Fujifilm富士フイルムホールディングス株式会社執行役員 デザインセンター長 ブランドマネジメント管掌堀切 和久 様 | インターブランドジャパン

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Fujifilm

堀切 和久 様

富士フイルムホールディングス株式会社
執行役員 デザインセンター長 ブランドマネジメント管掌

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

商品が「表現」だとしたら、ブランドは「表明」だと思います。富士フイルムはもともと写真フィルムの会社で、製品イコール社名だったために、改めて「表明」しなくてもブランドはストレートに伝わりました。今は化粧品から創薬まで、幅広い領域のビジネスを展開しています。どの事業もフィルム事業で培ってきた技術や考え方をアセットとして発展させたものであり、わたしたちにとっては何の違和感もないのですが、お客様から見ればどの事業も唐突で、「飛び地」のように感じるかもしれません。その中で、会社の姿勢や志を「表明」し、「約束」するために、ブランドはなくてはならない存在です。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

かつて、競合とは同業他社を指していました。いま、私たちの製品の競合は、必ずしも同業他社ではありません。たとえば富士フイルムの製品にinstaxというフィルムカメラがありますが、その競合は旅行であり、ファッションであり、グルメかもしれません。また、コラボレーションやオープンイノベーションなど、他企業との交流によってブランドの新しい価値を引き出す流れも続くでしょう。そういう時代の中で、輝きを放つブランドであり続けるためには、LTVはもとより、次のユーザーではない人も含めて対象にした方がいいと思います。コラボレーションにふさわしいパートナーとして選ばれる際にも、ブランドは重要です。ブランドは、もっと社会に開かれた存在でなければならないと考えています。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

人には個性があります。得意なことも苦手なこともあり、それが人格=「らしさ」を形成しています。ブランドも同じで、得意なことを磨き抜くことで、「らしさ」が際立ってくる。そして、その「らしさ」を、経営層とフロントエンドが共有し、同じ気持ちでいることがエンゲージメントの第一歩だと思います。そのうえで、社員一人ひとりがブランドを外に発信することで帰属意識が育まれ、自身のブランドの再発見にもつながるのではないでしょうか。言い換えれば、自分たちが自社のブランドを支える当事者として実感できることで、誇りやロイヤリティが形成されるのではないかと考えます。この段階で、適切な浸透ツールやメッセージがあると有効に機能しますが、最初に道具立てをそろえて浸透活動をやっても、なかなか社員一人ひとりに腹落ちしないものです。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

カーボンニュートラルを意識せずに、モノづくりはもはや成立しません。SDGsの17の課題を真摯にクリアしていくことは必須です。そのうえで、わたしたちは「らしさ」を磨き、得意なことで人を幸せにし、社会に貢献していきたい。この「らしさ」こそが、ブランドと社会を束ねる力となり、パーパスへとつながれば、社内外に共感を広げ、共振を起こすことが出来ると思います。若い人たちと接していると、彼らはモノを捨てることはカッコ悪いという感覚を、すでに自然に身につけています。ESG 投資家向けにカタチだけ整えても、彼らの共感を得ることは出来ないでしょう。彼らに支持されるブランドであり続けるためにも、取り組みを深化させていきたいと考えています。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

先に述べたように、競合の概念さえ大きく変わり、淘汰されていくブランドも少なくない時代にも、ルイ・ヴィトンやエルメスは輝きを増し続けています。単なるデザインや素材ではなく、いつもチャレンジを続ける企業活動そのものが人の心を魅了し、憧れをかき立てるのでしょう。わたしたちもモノやコトという次元に留まらず、「良質な体験」を提供していくブランドとして、チャレンジを続けたいと考えています。

Brand Value Chart

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