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ブランドリーダーズ インタビュー

石橋 秀一

株式会社ブリヂストン
専務執行役員 兼 CMO

※部署名・役職名は、Japan's Best Global Brands 2014インタビュー当時のものです。

お客さまに認めていただける新しい価値をどんどん提供できる「顧客及び社会価値の創造ができるブランド」がリーダーになると思います。

注目されているブランドや、刺激を受けているブランドを挙げていただけますでしょうか?またその理由は何でしょうか?

やはり、自動車ブランドを興味深く拝見しております。なかでも、日本発でプレミアムブランドを作り上げようとしているレクサスさんには期待しています。 今、新しい顧客接点として、青山にINTERSECT BY LEXUSを展開されていますが、それを拝見して、まさにアメージングだと思いました。メーカーにもかかわらず、顧客接点——タッチポイントまですべてブランディングされている。最後の完結するまできちっとやられているところがすごい。これはすべてのプレミアムブランドのカーメーカーさんでも実行されていることだと思うのですけれどね。

「リーダーシップを持っているブランド」とは、どのようなブランドだと思われますか?

お客さまに認めていただける新しい価値をどんどん提供できる「顧客及び社会価値の創造ができるブランド」がリーダーになると思います。私たち自動車関連業界にとって、リーダーシップを持つために一番重要なのは「安全」と「環境」という軸ですね。

市場や、顧客のニーズ・行動は、どのように変化してきているでしょうか? また、御社のブランドはそれらを予測し変化に応えるために、どのようなことを重視し、実施していますか?

タイヤのビジネスには、OE(メーカー純正部品)ビジネスと、取り替え需要のアフターマーケットがありますが、今、どちらのマーケットにおいてもさきほど申し上げた「安全」と「環境」という2つの柱が重要視されていることに変わりはありません。
たとえば、パンクしても一定距離まで走れるランフラットテクノロジー採用タイヤは、BMWさんを中心とするお客さまのニーズにお応えするために磨き抜かれ、もう一般のタイヤと変わらないレベルに到達しています。スペアタイヤが不要になることで、資源生産性も良くなって、車も軽くなる。いろんな意味で環境にも貢献しています。
その流れは、アフターマーケットに直接的に連動します。ここで私たちが重視しているのは、絶対にぶれない「安全」、「環境」軸に加えて、「プレミアム」という軸と、「ワクワク」という軸。ブランドで言うとポテンザやトランザ(レグノ)ですね。要するに、運動性能に非常に特化している「ポテンザ」や、運動性能と快適性のバランスに優れた「トランザ(レグノ)」など、車に合わせたタイヤの性能を、ブランディングによって的確に提供していくことです。

今後の新たな事業領域への参入の可能性はどのようにお考えでしょうか? その際に、ブランドの柔軟性・拡張性についてどのようにお考えでしょうか?

我々の中央研究所では、多様なシーズをどう事業化するかという課題に対応しようとしています。私たちのコアコンピタンスは、高分子化合物、ゴムですから、この技術が基本になります。タイヤに加え、コンベヤベルト、油圧ホース、防振ゴム、免震ゴムなどが挙げられます。
また、ブリヂストンでは、天然ゴム・合成ゴムの開発・生産から、タイヤの製造・販売に至る垂直ビジネス統合モデルを持っていますので、川上も川下も事業としてしっかりやりながら、いかに全体の競争力を出していくかということも、もうひとつの課題です。アメリカは直営店、オーストラリアはフランチャイズ、日本は直営とフランチャイズを両方やっていますが、それらをグローバルで展開する。これは小売事業としてやります。
一方で、ブリヂストンサイクルとスポーツの存在も非常に重要です。人生で一番最初にブリヂストンの名前を覚えてくれるのは自転車であり、スポーツを通じてですから。ただ残念ながら、スポーツは日本とアメリカ中心。自転車は日本だけなんです。ブランディング上、大切にしたいのですが、グローバルブランディングという意味で、今はここが使えない。だから中国、韓国、ヨーロッパでの展開も、当然考える必要がありますね。そういった意味で、トータルのブランディングの中で、サイクルもスポーツも全部つなげてブランディングをやろうという体制を今作っているところです。

グローバル展開の上で、アジア、南米、アフリカ等の新興国市場でのビジネス拡大は御社の経営戦略でどの程度重要でしょうか。その際に、ブランディング上で直面する課題は何でしょうか?

タイヤのポジショニングは、「ベスト」「ベター」「グッド」「ファイティング」という、4カテゴリーに分けられます。私たちは、「ベスト」から「グッド」までを自動車メーカーさんに納入するメジャーブランド(ブリヂストン/ファイアストン)で対応し、ファイティングの領域はアフターマーケット専用のセカンドブランドと位置づけています。
従来、新興国のニーズはファイティングの領域が圧倒的でしたが、近年、中間層の拡大に伴い、成長が著しいのが「グッド」領域です。ブリヂストンは、ベストとベターに強くて、グッド、ファイティングはそうとも言えない。ここについても、適切に対応していこうというのが、我々の課題です。
顧客価値という観点で言えば、お客さまに感じていただけるベネフィット マイナス コストが価値。感じていただけないベネフィットに、いくらお金をつぎ込んでも意味がないので、そういった意味では、シンプルで価値のあるブランド、ブリヂストンとは違う存在をブランディングしなければいけないこともあります。ある地区では、ファイアストンを使うということが、非常に有効になってくることもあるでしょう。
リージョンによってビジネス戦略は変わってきます。その地域に最適なマーケット戦略が、ブランド、商品、チャネルというかたちでつながっていきます。グローバル戦略とリージョナル戦略、これをどうつなぎながら、どう調整していくかというのが、今の私の課題の1つです。

スマートフォン、SNS等の急速な普及をはじめ、近年のコミュニケーション環境の劇的な変化の中で、御社のブランドと顧客のあいだで、どのように「真のつながり」を築くことができると思われますか?

この分野ではやっぱりアメリカが進んでいますので、Eコマースはアメリカでいろんなことをやっていきます。全部日本でやる必要はなくて、得意なところで得意なものに挑戦して、ベストプラクティスを横展開しようという考えです。どういうかたちで顧客タッチポイントをどう広げて、費用対効果をしっかり出せるか。それを今、ずっとテストし、どんどんキャッチアップしていることころです。

今後、ブランド責任者(CEO/CMO)としての役割は、どのように変化・発展していくとお考えでしょうか?

CMOは、基本的にCEOの戦略補佐。ですから戦略についてCEOにきちっと助言をしていくというのが、まず大事だと思っています。また、顧客及び社会価値、競争優位、バリューチェーンをきちっと担保していくということも欠かせない役割です。
そのうえで、さきほどから何度か申しましたが、私は今「つなぐ」ということ重要視しています。グローバル戦略とリージョナル戦略をつないでいく。OEのビジネスとブランドとアフターマーケットのビジネスをつないでいく。そして、商品を通じて開発と生産と販売をつないでいく。それが、これからのCMOの役割と思っているんです。

御社は、将来の成長のためにどのようにしてブランドの基盤を構築・強化していますか?

ブリヂストンは、今、真のグローバル企業、名実共にナンバーワンをめざしています。売上高で見ると、確かにタイヤ・ゴム業界ではナンバーワンになりましたが、これが真のグローバル企業なのかというと、まだまだ遠い。現状はグローバル企業ではなく、マルチナショナル企業のレベルです。たくさんの国で仕事をしているのがグローバルではなくて、本当にグローバルの強みをどう出せるかということが重要ですから。
さきほどの「つなぐ」とも関連しますが、現状は、国別にバラバラのコミュニケーションをどうつなぐかも私の課題。ビジネスプラットフォームだけでなく、コミュニケーションにもグローバルで1つのプラットフォームを構築していこうと考えています。

同様に、社員に対してその変化をどのように共有・理解し、行動させるようにしていますか?

まずは企業理念を共有して、理解して、行動することがすごく重要だと思いますし、CEOを含めて皆一生懸命やっています。本来なら、グローバル14万人の社員がまず企業理念でユニファイされて、次にやっとブランドです。その意味で、取り組みはまだまだ緒に就いたばかりですね。

今後ブランドを強化し、リーダーシップを発揮していく上で、社内の横断的な視点や協力、これまでにない社外の連携やコラボレーションの必要性・可能性をどのようにお考えでしょうか。

私どもはCEO、COOがいて、それからCFO、CTO、CMOがいるという会社形態になっていますが、この形態は、アメリカでトライをしてうまくいったスタイルです。そういう意味では、もはや日本とか、日本のやり方にはこだわっていないです。ダイバーシティを重視し、世界で見た時に一番いいやり方をやろうということですね。 そのなかで、カーメーカーさんとも今まで以上にいろんなコラボレーションをやっていきたいし、小売のチャネルを活用していろんなかたちの企業とのコラボレーションもグローバルで行っていきます。グローバルで仕事をするということは、いろんなリスクがあって、大きなコストがかかります。そのコストに見合うだけのグローバルのベネフィットをお客さまに提供できないと、持続的な利益や成長を担保できないですよね。だからこそ、いろんなプラットフォームの標準化とか、すべてやっていかないと、強みが弱みになってしまいかねません。でも、マルチナショナルでやる限りはコスト構造が変わりませんし、グローバルの強みが出にくいので、やらざるを得ないのです。

石橋 秀一

石橋 秀一
株式会社ブリヂストン
専務執行役員 兼 CMO