Lionライオン株式会社コーポレートコミュニケーションセンターコーポレートブランディング室 室長 阿曾 忍 様 | インターブランドジャパン

88

Lion

阿曾 忍 様

ライオン株式会社
コーポレートコミュニケーションセンター
コーポレートブランディング室 室長

Best Japan Brands 2023
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社の経営において、ブランドはどのように位置づけられていますか。またそのために、活動の責任者や、必要な部署(事業部門、等)の巻き込み、リソース配分をどのように行っていらっしゃいますか?

2022年に社内に点在していた経営理念など複数の概念を、パーパス(存在意義)と、その実践の拠り所となる5つのビリーフス(信念)、そしてDNA(創業から受け継ぐ想い)の3点に再整理し社内外に発信しました。このうちパーパスである「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」が、全企業活動の起点になっています。
コーポレートブランディングを推進する上では、これに関わるテーマの経営層参加の会議体を設定することでガバナンスを効かせているのをはじめ、社内外への浸透と共感獲得のために2021年からコーポレートブランド戦略室を設けています。2022年8月からはコーポレートブランディング室に改称し、戦略のみならず具体的な実行に関わることも担っています。組織・人材関連の取り組みから経営の成長戦略、サステナビリティ重要課題との連携、さらには国際事業へのパーパスの実装などの取り組みを進めています。
当社では、今年 1 月から管理職層の約900人を対象とした新人事制度が立ち上がりました。パーパスを実践していくためにポジションごとに職務や役割の内容を規定し、従業員が将来の職務のイメージや目標を明確に持てるようにする制度です。パーパス実践と個々人の目標をつなげ、その目標達成に向けて、ビリーフスを体現しながらモチベーションや専門性を高めること、さらにそうした個々人の活動を生産性の向上につなげていくことを目標に、この新人事制度と企業理念の共感・賛同・理解の連動を図っています。

ここ数年、企業と顧客・社会との繋がりや関係構築が重要視されていますが、貴社の事業やブランドの成長のために、どのような点に注力した取り組みを行っていますか?

顧客との関係は、プロダクトやサービスを提供する側と体験や便益を享受する側という能動・受動の関係性ではなくなってきています。顧客との信頼関係構築をソーシャルキャピタルの蓄積と捉え、それをいかにして中長期的な企業成長につなげるかを考えるべき時代になっています。わたしたちはサステナビリティ最重要課題として、「健康な生活習慣づくり」を掲げており、オーラルケアと清潔・衛生行動で 1 0億人の習慣化を目指しています。国内はもとよりアジアにおけるオーラルケアの習慣化ならびに清潔・衛生行動の習慣化に寄与するための取り組みを進めており、プロダクトの提供だけでなく、健康な生活習慣づくりに貢献するサービスや情報の提供を進めています。国内では自治体や歯科医師会とも連携した活動や、法人向けの健康経営支援サービス「おくちプラスユー」など、新たな事業がスタートしています。

グローバルでも成長しているブランドは、業界に縛られない価値提供を通じて、新たな顧客獲得を実現しています。今後、貴社においては、既存の「中核事業」を梃に、どのように事業・ブランドの成長につなげようと考えられていらっしゃるか?お聞かせください。

当社は、成長戦略として4つの提供価値領域「オーラルヘルスケア」「インフェクションコントロール」「スマートハウスワーク」「ウェルビーイング」を定めて事業を推進しています。さらには、既存の事業領域に留まらず、ヘルスケアに関わる幅広い課題を発見し、これまでにない習慣を提案する「NOIL」という新価値創造プログラムなどもあり、ここからいくつか事業化したものや事業検討しているものも生まれています。また既存の中核事業の中にもブランド成長となる新たな習慣につながる視点はまだまだ眠っていると考えています。欧米型のマーケティング、破壊的イノベーションには、既存の市場やバリューチェーン、顧客の体験プロセスを「アンバンドル(分解)」する考え方があります。当社が2018年に発売した「ルックプラス バスタブクレンジング」は、お風呂掃除をアンバンドルしたことで、バスタブのお掃除の潜在的な課題を捉えた商品ですが、こすり洗いが常識のバスタブ掃除の概念を変え、お客様に好評をいただく商品となりました。今では競合他社が追随するなど、市場に新たなカテゴリーを創出しています。また習慣には社会を変える大きな力があります。人々の生活の中にある日々の些事、気が進まない習慣を、もっと前向きに楽しく、全ての体験をPositiveな習慣(Positive Habits)に変えていくことで生活を豊かにすることで、習慣による社会的・経済的な価値を生み出し、事業・ブランドの成長につなげていきたいと考えています。
当社のビリーフス(信念)にもあるように、価値は顧客が決めるものです。これからもお客様が価値だと感じていただける商品やサービスを提案し続けられるように、より良い習慣づくりに取り組んでいきます。

ブランドの活動を成果に結びつけるためには、「意味ある行動を起こす」ことが不可欠です。貴社においては、ブランドに基づく企業のカルチャーづくりや社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

一人ひとりがパーパスを実践していく上で、自律的に考え行動できるよう、先にお話しした5つのビリーフス(信念)を価値判断の拠り所として定めました。パーパス、ビリーフスに従業員が賛同・共感し、業務に向き合う際にこれらを思考・接続しながら、組織力としても最大化を図っていけるカルチャーデザインの設計や、それらを土台とした人材関連の諸施策を通じた従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。前提として言えるのは、顧客の価値です。習慣の定着化は顧客との互いの信頼関係構築があってこそ成り立つものだと考えます。正解のない時代だからこそ、そういった意味では、私たち自身も互いに共創し合えるようにビリーフスを対話軸として化学反応を起こしていけるカルチャーづくりを進めています。
例えば、経営層がパーパスやビリーフスをテーマにディスカッションを行っている動画を従業員に配信して理解を深める機会をつくったり、社内報を活用したパーパスに関するコンテンツの継続的な発信、全従業員を対象としたパーパス、ビリーフスのワークショップなど、あらゆる切り口で縦・横・斜めのコミュニケーションが図れる取り組みを進めています。

今後、さらなる事業・ブランド成長に向けて、どのような新たな取り組みをされようとお考えですか?

当社の価値創造プロセスからなるアウトカムを実現し、社会価値・経済価値を生み出していくためには、世の中にいかにインパクトを創出していけるかという視点を持ってビジネスデザインを設計していく必要があります。インパクト指標についてはサステナビリティ重要課題となる特定マテリアリティを捉え、企業価値の向上と直結する事業成長ならびに環境や社会の課題解決につながるよう、トレード・オン型での推進に取り組んでいるところです。
例えば、新製品として発表した4月発売予定の「Airis(エアリス)」は、生活排水の削減・節水にも配慮した柔軟剤です。またハブラシリサイクルや詰め替えパウチの水平リサイクルのプロジェクトも取り組みの一つです。日本ならではの詰め替え文化をアジアにも拡げ、お客様にはお求めやすい価格でエコの習慣化にもつながるものとして定着させていきたいと考えています。
こういったパーパスの実践となる具体的な活動の伝播、情報の蓄積と考え、オウンドメディアでストーリー性をもって情報発信する取り組みも強化しています。昨年7月に立ち上げたメディア「LION Scope(ライオン スコープ)」と「note」の公式アカウントでは、当社が取り組む習慣づくりの情報や習慣づくりそのものを探求している姿勢をインタビュー記事などを通じて発信しています。このような企業活動の情報取得性を高めていくことで、習慣づくりに取り組む当社へのステークホルダーからの信頼や期待の獲得につなげていきたいと考えています。

Brand Value Chart

一覧に戻る

Best Japan Brands 2023 Insight
Best Japan
Brands 2023
Insight
Brand Leader’s Interview​
Best Japan ​Brands
2023​ Interview​​