Murata株式会社村田製作所広報部 部長 小澤 敏之 様 | インターブランドジャパン

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Murata

小澤 敏之 様

株式会社村田製作所
広報部 部長

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

村田製作所は、一般生活者の方々は目にすることのないもの=電子部品を作っている典型的なBtoB企業です。私たちはこれまで、ブランドという表現こそ使ってきませんでしたが、1954年に創業者が創った「社是」が、結果的にブランドとして機能しています。
私たちは、社是の一節である「独自の製品を供給して文化の発展に貢献」することを、自身の中心価値と位置付けています。これがしっかり機能しているのは、業界の競争が激烈で、悩んだり立ち止まってしまうとき、拠り所になるものが必要だからかもしれません。目の前の利益やシェアではなく、「文化の発展」という大目標があるから、努力が続けられるのだと感じています。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

私たちのつくる独自の製品とその小型化が、たとえばスマホの機能・性能を向上させ、より便利な社会を作り、社会との関係構築のベースになります。しかし、一般生活者の方々が私たちの製品を目にする機会はまずありませんので、生活者や社会に広く認知されるのはなかなか難しいところです。そこで、より親しみのある存在になるべく情報発信・コミュニケーションを強化していこうと考えています。
マスブランディングに加え、学校へ出向いて行う出前授業やロボットを使った小さな催しなど、地域とのつながりを深める活動も重視しています。私たちはこれを、ローカルブランディングと呼んでいます。また、関東最大の研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」には子どもたちが科学を楽しく学べる体験施設「Mulabo! (ムラーボ!)」を併設。当社の事業活動と紐づいた科学を楽しく知り・体験してもらう活動を始めました。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

村田製作所は、激しい環境変化のある業界にいます。かつては拡大する業務に忙殺され、社内が疲弊することもありました。そこで2004年から、CSのみならずES(従業員満足度)を最上位の概念に掲げ、「文化の発展に貢献」するにふさわしい組織風土づくりに取り組み続けています。
現場主義を貫き、社内SNSを駆使して自ら従業員にメッセージを発信し続けるトップの存在や、毎年10月を「社是月間」とし、全社を挙げて社是について考え、議論を交わす取り組みもエンゲージメントの強化に貢献しています。
2年前には、グループ社員の教育研修施設として「ムラタ イノベーションミュージアム」も開設しました。ここは、創業からの歴史や経営理念、大切にしてきた価値観を学ぶことができる場所。社員の行動変容やイノベーションを促し、さらなる成長に繋げることをめざしています。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

SDGsやサステナビリティに対しては、業界で初めて「RE100」に加盟するなど、緊急かつ重要度の高いテーマとして取り組んでいます。具体的な成果のひとつとして、昨年11月から、生産子会社である金津村田製作所(福井県あわら市)は再生可能エネルギー100%で稼働するようになりました。
これを可能にした背景には、コストに対する独自の考え方があります。企業会計は「財務」「非財務」に分類され、環境対策は一般的に「非財務」とされますが、私たちはこれを「未財務」と位置付けています。これから価値として顕在化し、新たな価値として戻ってくるという考え方です。さらに、経済価値と社会価値は足し算ではなく掛け算であるという考え方で、今後も「未財務」への投資を戦略的に進めていきます。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

村田製作所は製造業ですから、世界に工場があります。一般的に工場は、その活動やサイズの大きさゆえに地域へのプラス面だけでなくマイナス面もあります。だからこそ、地域の課題解決につながる活動を継続的に行い、当社の事業や取組をご理解いただきながら信頼関係を築くことに努めています。この取り組みを通じて地域の負担を減らすだけでなく、地域の方々にプラスに働くような地域貢献がどれだけできるかが私たちのチャレンジであると考えています。
1970年代に策定された「この工場があることが この地域の喜びであり 誇りであるように 立派にしよう。この工場に働くことが 私達の喜びであり 誇りであるように 立派にしよう。」という創業者が残したムラタが大切にしてきた言葉を具現化すべく、これからも愚直に努力を続けていきます。

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