Brotherブラザー工業株式会社CSR &コミュニケーション部 部長 出原 遠宏 様 | インターブランドジャパン

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Brother

出原 遠宏 様

ブラザー工業株式会社
CSR &コミュニケーション部 部長

Best Japan Brands 2023
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社の経営において、ブランドはどのように位置づけられていますか。またそのために、活動の責任者や、必要な部署(事業部門、等)の巻き込み、リソース配分をどのように行っていらっしゃいますか?

ブラザーにとって、ブランドは115年の歴史の中で積み上げてきた大切な資産です。ブラザーではそのブランドを、さまざまな事業活動の中で各拠点や部門が自律的に活用しています。私が所属するCSR &コミュニケーション部では、コーポレートとしてのブランディングをグローバルに推進するとともに、ブラザーというブランドを最大限に活用できるよう、品質管理、デザイン、知財等の関連部門と協力し、ブランドのガバナンスを推進しています。
一方でブラザーグループは現在、業務用・産業用の領域を拡大しようとしており、マスメディアを使った、最終消費者に向けた製品広告を減らす傾向にあります。その結果、20代、30代のブランドに対する認知度が徐々に低下しており、個人株主の獲得やリクルーティングに対するマイナス影響、さらにはビジネス全体に対する将来的な影響を懸念しています。これらを解決するためにブラザーでは、提供価値を分かりやすく知ってもらうことができる動画コンテンツを制作し、SNSやYouTubeなどを活用してブラザーになじみの薄い若年層に向け配信をしています。またコンテンツの内容に対しては、経営トップ自らも意見を出してくれています。

ここ数年、企業と顧客・社会との繋がりや関係構築が重要視されていますが、貴社の事業やブランドの成長のために、どのような点に注力した取り組みを行っていますか?

昨年、社長を含めた役員以上のメンバーで議論を重ね、ブラザーの強みとビジネスモデルを生かし、お客様や社会への提供価値を向上させるプロセスを可視化した〈価値創造プロセス〉を作成しました。価値創造の軸となるのは、常にお客様に寄り添い、お客様の求める価値を提供していく“At your side.”の精神です。そこからブラザー独自のマネジメントシステムを実践して顧客価値を拡大し、社会の発展と地球の未来に貢献していくことを、「統合報告書2022」の中でステークホルダーの皆様に向けて約束しています。

グローバルでも成長しているブランドは、業界に縛られない価値提供を通じて、新たな顧客獲得を実現しています。今後、貴社においては、既存の「中核事業」を梃に、どのように事業・ブランドの成長につなげようと考えられていらっしゃるか?お聞かせください。

2030年に 1 兆円企業になることを目指し、業務用・産業用領域の売上比率を現在の3割から5割まで伸ばすことを目標にしています。今後、モバイルデバイスのさらなる普及や環境配慮にともない紙の使用は減少し、オフィスや家庭に向けたプリンターの市場が縮小していくことは明らかです。そのなかでブラザーが今後も成長を続けるためには、産業機器や産業用印刷などの事業を拡大していく必要があります。この領域では、環境配慮や労働人口の減少などの社会課題への対応も重要であり、省エネや自動化・省人化といったニーズに応えることができる製品を提供しています。
オフィス向けプリンターの領域においても、製品の売り切りのビジネスではなく、リサイクルやサブスクリプションを推進し、環境に配慮し、お客様により長期にわたってご使用いただけるサステナブルなビジネスモデルにシフトしたいと考えています。

ブランドの活動を成果に結びつけるためには、「意味ある行動を起こす」ことが不可欠です。貴社においては、ブランドに基づく企業のカルチャーづくりや社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

ブラザーが10年以上前から実施している従業員意識調査の中に「ブラザーの一員として誇りを持って仕事をしていますか」という設問に答える項目があるのですが、この平均値は5点満点中継続的に4点以上をマークしています。こうした背景として、経営層による積極的なコミュニケーションや従業員自身の自律的な行動などが理由として挙げられます。
ブラザーではグループの全ての活動の礎として「ブラザーグループ グローバル憲章」を定めていますが、各拠点や部門では共有リーダーと呼ばれる人がワークショップなどを実施し、考え方を浸透させるとともに従業員の自律的行動を促進しています。
また、経営トップによる情報発信や社員との対話もたいへん重視しており、社長や執行役員は社内ブログで週 1 ~2回、8言語でグローバルに情報を発信しており、1 on 1 のミーティングも数多く実施しています。2022年における執行役員20人の総対話数は4,600回以上に上りました。
こういった活動によって、経営トップの考え方やブラザーが大切にする精神が、従業員の隅々にまで伝わり、従業員の自律的行動につながっていると考えています。

今後、さらなる事業・ブランド成長に向けて、どのような新たな取り組みをされようとお考えですか?

「ブラザーグループビジョン At your side 2030」の中では産業用領域を注力領域の一つと位置付けていますが、販売拠点におけるブランド力強化のためのリソースは決して十分とは言えません。したがって日本で制作した動画などの様々なコンテンツを、マーケットの環境が違う海外の拠点においても、様々な工夫をして展開できるよう計画中です。
最後になりますが、変化が激しい環境の中、若い従業員がブラザーで働いていることにより大きな希望を持ってもらえるよう、会社の方向性をしっかりと示すことができるようなブランディング活動を、これからも積極的に推進していきたいと思います。

Brand Value Chart

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