WORKMAN株式会社ワークマン専務取締役 土屋 哲雄 様 | インターブランドジャパン

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WORKMAN

土屋 哲雄 様

株式会社ワークマン
専務取締役

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

ブランドの位置づけには、狭い意味と広い意味があります。
狭い意味では、第一想起で選ばれるブランドでありたい。身に付けるもので機能性と言えばWORKMANと言われるようになりたい。広い意味では、我々が目指す“100年存続する企業”に必要な、人と人が善意でつながるブランドになりたい。WORKMANの熱いファンとして貴重な意見をいただけるアンバサダーの先には、お客様がつながっています。取引先は決して変えず、加盟店にも子供が継承して100年存続していただけるようにしています。無理をさせないことで、善意と信頼の輪でつながるサプライチェーンが成立しています。社員にもノルマは課さず、会社のパーパスに向かって、自らやりたいことをやってもらう。外も内も、人と人が善意でつながり、みんなで成長する。そんな無形資産を誇れるブランドをめざしています。
経営方針発表会では、部門長クラスに、数字ではなく、個人的に「やりたいこと」を発表してもらい、部下から共感を得る形で共に取り組んでもらうことにしました。この形に変えるのに8年かかりましたが、社内の意思疎通は非常に良くなったと思います。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

「機能と価格に新基準」をパーパス(目標)に掲げています。顧客や生活者には、モノではなくコト消費に重点を置いてほしい。キャンプ用品やウエアにお金を使うより、親子でキャンプに行く機会を増やし、思い出づくりにお金を使っていただきたい。そのために、WORKMANが高機能で普及価格の製品を提供するのです。
パーパス実現のために、「声のする方にゆっくり進化する」を掲げています。アンバサダーは世の中の声ですから、それをきちんと聞く。しかも100年の競争優位を目指しているので、あわてず、じっくり、強みを作り上げていくことを大切にしています。新商品の初年度は生産量を抑え、その後4年間バージョンアップし続ける。これが、我々の製品開発のやり方です。時間に追われず、プレッシャーなしの環境で開発することで、毎年WOWな製品品を生み出すことができます。
作業服で培ってきたDNAを、アウトドアウェアや日常服の領域でも大切にする。それが我々の「人格」であり、無形資産としてのブランドだと考えています。個々の製品は真似されても、我々の「人格」や「気風」は決して真似できないはずです。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

カルチャーづくりが一番重要だと思います。忖度で動く「報連相」をやめて、自分で考え、人の話を聞き、良いと思ったら考えや行動を変えられる「変革型の風土」「自走できる組織」へと変えるのに、7~8年かかりました。成果主義ではなく、自分が走りたいから走る。だから、WOWな商品が毎年生み出される。そういうカルチャーこそがWORKMANの強みです。
社員の能動的な行動力を引き出すために人事制度改革とも連携してきました。欠点を指摘するのではなく、得意なことを伸ばすことが大切です。社員の採用においても、「親切心」「学習意欲」「機動力」の3つを基準にしています。
アンバサダーも、単に拡散力がある人ではなく、WORKMAN愛が強い人にお願いしています。つまり、継続性があり、良き友達としてフランクに本音で議論できる関係を重視しています。欠点を指摘するのではなく、良いポイントを指摘して、それをどう伸ばしたら良いかをお互いに善意を持って議論することを大切にしています。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

100年続くためには、社会的意義がないといけない。なぜ自分たちが存在するのかというパーパスを明確にしておく必要があると思っています。
「機能と価格に新基準」を提供するのがWORKMANのパーパスなので、今後5年で商品の50%を環境配慮型に置き換え、それらを低価格で実現し、定価で販売しきること、廃棄率を徹底的に下げることをめざします。これらのアクションプランに関しては、トップダウンではなく、現場から「やりたい」という声が上がってくるのを待つことが大切です。現場の意欲に根差した取り組みであれば、やり続けることができます。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

狭い意味では、機能性でWORKMANというキャラを強化すること。そのために、誰もがびっくりする製品をつくり、製造ロットを調整しながら、課題があればすぐに改善して、常にアップデートするサイクルでブランド価値を高めていきます。
広い意味では、無形資産をもっと鍛えて活性化したい。急にやると続かずにリバウンドしてしまうので、自然体で100年先まで競争優位を継続することを考えて、毎年少しずつ実行していきます。

Brand Value Chart

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