Lionライオン株式会社経営企画部コーポレートブランド戦略室 室長 阿曾 忍 様 | インターブランドジャパン

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Lion

阿曾 忍 様

ライオン株式会社
経営企画部コーポレートブランド戦略室 室長

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

コーポレートブランドの価値を高めることは、企業の価値を高めることにつながると考えています。
ブランドとは、相手の頭の中に認識されるそのブランドのらしさであり、パーパスなどの企業理念に沿った活動を通じて、ブランドのアイデンティティが相手の中に鮮やかに在ることだと思います。つまりブランドの価値とは、ステークホルダーの皆さまからいただけるあらゆる対価の総和だと言えます。ステークホルダーの皆さまが認識している姿がブランドだとするなら、今後はブランドの姿勢を伝える「ストーリーテリング(Story telling)」だけではなく、社会に対して実際に取り組んでいるファクトとして「ストーリードゥーイング(Story doing)」を意識し、そのファクトを各ビークルでしっかり情報展開していくことが重要だと考えます。価値ある未来に向かって、一人ひとりの毎日をより良い習慣づくりを通じて支え、サステナブルな社会への貢献に取り組み続けることがLIONの使命であり、これらの取り組みを通じてブランドの価値形成につなげ、企業価値の向上を目指していきます。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

生活者や投資家、ビジネスパートナーなどステークホルダーの皆さまは、ブランドが環境や社会の課題に対してどういった活動をしているのか注視しています。沈黙は何もしていないことと同義と捉えられますし、よりブランドのらしさを求めているように思います。2020年のCOVID-19へのマッキンゼー&カンパニーのレポートで提唱している7つの対策の中には、デモンストレートパーパス(企業の存在目的の実証)が重要な1つだと挙げています。まさしく企業理念であるブランドのパーパスを実証し、ステークホルダーの皆さまとの経験価値を共有してトラストビルディングに努めていくことで、信頼や期待を高めていきたいと考えます。今後は、起こりえる潜在的なインシデントに対しても、あらかじめシナリオをつくっておくことが重要となります。当社のパーパスである「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を起点とした経営から創り出される環境・社会インパクトを生活者や社会に対してナラティブなストーリーで伝えていき、将来的に顧客となっていただく方々や次世代の子どもたちも含めて、ステークホルダーの皆さまから信頼、期待されるような存在になっていきたいと考えています。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

当社では、2018年にパーパスを制定しています。パーパスを実践していくためには、パーパスへの理解と共感に加え、パーパスの浸透度とも相関性の高い従業員エンゲージメントの向上に重点を置き、インナーブランディングにも力を入れはじめています。今年2月に発表した中期経営計画では、パーパスの実践による事業成長を掲げており、従業員がパーパスを実践していくための判断の依り所として新たに「Beliefs」を策定しました。

価値は顧客が決める
自分の心に従い、自ら動こう
スピードは世界を救う
化学反応を起こそう
変化こそ、私たちを進化させる

今後は、「愛の精神の実践」を創業からの想いとして受け継ぎ、この5つのBeliefs(信念)を拠り所として、パーパスを実践していく企業文化の形成に取り組んでいきます。また社会的課題とパーパスの結びつき、パーパスと従業員の結びつきを考え、従業員との長期にわたる持続的なつながりを構築していくことができればと考えています。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

近江商人の精神には「三方よし」という言葉がありますが、「買い手よし、売り手よし、世間よし」と企業や株主の利益だけでなく、昨今のサステナブルな社会に貢献する意味合いが当時からあったことがわかります。今やSDGsへの貢献やサステナビリティ課題に取り組まない企業は社会からの信頼や期待を獲得することはできませんし、投資対象にもなりません。
「習慣づくり」を通じて人々の毎日に寄り添うこと、また習慣づくりが社会の文化定着に貢献していくことができるLIONのパーパスは、他にはないユニークなものだと思っています。
生活者はプロダクトブランドを通じてLIONとつながっているので、プロダクトとの支援貢献関係を高め合い、プロダクトブランドとLIONブランドの統合的な価値の形成につなげていく進化が求められるかと思います。例えば、当社ではインクルーシブ・オーラルケアというプロジェクトを展開しており、インドのミント生産農家とのサステナブルミントの取り組みや「こども食堂」などの場を通じて、子どもたちとの「おくちからだプロジェクト」を実施しています。またキレイキレイでは、自治体や公共事業といったビジネスパートナーと「キレイのリレー」という衛生習慣活動の普及啓発活動のコミュニケーションを展開しています。当社の描くストーリーを事業やプロダクトブランドの活動と交えながら伝え、ステークホルダーの皆さんと一緒にLIONが目指したい社会への共感づくりに取り組んでいます。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

パーパスを起点とした経営でブランド価値と企業価値の向上につなげていくには、まずはパーパスの理解と共感から生み出される従業員の推進力が必要不可欠となります。そのため企業理念の理解を深める対話の機会やパーパスと従業員の結びつきを考えるセッションなど、インナーブランディングの強化に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
また社外に向けたコーポレートブランディングはパーパスを起点とした事業活動そのものになります。サステナビリティ課題を捉え、それらの解決に向けた活動や開発によるアウトプットを出すことで、環境や社会へのインパクトとなるような取り組みを続けていかなければなりません。それらを生活者の視点でナラティブに届ける戦略的な情報展開を通じて、LIONが取り組む「習慣づくり」の本質を理解していただき、信頼や期待へとつなげていきたいと考えています。今後の時代の要請としては、ソーシャル・グッドはもちろんのこと、プラネタリー・グッドな価値を届けていくことが重要となりますので、社内外の両側面でコーポレートブランディングの取り組みを強化することでステークホルダーの皆さまの期待に応えていきたいと考えています。

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