Pigeonピジョン株式会社代表取締役社長 北澤 憲政 様 | インターブランドジャパン

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Pigeon

北澤 憲政 様

ピジョン株式会社
代表取締役社長

Best Japan Brands 2023
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社の経営において、ブランドはどのように位置づけられていますか。またそのために、活動の責任者や、必要な部署(事業部門、等)の巻き込み、リソース配分をどのように行っていらっしゃいますか?

ブランドとは、『最終的には研究開発や技術力に裏付けられた優れた個々の商品から得られる安心感』だと私は考えています。また、当社の「存在意義」を発信し、その実現に向け活動することも、お客さまの安心感につながると考えます。
その「存在意義」の実現に向けた活動をさらに推進するために、社員の心と行動の拠り所であり、すべての活動の基本となるPigeon Wayをわかりやすく整理して、社内外への発信を開始しました。
また、当社の存在意義「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」で掲げる「赤ちゃんにやさしい場所」を、社員一人ひとりが存在意義の実現に向けてより活動しやすくなるように、具体的に6つの社会の姿で描いた「赤ちゃんにやさしい未来像」を新たに策定しました。このような取り組みは、事業戦略が存在意義に紐づいていることを重視しているからこそであり、社員にもそれをメッセージとして伝えています。
また、「存在意義」を実現していくためには、社員や事業部門がより柔軟に新たな発想や活動を生み出せるような環境づくりも大事だと考えています。

ここ数年、企業と顧客・社会との繋がりや関係構築が重要視されていますが、貴社の事業やブランドの成長のために、どのような点に注力した取り組みを行っていますか?

昨今は、社会貢献の観点から自治体と連携する取り組みが増えています。昨年は赤ちゃん向け防災用品シリーズ「sonaetta(ソナエッタ)」を8自治体へ1,500世帯分の商品無償提供を行いました。このシリーズのひとつである「災害用授乳カップ」は災害を体験した方々の切実な思いに真摯に向き合う姿勢が評価され、グッドデザイン・ベスト100、グッドフォーカス賞「防災・復興デザイン」をダブル受賞しています。また、「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」宣言に賛同いただける自治体や企業と協働し、「赤ちゃんの防災」に関する啓発活動を行っています。将来的には赤ちゃんにやさしいコミュニティづくりができればと思っています。実現には医療、教育、産業など様々な分野との協働が必要となりそうです。
他にも、環境負荷軽減活動にも注力しています。2025年までに、ライフサイクルアセスメント (LCA)の視点に基づく独自の環境基準を1つ以上クリアした製品に表示する「ピジョン環境ラベル」の日本国内ベビー・マタニティ全製品への表示を目指しています。今年 1 月にはESGについて優れた取り組みを評価するFTSE Russell社の「FTSE4Good Index」の構成銘柄にも選定されました。

グローバルでも成長しているブランドは、業界に縛られない価値提供を通じて、新たな顧客獲得を実現しています。今後、貴社においては、既存の「中核事業」を梃に、どのように事業・ブランドの成長につなげようと考えられていらっしゃるか?お聞かせください。

業界内及び業界を越えた競合・分業の意識が変化する中で、経済的な価値を高めながら社会へ貢献していく「インパクト投資」の実践がますます重要になってくると思います。
これからも、この世界を赤ちゃんにとってやさしい場所に変えていくことをめざす「存在意義」は変わりませんが、赤ちゃんを出発点に、お母さん、お父さん、あるいは子育て前後の期間のサポートなど、柔軟な発想で事業や活動を考えていく必要があると考えています。

ブランドの活動を成果に結びつけるためには、「意味ある行動を起こす」ことが不可欠です。貴社においては、ブランドに基づく企業のカルチャーづくりや社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

カルチャーづくりや社員のエンゲージメントを高める上で大切なことは、理念の押し付けはしないことでしょう。ピジョンでは社内研修の実施に加えて、対外的な実践活動における成果を共有することも重視しています。
特に重要視しているのが「感動体験の共有」です。「赤ちゃんにやさしい未来」を実現するために社会全体で考え、行動につなげる取り組みの一環として、2021年より、全国の中学生向けに教育プログラム「赤ちゃんを知る授業―赤ちゃんにやさしい未来のためにー」を提供する活動を始めました。一部の学校には、ピジョン社員が学校に赴き、授業を行っています。そうした活動の中で授業を受けた生徒の方々の反応から社員が得られる感動体験の共有は、存在意義の実現に向けて社員を一つにする上でも重要なものとなっています。

今後、さらなる事業・ブランド成長に向けて、どのような新たな取り組みをされようとお考えですか?

ベビーを中心とした事業をお客さまの視点からどのように拡大をしていけるか、検討・実践を開始しています。ブランドの体系をいかに整理し、活用するのか、グローバルの観点からの検討も必要だと思っています。
また2019年から続けている社員による提案制度PFA(Pigeon Frontier Award)が社内の人材の発掘や交流、活性化に大いに役立っています。実際にこの制度から商品化に至ったものもあります。初乳採取サポートデバイス「Precious Drop(プレシャスドロップ)」は、その一つで、助産師として病院勤務経験のある社員が、初乳の採取に困惑するママの姿に直面した経験から企画し、商品化に至りました。また、直近では、子供が生まれた社員全員が提出する育児レポートを書籍化した『ピジョンの子育て』 (著者:ピジョン出版プロジェクトチーム、漫画:倉田けい)が今年 1 月19日に発売されるなど、社員の自由な発想が、商品やサービスとして具現化されています。
今後も存在意義の実現に向けて、柔軟な発想で取り組んでいきたいと考えています。

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