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ブランドリーダーズ インタビュー

川辺 哲雄

アンリツ株式会社
コーポレートコミュニケーション部 執行役員

※部署名・役職名は、Japan's Best Global Brands 2014インタビュー当時のものです。

私たちの土台は、120年の歴史に裏打ちされた技術力、お客様との約束をしっかりと守る誠実さです。アンリツは、グローバル市場で一層成長していくために、この強みを軸に、お客様と長期にわたるパートナーシップを構築し、相互に影響し合い、社会の変革を確かなものにしていく決意を表明しました。ブランドステートメント「envision : ensure」には、こうした意志を込めています。

グローバルでリーダーシップを発揮しているブランドを幾つか挙げていただけますか?

通信業界のお客様ですと、エリクソン様です。3つの濃い紺が並んでいるマークが非常に印象的です。さらに自分たちのフォントまで作って世界観を構築しており、哲学を持って表現していると思います。また、展示会では、通信機器やサーバーが大きなエネルギーを消費して持続性への影響が大きいことも地球的な課題として公開し、それにしっかりと対処していくメッセージを発信しています。最先端分野を追究しながら、自然との共生にも力を入れている、真にブランドをリードする企業ですね。

2004年頃より、ブランド戦略にご関心を持たれていたとのことですが、どのような背景があったのでしょうか。

2000年代に入り、グローバルなビジネス展開を視野に入れたとき、アンリツの認知度を上げる必要性があったことが、1つのきっかけです。当時、アンリツのメインビジネスである計測器は、優れた製品であるにも関わらず、海外での知名度がないために、お客様の選択肢に入らない、いわゆる不戦敗を経験することがありました。競合関係も、国内とはレベルが違う厳しさで、世界最大のアメリカの競合会社は、グローバルリーダーとして広く認知されていました。お客様の中では、この競合会社の製品を選んでおけば間違いないというブランドができていました。そこに挑むには、やはり選ばれるブランドの構築が必要だと考えました。

2004年から10年が経ち、ブランドに対する考え方において、変わられたところはありますか。

最初は、優れた製品をリリースし、お客様のサポートをしっかりと行い、その活動をPRすることで認知度を高めれば、ブランド力がついてくると考えていました。しかし、現在は、それだけでは不十分であると考えています。グローバルな市場で勝ち抜いていくには、企業の根幹を成す部分、当社でいえばDNAにあたるところを、しっかりと見つめ、お客様に理解していただく、そういった活動が必要であると考えています。その想いをいかに表現するかがブランドの意義であると考えています。

2月にMobile World Congressというバルセロナで行われる展示会で、ブランドのステートメントを表明されましたが、どのような思いを込められたのですか。

Mobile World Congressでは、“envision : ensure”という新しいブランドステートメントを発信します。この基盤となったのが、アンリツブランドの中核概念(ブランドプロポジション)である「Visionary partnership to innovate for tomorrow's society」です。ブランドプロポジションづくりでさまざまな調査・ヒアリングを行なった結果、120年の歴史に裏打ちされた技術力、お客様との約束をしっかりと守る誠実さがアンリツの強みとして挙げられました。その一方、お客様との関わり方がともすれば受身であり、技術オリエンテッドになりがちであるという課題が明確になりました。そこで、強みを顧客ベネフィットに転換し、いかにアンリツらしい価値を提供するかに力点を置いてブランドプロポジションを開発しました。この姿勢を対外的に宣言したのが“envision : ensure”です。お客様と長期にわたるパートナーシップを構築し、相互に影響し合い、社会の変革を確かなものにしようという思いを込めています。

グローバル企業として、海外とのやり取りやコミュニケーションというプロセスの観点はいかがですか。

アンリツのグローバル化の転換点といえるのが、1990年のウィルトロン社(アメリカ)の買収です。しかし、マネジメントのやり方が異なり、日本流を押し付けるとうまくいかない。そこで、当初、海外ではアンリツウィルトロンというブランド名で展開することにしました。その後、さまざまな過程を経て、グローバルにワンワールド、ワンネーム、すなわちアンリツに統一したのは1997年です。ですから、グローバル化には時間がかかるという前提で考えています。ブランディングでは、海外の優れた人材をどうやって巻き込んでいくかを意識して進めており、キーパーソンとはつどコミュニケーションを行い、合意形成を図っています。このプロセスで取り組まないと、マネジメントできませんし、活動が広がりません。もう1つ言うと、海外の社員が増えてきている中で、今まで「アンリツとは?」を徹底的に共有できませんでした。日本の社員は、「誠と和と意欲のアンリツ」という経営理念で育ってきましたが、海外ではそのニュアンスがそのまま通じないんですよね。この点も含めて、ビジネスでさらにグローバル化していく上では、ブランディングへの取り組みが不可欠だと思います。

今後、新規の事業領域への拡大、あるいはそのそういった可能性、異業種とのコラボレーションについてはいかがですか。

エマージングビジネス(事業創発)を専門に行う組織をつくり、新規事業への取り組みを進めています。他社とのパートナーシップが前提であり、「Visionary partnership」という中核概念が重要です。この点でも新しいブランドステートメントの体現が重要になってくると考えています。

今後、BtoBのブランディングの中で、今グループ全体で考え方を決めてきたわけですが、各事業部門との連携についてはいかがですか。

ブランディングでは、事業部、グループ会社とも意見交換しており、製品だけではなく、ブランドを差別化要素にしようという意識が出てきています。今後、各事業にフォーカスしたメッセージづくりに取り組むことを計画しており、コミュニケーションツールや販促資料に盛り込んでいくつもりです。目指すのは、パートナーとして、より提案型にシフトしていくことです。お客様との関係を長期的に保ちながら、結果としてブランドが強くなる、そういうサイクルを回していくというイメージですね。

今後、更にグローバルでブランドを高めていくために、どのような取り組みが必要でしょうか。

まず、基本を作ることです。何となくやっていることを、きちんとルール化、マニュアル化していくことが必要だと考えています。ブランドはビジネスであり、戦略投資ですから、説明責任があります。5年後、10年後に、なぜ、誰がどういう意思決定をしたのかをロジカルに説明できるようにしておくことがブランディングの継続においては重要です。その上で、現状を追認するのではなく、新しいブランドステートメントができたこの機会にすべて見直したいと思います。今回のプロジェクトは、社長、副社長、トップ自らが、グローバルマーケットリーダーを目指し、先進と信頼のアンリツブランドを築くという決意を表明しています。ブランドは、トップが魂を込めて社員と一緒に共有して、初めて成立するものです。今後も、課題はいろいろ出てくると想定していますが、着実にプロジェクトを前進させ、新しいアンリツブランドを発信していきます。

川辺 哲雄

川辺 哲雄
アンリツ株式会社
コーポレートコミュニケーション部 執行役員