
Best Japan Brands 2022 Article
これからのブランド成長のための新しい視点とは?
Best Japan Brands 2022のブランドリーダーが考えていること
Client Services & Solutions Group
Executive Director
薄 阿佐子
2020年年頭に発生したCOVID-19から2年以上が経過した今もなお、多くの生活者の意識や行動、価値観は変化し続けており、ほとんどの企業に求められてきている変革は、今や常態化されてきているといっても過言ではないだろう。
そのような時代において、今後5年、10年といった中長期スパンでの継続的な事業成長に向けたこれからの経営において、ブランドはどのような存在で、事業成長のために何ができるのだろうか。
2022年2月24日。本年もインタ―ブランドジャパンでは、第14回目となるBest Japan Brands 2022 TOP 100を発表させていただいた。昨年に続き、ランクインした企業のブランドリーダーの皆様にインタビューを行い、この不確実な時代に、確実にブランド成長をしていくためには何が必要なのか、2021年と比べて新しい視点は何か、多くの日本企業の皆様に少しでもお役に立つべくヒントを探ったので、本アーティクルでご紹介していきたい。
まず、Best Japan Brands 2022の傾向とそこからうかがえる今後に向けた成長戦略のヒントについてご紹介したい。
【Best Japan Brands 2022の傾向】
『共感』から『共創』へ
- Best Japan Brands 2022で急成長を遂げたブランドの共通している指標
最初に、今回のBest Japan Brands 2022で急成長したブランドに共通した特徴は何か、お話ししよう。
ブランド価値評価を行う3つの分析の中で、ブランドによって獲得された利益の将来の確実性を評価する「ブランド強度分析」という分析がある。ブランドは、社内と社外の双方から強化されるというインターブランドの考え方のもと、社内4指標、社外6指標の合計10指標から成るもので、ブランド価値算定のためだけではなく、ブランド強化の進捗度合いの確認と課題把握、さらなる強化に向けた打ち手検討のためのKPIとして活用、経営ツールとしても導入されているものである。
この10の指標はいずれも安定的にブランド強化・成長を行っていくための指標としては重要な要素であるが、中でも2021年~2022年にかけてブランド価値を大きく伸長されたブランドの共通点として浮き彫りになったのが、昨年に続き同指標のTrust(信用度)、Agility(俊敏力)と、もう1点はPerticipation(共創性)である。昨年のEmphathy(共感力)に変わって「共創性」がより新たな重要指標として挙げられたのである。つまり、「顧客のニーズをくみ取る力」(共感力)から、くみ取るだけではなく、「顧客と価値を共創できる力」(共創性)が重要になってきているのである。

『ヒトというあいまいなものを中心に据えた成長戦略(Human Strategy)』の時代へ
冒頭で述べたように、コロナ禍を経て今もなお、生活者の意識や価値観、行動変容は変化を続けており、そうした人々の持続的な変化をもとに企業側も変革を求められてきていることが常態化されてきている。つまり、これまでのような企業視点をメインとした競争戦略ではなかなか人々の心をとらえきれない時代になってきているのである。いわゆる企業、商品にとっての「競合」というとらえ方も、「業界・カテゴリー」という区分も、実は企業側の論理に立ったものであり、生活者目線から見るとすでにその軸では語り切れなくなってきているのである。
生活者がそのように変化してきていることを背景に、当然ながら、事業商品の実態を通じたブランド強化の担い手・主役である、企業で働く社員ひとり一人の意識や行動も変わっていかなければならない。
つまり、これからのブランド強化の新しい視点としては、人々の深層にある想いを知り、さらに人々と「共創」しながら未来への成長の道筋を描いていくという、「人という曖昧なもの」を中心に据えた成長戦略(Human Strategy)が必要な時代に突入したのではないだろうか。
「共感力から共創性へ」という新しい視点がより重視されてきている背景には、このような大きなうねりがあるのではないかとインターブランドは考えている。
【ブランドリーダーが考えている、ブランド成長に向けた視点】
今回、合計57社のブランドリーダーの皆様にインタビューをさせていただいた。各社様の個別インタビュー結果について、ぜひこちら(テキスト / 動画)をご参照いただきたい。ここでは、特にインタビュー結果からうかがえる大きな傾向についてご紹介していきたい。
インタビューでは5つの問いでお伺いしているが、いただいたコメントの傾向をざっとまとめると、以下のように集約される。
(図2)
2021年に実施したブランドリーダーズインタビューでも挙がっていた「ブランドは重要な経営資源、経営の中心である」、「コーポレートブランドの重要性が増している」、「ブランド強化のためには社内エンゲージメントが重要」という大きな傾向は共通しているが、その中身は若干変化がみられたように感じる。
まず、お客様の意識変化をとらえるだけではなく、これまでの枠にとらわれずにお客様起点で新しい事業や取り組みを考えていくべきであるという点。お客様とのLTV(Lifetime Value)の関係を構築していこうというトレンドの中、お客様起点で経営、事業をとらえて変革していくという考え方が、より一歩踏み込んできているようである。
また、社員に対して。パーパスに基づく事業活動、実態創りは社員ひとり一人の行動と実践から、という傾向は変わらないが、よりその傾向が強化されたように感じる。社員がパーパス、ブランドに腹落ちし、行動・実践することに対して情熱を傾け、そしてカルチャーとして根付かせるまで深く浸透させていかなければならないとの意識がうかがえた。
そして社会に対して。社会に対して「より意味のある存在へ」という昨年の傾向は変わらないものの、よりその変化する社会情勢に合わせてアジャイル(迅速)に対応していくことで、社会の要請にこたえられる企業となるべき、と。社会との関係性もより一歩、踏み込んで考えられているブランドリーダーが増えてきている。
冒頭の【Best Japan Brands 2022の傾向】にて、ブランド強度指標の中でより成長を果たしたブランドの特徴として、「共感」から「共創」へシフトしてきているとご紹介したが、やはりこれからの時代のブランド成長に欠かせない視点としては、そうした「共創」(お客様、生活者、社会含め)がキーワードとなっていくのではないか。そして、それを実現していくためには、その担い手である社員ひとり一人の熱い情熱とモチベーションの醸成、そしてそのためにはツールにとどまらない「経営層と社員、社員同士の対話」を通じたブランドの腹落ちと事業業務との接続が必要になってくることは間違いない。
【最後に】
昨年に続き、今回も、Best Japan Brands 2022にランクインされた企業のブランドリーダーの方々に、たいへん貴重なお話を伺うことが出来た。インターブランドがこうした取り組みをさせていただいているのも、この不確実な時代において、より多くの日本企業に、売上利益だけではなく、人々の頭の中にしっかりとその存在感を確立して、長期にわたる成長をかなえていただきたいという願いからである。
インターブランド自身も、こうした世の中の動きに迅速にフレキシブルに対応して、多くの企業のブランド価値向上に向けてお役に立つ、効果のあるソリューションをご提供すべく日々進化、努力を続けている。
今後の多くの日本企業の成長と発展、そしてその先の日本社会・経済の活性化と人々の幸福のために、少しでもインターブランドがお役に立てれば幸いである。
2022
2022 Interview