Honda本田技研工業株式会社執行職 ブランド・コミュニケーション本部長 渡辺 康治 様 | インターブランドジャパン

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Honda

渡辺 康治 様

本田技研工業株式会社
執行職 ブランド・コミュニケーション本部長

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

Hondaは、1948年の創業以来、「人や社会の役に立ちたい」「人々の生活の可能性を拡げたい」という想いを原点に、自らの持つ技術・アイディア・デザインで、幅広いモビリティやパワーユニットを通じて、人々に行動する「パワー」を提供し、移動と暮らしの進化に貢献する価値提供を続けています。「2030年ビジョン」では、「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供する」というステートメントを掲げています。
そして、この想いを共有して、業務に当たる従業員一人ひとりの取り組みが、Hondaブランドを創ってきました。根幹にあるのは、Hondaフィロソフィーです。その基本理念である「人間尊重」と「三つの喜び」は、我々にとって単なる「ことば」ではなく、一人ひとりの価値観として共有され、行動や判断の基準となっています。この積み重ねこそが、ブランドの財産に他なりません。
これからもHondaは、意思をもって動き出そうとしている世界中全ての人を支えるパワーとなることで、人々の可能性を拡げていきたいと考えており、その活動を牽引する旗印として、Hondaブランドの強化を進めていきます。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

Hondaは経営基盤となる「既存事業の盤石化」を目的として、(株)本田技術研究所の二輪車や四輪車の開発機能を本田技研工業(株)に統合するなど、組織運営体制の変更を行い、事業体質を強化し、「強い商品・強いものづくり・強い事業」の実現に取り組んでいます。
加えて、新領域へのチャレンジとして、Hondaの研究開発を担う本田技術研究所では、環境と安全の先行技術の研究に加え、モビリティの可能性を“3次元”や、時間や空間の制限に縛られない“4次元”、さらには宇宙へと拡大し人々の時間や空間に新たな価値をもたらす独創的な技術研究を進めています。
2021年9月に発表しました「新領域への取り組み」としては、空の移動を身近にする「Honda eVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing:電動垂直離着陸機)」や バーチャルな移動を可能にする「Hondaアバターロボット」(分身ロボ)のほか、宇宙領域への挑戦を進めています。
社長の三部が「すべての次世代のモビリティに必ずHondaのロゴが付いているというのが我々の描いているビジョン」と話しておりますが、Hondaは 「環境」と「安全」に徹底的に取り組むとともに、将来に向けてモビリティ、パワーユニット、エネルギー、ロボティクスの領域で進化をリードするブランドでありたいと思います。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

大変革期を迎えていることもあり、原点に立ち返り、アイデンティティーを従業員が再確認することがとても重要だと考えています。創業以来変わらない、Hondaフィロソフィーに立ち返り、私たちのアイデンティティーの要素を整理しました。
Hondaは「創業以来、人を中心に考え、卓越したアイデアと技術で、一人ひとりの喜びをかなえてきた会社」ということを繰り返し、社内に発信していきたいと考えています。
2021年11月からは企業広告プロジェクト「Hondaハート」を開始しました。日本国内で展開する企業広告に込めた想いとして、このアイデンティティーの要素を「きょうだれかをうれしくできた?」という語り掛けの形式で、右向きのハートを旗印とすることで、Hondaの想いは、常にお客様に向かっていることを表現し、顧客に寄り添った仕事の進め方を従業員が日々意識するように取り組んでいます。企業広告をきっかけに、従業員が、家族や友人に対して、Hondaでの仕事や仲間について話をすることで、従業員がより一層Hondaに関心を持ち、自分たちの会社を好きになってほしいと考えています。
また、社内向けには、社長やブランドを体現する従業員が登壇し、有志の従業員と語り合うインナーブランディングを目的としたイベントも定期的に開催しています。Hondaフィロソフィーを原点としたアイデンティティーの要素を意識し、従業員一人一人が、日々の業務の中で実践していく結果として商品をはじめとした、様々な企業活動で、Hondaらしさを際立たせていきたいと考えています。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

創業者の本田宗一郎による、「技術を通じて人の役に立ちたい」という想いが、Hondaの原点にあり、「パーパス経営」という言葉が一般化する以前から、いち早くパーパス経営に取り組んでおり、創業のストーリーとなっています。この想いは、SDGsやサステナビリティが重視される現代でも通じる普遍性を持ったものであると考えています。
一方で、社会環境は急速に変化しており、資本主義の再定義である「ステークホルダー資本主義」や人権課題への対応など、社外の環境認識を日々アップデートし、社会の要請に応えられる企業活動への進化が不可欠です。
変化の激しい時期だからこそ、Hondaブランドが様々な地域や事業で働く従業員を結束させる求心力となり、すべての従業員が一丸となって、変革への取り組みを進める必要があります。
ブランドのパーパスについても、Hondaフィロソフィーを根底として、Hondaが将来、社会にどのような価値を届けることができるのかという観点で、議論を積み重ね、全社の求心力となる柱を立てていきたいと考えています。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

世界各地でHondaの製品やサービスをご利用くださるお客様、一人ひとりの喜びがHondaの企業活動の出発点であると考えています。
卓越したアイデアと技術により、新しい製品やチャレンジを重ねる中でも、最も大切なものは顧客視点です。お客様の喜びを起点として、Hondaに集うすべての従業員がお客様を中心に考える、「きょうだれかをうれしくできた?」と自らに問いかけ、仕事の質や価値を高めていくことが、Hondaブランドをより輝かせるものになると思います。
社外にHondaの想いをお伝えする、お客様や社外からの評価やフィードバックを社内に届ける、この両面の活動を、企業広告や従業員向けワークショップなど様々な手法を通じて継続的に進めることで、商品やサービスだけではなく、すべての企業活動で、Hondaの個性を際立たせ、Hondaらしさやアイデンティティーを実感していただき、さらに多くのお客様に喜んでいただけるように取り組みを進めていきます。

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