね。

「Orchestrating a brighter world」の中に、NECはリーダーシップを発揮するという、リーダーシップというのが1つキーワードとして挙がってきたと思いますが、他に重要となるキーワードはありますか?

イノベーションをどう起こすかに尽きるでしょうか。技術のイノベーションだけではなくて、ビジネスのイノベーション、つまりビジネスモデルの作り方も変革し、発想自体を変えていくということですね。すでにいろんな取り組みを始めています。各ビジネスユニットから異動して、一緒にいろんなプロジェクトをやったり、ベンチャーキャピタルに出向してもらったり。あとは社内からアイデアを募って新たな事業として立ち上げるビジネスインキュベーションのやり方も、大胆に変えていきます。今までの枠組みや考え方、場合によっては、Slerという枠やポジションを外して考えるような発想力が大切と考えています。
ビジネスモデルは一様ではないので、制限は全くありません。新たなオープンイノベーション、ファンディング、何でもいい。協奏・共創を通じて、あらゆる手段を足すことで、新しいバリューを追求していきたいです。まさに「Orchestrating a brighter world」のメッセージもそこに通じています。

「Orchestrating a brighter world」を具現化していく際に、ブランドの観点から、どのようなことが課題となりますでしょうか。特に、社員への浸透については、いかがでしょうか。

確かに社員の自分事化をどう進めていくかが、今後の最重要課題です。NECが今、なぜこういうメッセージを打ち出したのか。それを裏付けるためのいろんなマテリアルを準備し、社員に公開し、読んでもらうように動機付けをし、懇談会とか組合の勉強会をやったり、職場ごとの議論も進めたりしています。そういう意味では、フォロワーも増えてきているのは事実ですが、まだまだ道半ば。むしろ、永遠に道半ばだと思うことが、あるべき姿だと考えているので、やり続けるという強い意志を持って、しつこく愚直に続けるということだろうなと思っています。つまるところ、社員一人ひとりがブランドだと思うんですよね。社員という「人」、一人ひとり全員が「brighter people」にならないとブランドなんてできないですから。

今後、ブランド責任者(CMO)としての役割は、どのように変化・発展していくとお考えでしょうか?

CMOの立場は、権限を持ってブランディングを遂行すること、あるいは社長に代わりマーケティングを統合することにあるのかもしれません。しかし実際のところ、みんなが納得するところまで到達するには、やっぱりすべてが戦いなんです。成果を実績で示し、そのメッセージの力強さ、正当性、取り組んでいるあらゆる活動が全部つながっていっていることを証明することが、ブランドをより強くし、一枚岩になっていくことにつながってくるのだと思います。
結局、リスペクトしてもらえないとうまくいかない。頭ごなしにやって、うまくいくとは思えません。小さな成功を積み重ねる。その継続性によって、周りの信頼が高まるということでしょうか。あとはビジョン。「NECは何をやりたいのか」をきちんと語っていくことでしょうね。

ブランディングを推進していく上で、KPIやマネジメント体制をどのようにお考えでしょうか。

BtoBのビジネスは、BtoCのように分かりやすく、すぐ反応が出てくるものではありません。ビジネスのスパンはどれも長いし、案件ベースで言うなら売上ではKPIは測れないでしょう。その意味で、実は非常に悩んでいます。インターブランドのブランドランキングも1つの重要なキーとなるKPIだと思いますが、独自の現地調査のようなこともしなければいけないと思っています。海外のことも考えると、当然ウェブサイトの動画の強化にも取り組まなければなりませんが、KPIに落とし込むのはなかなか難しい。必ずしも答えがあるわけではないし、セールスリードにどのようにつながっていかせるべきか、これも難しいテーマです。それでもチャレンジしなければいけない時期なんだろうと思います。

「Orchestrating a brighter world」を具現化していくために、どのようなNECらしいブランディング活動を展開していきたいとお考えでしょうか

1つは、東京オリンピック パラリンピックです。
2020年の東京オリンピック パラリンピックは、我々の技術がいかに社会に浸透し、どのように貢献できるかを現実に示す絶好の機会だと思っています。NECが目指しているbrighter worldを具体的に示し、なおかつ社員の鼓舞にもつながる。実は大きなトリガーだと思っています。

清水 隆明

清水 隆明
日本電気株式会社
取締役 執行役員常務 兼 CMO