意志のある変革が、ブランドを成長させる | インターブランドジャパン

Best Japan Brands 2021 Article

意志のある変革が、ブランドを成長させる

Best Japan Brands 2021概況から、これからのブランド成長を考える

 

コロナ禍においても進化を続けるブランドとは

2020年に世界を覆ったCOVID-19によるパンデミックは、僅か数ヶ月という期間の中で、世界中の人々のこれまでの行動、考え方、価値観に多大な影響を及ぼし、今もなお、取り巻く社会環境は変化を続けている。今回の人々の行動や価値観の変化は、企業にとっては、社員の働き方はもちろんのこと、モノづくりやサービスのあり方の前提を大きく変え、2020年は、そうしたさまざまな足元の変化に対して、ビジネスとしてどのように可及的に対応するかが課題となった一年となった。この変化は一過性のものではではなく、今後さらに引き起こされる変化の前提であると捉えることができる。コロナ禍以前から取り上げられていたDX (デジタルトランスフォーメーション) に象徴される変容の波は、人・組織やマネジメントといった会社のあり方そのものに、さらには顧客自体の価値軸が大きく変容する時代を迎え、ブランドとしての価値軸をも変えることに広がりつつあり、すなわちブランディングやビジネスそのものが変容する時代の幕開けとなったと考えられる。こうした歴史的なターニングポイントで、今年のBest Japan Brandsはどのように変化したのか。

Best Japan Brands 2021にランクインした全100ブランドの対前年成長率は-3.9%となり、昨年秋に発表したグローバルブランド・ランキング Best Global Brands 2020が全体で+9%成長したことと比較して、対照的な結果となった(前回 Best Japan Brands 2020の対前年成長率は+0.9%)。また、ランクインした100ブランドのうち、47のブランドが価値を減少させる結果となり、今回初めて全ての自動車ブランドがマイナス成長となるなど、コロナ禍が多くの日本ブランドに影響を及ぼしている。

その一方で、「パーソナルケア」や「リテール」などいくつか業種においては、同じカテゴリー内のブランド間で明暗が分かれる結果なども見受けられ、危機的な状況下においても強いブランドとは何かを考察することができる。

 

変化に対応する、強いブランドの要件を考える

社会の情報化・デジタル化とともに、顧客は自分たちの価値観に照らして「良いもの」を見定める洞察力と、それを他の人々に伝える発信力を持つようになっている。また、ソーシャルメディアを通じて、顧客の間で、大量の情報が高速で飛び交う時代の中で、人々の価値観は急速に変化し、多様化し続けている。

そのような環境下において、今、強いブランドに求められる要件は、力強いリーダーシップ(Leadership)のもとで、顧客を巻き込む画期的なブランド体験(Engagement)を提供し、顧客との持続的な関係性(Relevance)を併せ持つことである。COVID-19によるパンデミックは、ブランドに対するこれらの要請をさらに加速させていると言っても過言ではない。この3つの観点から、今回際立った伸長が見られたブランドを見ていきたい。

 

  1. Leadership:強く対応力のあるブランドを構築する
    「空気で答えを出す会社」Daikin(26位、前年比+18%)、「アミノ酸のはたらきによって食と健康の課題解決企業になる」 Ajinomoto(43位、同+19%)、「アソビきれない毎日を。」BANDAI NAMCO(55位、同+19%)、「循環型社会の実現」Mercari(94位、同+19%)といった明確なパーパスを持つブランドは、コロナ禍においても、社員一人ひとりが何をすべきか方向性が明らかなため、速やかに結束力を持ってアクションすることができ、ブランド価値とビジネス双方を大きく伸長させている。
    また、企業目標にブランド価値を設定し「ブランド価値経営」を実践しているKirin(22位、同+11%)、Yamaha(30位、同+8%)、Ajinomoto(43位、同+19%)は、トップの強いコミットメントのもと、全社活動としてブランディングを推進し、ブランド価値を向上させている。
  2. Engagement:企業と顧客との相互の関係を形作る
    Nintendo (8位、同+31%)は、コロナ禍で人々が不自由な生活を強いられる中、他のプレーヤーと交流しながら村をつくるソフト「あつまれ どうぶつの森」を提供。WORKMAN(78位、同+57%)は、ブランドの熱いファンであり、ブランドの価値を共有しているブロガー達と「製品開発アンバサダー」として契約し、プロダクトを共創することで、顧客視点のユニークな商品を創出し続けているなど、顧客を巻き込み、対話し、共創を実現したブランドが大きく成長している。
    UNIQLO(6位、同+16%)は、コロナ禍において、独自技術のエアリズムでマスクを生産、また、“服を次に生かす”「RE.UNIQLO」を開始するなど、常に独自のブランド体験を創出している。
  3. Relevance:顧客との絆を強化しロイヤルティを生み出す
    Sony(3位、同+14%)は、クリエイティブ・エンターテインメントブランドとして、コロナ禍で最前線の医療に従事する人々、遠隔で学ぶ子供や教師、エンターテインメント業界全体に携わる人々を含む、COVID-19の影響を受けた世界中の人々を支援する1億ドルの救援基金を創設するなど社会貢献活動にも積極的に取り組み、その存在感を増している。Fujifilm(38位、同+21%)は、新型コロナウィルス感染症に対する効果が期待されている抗インフルエンザウィルス薬「アビガン錠」の増産体制の構築、AI技術を用いた新型コロナウィルス肺炎の診断支援技術開発の開始など、迅速な対応力で、総合ヘルスケアカンパニーとしての信頼感を獲得している。
    Nitori(69位、同+39%)は、顧客のニーズに合った商品を迅速に開発することを通して、「低価格」で「機能的」な商品であることを堅持しながら、「お洒落さ」や「楽しさ」を増幅させ、情緒的にも選ばれるブランドへと進化している。

 

インターブランドでは、上記の強いブランドの要件に基づき、今回よりブランド価値評価の3つ分析のうち、ブランド将来に向けた成長性・確実性を評価するブランド強度スコアのクライテリアの見直しを行っている。この変更により、これまで以上に顧客に対して積極的に関係性を構築しているブランドが評価されるようになっている(詳細は「これからのブランドをマネージする新たな視点」を参照)。

 

今後のブランディングのあり方 

今後の日本ブランドの成長に向けた大きなポイントは、大胆で意志ある変革のアクション(MOVES)が迅速に出来るかという点にあるのではないかと考えている。

今回の発表に先立ち、多くのトップブランドのリーダーから実践的で示唆に富むお話を伺うこ機会をいただいた。その中で多くの方々から聞かれたのは、コーポレートブランドの重要性が一層高まっている、ということである。商品の特性や付加価値だけでなく、企業の社会に対するあり方やその取り組み姿勢に対する共感が購買行動、投資行動、就職行動において重要なドライバーとなっているという実感が生まれており、COVID-19以前からも傾向として見られていたが、ここ一年でそれが一層顕著になったという声が多く聞かれた。

社会あり方、顧客のニーズ、市場構造など企業を取り巻く環境が大きく変わり、企業の変革が必須となるなかで、重要性が高まっているブランドを変革の旗印として活用することができるか、ブランディングを通じて企業の在り方そのものを変えていくことができるか、そのための大胆で意志ある変革のアクションが取ることができか。その結果、社内における強いリーダーシップが生まれ、顧客や社会との相互関係が構築され絆が育まれるか。 そのような強いうねりを生み出すアクション(MOVES)ができるか、これからの数年はそれが成功の可否を握ると考えている。

 

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Brand Leader’s Interview​
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