ブランドランキング

ブランドリーダーズ インタビュー

毛籠 勝弘

マツダ株式会社
常務執行役員 営業領域総括
グローバルマーケティング・ カスタマーサービス・販売革新担当

※部署名・役職名は、Best Global Brands 2014インタビュー当時のものです。

ブランドの価値を上げることを通じて、強く支持してくれるファンをつくり、それを通してビジネスを成長させて、企業の価値を高めるという経営の考え方として、今、ブランドというのがMazdaの中心にあります。新世代商品の導入を機に、これを全世界に拡大して来ました。この考えを、我々はブランド価値経営と呼んでいます。

Mazdaのブランド戦略を構築していくうえで、大切にしていることは何でしょうか?

ブランド戦略はビジネス戦略と直結していないといけません。そのためには、それを媒介するマーケティングの戦略がそれを繋ぐプラットフォームになるべきだと考えています。 Mazdaは長年、経営メンバーの中で話をしてきたことが、随分浸透してきています。Mazdaは過去、驚くような技術や素晴らしい商品が出ましたが、単発に終わって続かず、うまくビジネスにつなげることができませんでした。
1998年、グローバルブランドの戦略をマーク・フィールズがリードして、Zoom-Zoomというブランドメッセージを全世界でやり始め、2002年以降スポーティーな商品が出始めて、経営環境も対外的なものも順調で成長していた頃は、ブランド戦略とは言っていましたが、外形的なものにとどまるきらいがありました。 Zoom-Zoomというメッセージは食いつきが非常にいいので、逆にマジックワードになってしまいました。
だから、Zoom-Zoomという概念を具体的にオペレーションの実践に落とす時に、その連携に課題がある状況でした。 また、会社全体で根本に大きな勘違いがあったとも思います。 それは、メーカーが主導してブランドイメージをつくり、それでお客様をコントロールできるという勘違い。実際、ブランドというのはお客様が評価する、お客様の頭の中にあるイメージでしかないのですが。
価格もお客様が決めるものです。提供する価値がその価格に見合わなかったら値引きとなります。どのように価値に見合った価格にするか、その辺りの考え方を大きく整理しました。 だから今は、ブランドは会社が総力で提供すべき価値として全員がそれに深くコミットしています。 お客様に選ばれ続け、愛され続けて、なくてはならない存在価値になる、そのためには、各部門が自分事として何をするかというところに腹落ちしてきました。
我々の思いが、各部門の思いが全部ひとつの方向に行くとお客様に伝わります。 ブランドの価値を上げることを通じて、強く支持してくれるファンをつくり、それを通してビジネスを成長させて、企業の価値を高めるという経営の考え方として、今、ブランドというのがMazdaの中心にあります。新世代商品の導入を機に、これを全世界に拡大して来ました。この考えを、我々はブランド価値経営と呼んでいます。

ブランドを、お客様が選びながら一緒につくっていくという気づき、自分事として各部門が、自分のものであると認識することに至った流れ、きっかけについて、御社の中でどんな議論がありましたか。

1998年に、ブランド戦略としてグローバルに展開した後も、本社はブランド戦略が大事だから値引きをするなという表面的メッセージを現場に伝えます。だけど大事だと言いながら、ビジネスオペレーションでは現場に在庫を押しつける。 開発は、自分の開発した車がチラシで20万引かれ、悲しい想いをしていました。営業も、先週15万値引きで売ったお客さんが、今回キャンペーンで30万値引きだと、お客様になかなかコンタクトしない。
お客様も、自分の買った車の価値が落ちていくからお友達に紹介できない。関係する人が、みんなハッピーじゃない。 これはおかしいということで、Mazda business leadership developmentという全社的な会議で、ブランドを見つめ直すこと、それをビジネスのオペレーションにどうつなげるかということを考え直しました。
そこで基盤は築かれていたんですが、次の大きな考えとしては、モノつくり革新と言って、2006年から続けている、モノつくりに関しての大きな戦略の変化です。これはMazdaの商品開発を、全ての商品でゼロからやり直すという、規模を考えるととんでもない取り組みだったんです。今のご好評いただいている商品、Mazdaのビジネスを大きく改善したSKYACTIVを世に出した原動力ですね。今でこそ、皆様から評価いただいていますが、これは本当に大変でした、途中でリーマンショックなどもありましたし、計画を実行に移す事が出来たのは大変な努力のたまものでした。
私も、開発のトップの言っていることが最初は信じられなかったのですが、話を聞いているうちに、これなら行ける、と感じるようになりました。そんな武器があるなら、と言う事で販売・マーケティング領域を大きく変えるという取り組みに着手することを宣言しました。それを、つながり革新と言って、2009年から改革に着手しています。大事なポイントは、お客様を囲い込むのではなく、お客様から選ばれるブランドになろうと、その為に我々の業務もゼロから見直そう、そういう取り組みです。
我々がものすごくこだわったのは、whyとhowとwhatをはっきりと切り分けること。whyは物事の根本に座る考え方、howはそれを実現する戦略、whatはそれを実行する計画やイニシアチブです。この順番に物事を整理することに、きわめて強くこだわっています。これをきっちりやることで、現場まで我々の考え方が伝わっていくようなプラットフォームをつくって、それをinside outという考え方で内から外へつなげていく。それを徹底的に、何度も繰り返しました。
私は販売、マーケティングとカスタマーサービスをグローバルに担当していますが、これは言い換えるとブランドとお客様のタッチポイントの大部分になります。
今、年に3回ぐらい、Executive Brand Forumというブランドのフォーラムを行っています。主要国のマーケティング、PR、カスタマーサービスの責任者が集まって、私から戦略、大きなイニシアチブ、方針と考え方を話します。 その会議では、whyとhowの部分を徹底するようにしています。whatはそれぞれの地域の責任領域なので、多くは言及しません。
その下に、地域のマーケティングフォーラムを設けました。北米、日本、中国、欧州、ASEAN。これを四半期に一度、その地域の国のマーケティング責任者、PRの責任者を集めて、Executive Brand Forumで設定した戦略を地域で具体化したプランのディスカッションをします。地域ごとの優れた専門性、excellenceを強めて、グローバルに展開していく。それぞれの持つリソースをうまく使っていっているので、今は全員が横連携でよく話をします。
Mazdaは自動車メーカーとして小ぶりなサイズですから、選ぶ価値として際立っているか、ターゲットカスタマーに存在価値があるかというところが本当の勝負だと思っています。「走る歓び」が我々のブランドエッセンスですが、走る歓びなんかで車売れるかと言う販売店も昔はありました。やはりそれは体感して腹に落ちないのが問題と考えました。
それで、Driving Academyという講習を行うようになりました。 国内営業のメンバー300人ぐらい全員に受講をしてもらいました。一泊二日くらいで開発実験部門のメンバーと一緒に実際に車を運転して、どういう考えでMazdaのクルマがつくられているか、どういう評価をして、どう車が動くかを体験しながら教わります。 実際に体験しますと、本当に面白いぐらい腹に落ちる。乗り比べて初めて、言っていることが分かる。そういうものをどんどん全世界でもやっています。近い将来、お客様にまで広めていきます。

グローバルの中で特に競合を意識した場合、市場での差別化についてどうお考えですか。

地域を問わず、Mazdaのターゲットカスタマーを、共通の物差しで決めています。主要10ヶ国でブランドビジネスがどう進捗しているかを、客観的なperformance indicatorで測定しています。それによって、我々の立ち位置が分かる仕組みになっています。
特に、ターゲットカスタマーの中でのindicatorの動きを見て、Mazdaのブランド価値を受容してくれる可能性の高いお客様が、それをどう受け取っているかに最も注目しています。小さな存在のブランドというのは、メインストリームとは違うルールで戦わないとダメだというのがベースの考え方にあります。だから、一般的に言う差別化を意識するよりも、そのターゲットカスタマーにどれだけ食い込んでいっているかがむしろ大事で、イコール差別化できているということだと思います。我々が進むべき道を明確に指定して、それに対してどうなのかということが大事だと思っています。

ターゲットのお客様のイメージは、以前から決めていますか。

はい。分析ツールで、どの辺りのお客様かを市場ごとに決めています。そういうお客様は、車に対するインボルブメントが高く、モダン、オープンマインドです。比較的収入が高く、車そのものに関心が高く、車に対する支出も高いので、我々が適切な価値を提供し続ければ、対価として自然と売上のレベルが上がっていくと考えています。
多くのお客様が経済合理性を見た上で、最良のチョイスをされるのが普通ですが、中には、クルマは自分の表現の一部だからというお客様も多くいて、その中からMazdaの価値に合致するというお客様をどれだけ取れるか。販売総数におけるターゲットカスタマー比率も、指標のひとつに決めています。
ブランドとして1番うれしいのは、ターゲットカスタマーのお客様に支持されることです。 そのお客様が、Mazdaが好きで何度も乗り換えていただいて、つまり生涯顧客という考え方をしています。生涯にわたってMazdaをかわいがっていただいて、できれば息子さんお嬢さんにも、っていう。そんな風な存在になれるように、精進したいと思います。今後勝負のところは、カスタマーケアだと思います。そのために、お店のデザインを変えていくような外形上のことだけでなく、カスタマーケアのオペレーションを強化することに取り組んでいます。

ターゲットのお客様の中に食い込んでいく中で、ターゲットカスタマーの心の中にこんなイメージがつくれればというのはありますか。

お客様が新世代の商品を買っていただくパターンは、まずはデザインにピンとくる。それから会社のヒストリーや考え方、姿勢に反応し、実際に試していただいて、いいなと思っていただいて、購入される。お客様は、すべての事前サーチを多分ほとんどウェブサイトで終わらせています。だから販売店では、お客様優位で話が進みがちになります。
お客様に本当に貴重だと思っていただける情報や価値は、一体どんな考え方の会社かということだと思います。会社の姿勢に共鳴をいただく。ものづくりに対する考え方、我々を育てた土壌である広島、それらを背負って車やものづくりを極めたいですね。
以前はどちらかというと、広島についてお客様に積極的に話すようなことはありませんでした。
でも広島地域のヘリテージを調べていると、中国地方には昔は製鉄業があって、日本刀の8割をつくっていました。
それが造船業に、そして自動車産業にという系譜で生きてきている。そういう職人気質が、ずっと根づいてきた地域でもあるので、それなりのヘリテージはあるのです。

走る歓び、人間が脳で感じるのを、乗って実感する等、非常に人間的、実感的ですが、もっと深い細胞レベルでのイメージが御社のコアであって、差別化されているのでしょうか。

Mazdaはディープでエモーショナルな属性を持っているブランドだと思うし、それをしっかり継承したいと思います。合理的な側面は、技術開発でもクオリティでも、世界のいいレベルにいっていると思います。ただ、ドイツメーカーとの違いは、彼らのヘリテージや所有するイメージはMachineなので、その領域のパーセプションでは多分勝てない。日本のメーカーのものづくりとして、何をどういう風に武器に戦っていくのかを考えています。日本におけるものづくり、広島におけるものづくりにこだわりたいという思いが、うちの会社は強いです。

伝統は革新の連続っておっしゃっていますね。

守っていてはダメだし、正しい方向に変える、それも時には常識をブレイクスルーすることも必要かも知れません。我々は、難しい道をつい選んでしまう。メインストリームのものに対して、違うやり方を選びたがる体質なのでしょうかね。
ただ、Mazdaの技術開発は、結構正しいこと言っていると思います。ディーゼルエンジンを投入するのはその最たるものです。唯一無二のところを、小さいメーカーは持たないといけない、キー技術だと思います。
日本では、お客様が信頼できる企業と思うかどうかも、大きな心理的要因になります。きちんと業績を上げられるビジネス構造に、今、変革しようとしています。今回は、ビジネス構造改革のなかでブランド価値経営について、社長以下常務役員まで全員が、1日かけて従業員の前で話しました。

そうですね。コミットメントを示す時、直接お話してあげると違いますよね。

やはり社長の言葉は重いですからね。それぞれの領域を担当している常務役員が、ブランド価値経営貢献のため、自領域はこうすると伝えることで、全員の言っていることがつながっているように実感できることが大事です。価格もコミュニケーションもちゃんと戦略がある、カスタマーケアもネットワークも人材にもある、実績も出始めている。この道を行くのは、やはりお客様が幸せになれる、笑顔になれるということが原点で、それが我々の幸せにつながり、ひいては儲かり、会社も経営が安定して行く。つまり、お客さんの幸せはあなたの幸せだと、いう理解を浸透するようにしています。

毛籠 勝弘

毛籠 勝弘
マツダ株式会社
常務執行役員 営業領域総括
グローバルマーケティング・ カスタマーサービス・販売革新担当