YAMAHAヤマハ株式会社執行役員 ブランド戦略本部長 兼 マーケティング統括部長大村 寛子 様 | インターブランドジャパン

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YAMAHA

大村 寛子 様

ヤマハ株式会社
執行役員
ブランド戦略本部長 兼 マーケティング統括部長

Best Japan Brands 2023
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社の経営において、ブランドはどのように位置づけられていますか。またそのために、活動の責任者や、必要な部署(事業部門、等)の巻き込み、リソース配分をどのように行っていらっしゃいますか?

当社は、2016年から経営ビジョンに「なくてはならない、個性輝く企業になる」と掲げ、その実行の要として「ブランド力を一段高め、高収益な企業へ 」という打ち出しをしています。要するに、ブランドは経営の中核に他なりません。ブランド戦略委員会の委員長は社長自身が務め、進むべき方向についてもトップ自ら指揮しています。また、ブランド戦略委員は主な部門の責任者が務め、ブランドの課題については四半期に一度、議論しています。
ガバナンスや効果的な発信のために予算化もされています。そのリソース配分については、サスティナビリティや社会文化貢献に資するかという視点で長期的な投資となり得るかという判断基準の下、音楽家育成のための奨学金制度やアメリカの退役軍人のPTSDをケアする音楽サポートプログラムへの寄付など、地域の特性に応じて、各販売子会社が主体的に取り組んでいます。

ここ数年、企業と顧客・社会との繋がりや関係構築が重要視されていますが、貴社の事業やブランドの成長のために、どのような点に注力した取り組みを行っていますか?

以前からLTV (Lifetime Value) として音楽を楽しんでいただくという観点を重視し、楽器の販売のみならずアフターサービスや付帯するアプリサービスなど、さまざまな切り口でお客様が音楽を続ける活動を支援していますが、2022年4月からの新中期経営計画「Make Waves 2.0」では、サスティナビリティを価値の源泉にする活動、とりわけ「地球と社会の未来を支える」という重点テーマを掘り下げて取り組んでいます。楽器の材料となる希少樹木の育成や保全、持続可能性に配慮した木材利用もそのひとつです。
そのほかにも、非接触の時代を捉えた遠隔コミュニケーションとして、スピーカーフォンやリモート合奏サービスの「SYNCROOM(シンクルーム)」を。健康と安全への貢献として、耳への負担を抑えるヤマハの独自技術「リスニングケア」を使ったイヤホン、ヘッドホンなどをリリース。自動車の電動化や自動運転の技術が進む中で、車載オーディオのビジネスも進めており、ハンズフリーや緊急通報などの音声ソリューションで、車内の安全に貢献する取り組みがスタートしています。いろんな切り口で、社会課題解決のためのソリューションをさらに掘り下げていきます。

グローバルでも成長しているブランドは、業界に縛られない価値提供を通じて、新たな顧客獲得を実現しています。今後、貴社においては、既存の「中核事業」を梃に、どのように事業・ブランドの成長につなげようと考えられていらっしゃるか?お聞かせください。

音楽のある生活を支える存在になるために、ハード中心で捉えていた事業ドメインを、音楽制作、配信、ライブエンタテインメントなどの市場ごとに捉え直しています。楽器も同様で、サービスまで提供していかないと音楽ライフを支える存在にはなり得ません。先にお話ししたリモート合奏サービスの「SYNCROOM」も、そんな発想から生まれたサービスです。このように考えると、ハード中心のドメインで考えるより、ソフト中心のドメインの方が市場規模は大きい。そこに着目していくことで、私たちがプレイできる領域は広がり、事業の成長にもブランド成長にも繋げられると考えています。

ブランドの活動を成果に結びつけるためには、「意味ある行動を起こす」ことが不可欠です。貴社においては、ブランドに基づく企業のカルチャーづくりや社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

社員のエンゲージメントを高めることは、中期経営計画の柱のひとつです。ステークホルダーの序列としても、お客様に次ぐ存在として社員を位置付け直し、社員に見えるカタチで、アクションを進めています。たとえば、エンゲージメントサーベイを開始。自律的なキャリア開発を促すために、人的投資額も従来の2倍計上しています。また、D&Iの取り組みとして、多様な能力が活かされるよう海外も含めたクロスボーダーの人材配置も開始しました。
風通しの良い企業風土作りをめざして始めた、ボトムアップの事業提案制度から生まれたビジネスもいくつかカタチになり始めています。

今後、さらなる事業・ブランド成長に向けて、どのような新たな取り組みをされようとお考えですか?

これまで当社は主にユーザーを対象にした活動を行ってきましたが、より幅広いお客様の信頼を獲得し、共感を拡大することが課題だと考えています。解決策のひとつとして、文化での発信やサスティナビリティに関する活動を一層強化していきます。
誰でも自由に弾けるピアノとして、駅や商業施設などのオープンスペースに設置している「LovePiano」や、音楽が持つ人と人をつなげる力を使って、地域の活性化や企業と社会の共有価値の創造をお手伝いする「おとまち」は、そのひとつといえるでしょう。こうした活動を、ストーリーとして発信する取り組みにもチャレンジしていきます。

Brand Value Chart

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