Chugai中外製薬株式会社上席執行役員 最高財務責任者(CFO)財務経理、広報IR、購買、デジタルトランスフォーメーション統括 板垣 利明 様 | インターブランドジャパン

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Chugai

板垣 利明 様

中外製薬株式会社
上席執行役員 最高財務責任者(CFO)
財務経理、広報IR、購買、デジタルトランスフォーメーション統括

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

当社は、2025年に創業100周年を迎えます。創業時の「中外新薬商会」という社名に込められているのは、「中外(国内と海外)に新薬を提供する」という社会的使命。いわば、社名そのものがパーパスであり、求心力であり、中外製薬が存在する意義を社会に示すひとつの旗印になっております。そして、その核にあるものがブランドだと考えています。
2002年にロシュ社と戦略的アライアンスを提携しましたが、「中外製薬」という社名は変えずにいます。そして、創業の想いを、分かり易く明文化したミッションステートメントを作成して、全従業員と共有化し続けております。対外的には、“革新的医薬品とサービスを通じて世界の医療と人々の健康に貢献する企業”だとのエッセンスを込めた「創造で、想像を超える。
/INNOVATION BEYOND IMAGINATION」というスローガンを使って、「中外らしさ」を前面に出したブランド活動を展開しています。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

当社は、ロシュ社との戦略的アライアンスを活かすために、診断薬事業やOTC事業を売却し、医療用医薬品事業に経営資源を集中することにしました。規制等により製品広告が一切できない中でのブランディング活動には、非常に高いハードルがあるものの、一般生活者との接点が少ないからこそ「中外らしさ」を正しく知っていただくことはとても大事で、十分に行う価値と意義があると考えております。
企業広告と併せて、私たちが積極的に行っている取り組みのひとつに、疾患啓発活動があります。
顧客という意味では、患者様、そのご家族、医療関係者がそれにあたると思いますが、いつ何時、病気になってしまうかもしれないという点では、全ての人々が当社ブランディングの対象者という事になります。依って、幅広い生活者にとって理解しやすい事、正しく伝わる事を意識した活動を行っていく必要があると考えております。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

昨年、新成長戦略「TOP I 2030」を発表しました。これは2030年に到達すべき「世界のヘルスケア産業のトップイノベーター」像からバックキャストして策定した戦略です。トップイノベーターになるためには、研究はもとより、開発、生産、営業に亘る全ての機能においてイノベーションを起こし、世界トップレベルである必要があり、社員のエンゲージメントは極めて重要です。
それを実現するためのあらゆる行動の原点となっているのが、コアバリューとして定めた「患者中心、フロンティア精神、誠実」です。旧より、当社には、創業からの想い、ミッション、コアバリューを体現していこうとする企業風土が醸成されています。その風土を育み、社員エンゲージメントの高まりに繋げるために、トップマネジメント自ら積極的にメッセージを発信し、ダイアログやブログなどを活用した双方向のコミュニケーションを積み重ねるなどの、カルチャーや企業ブランドの浸透や理解を促進する取り組みを行っております。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

革新的な医薬品を創出し、世界の医療に貢献することが私たちの存在意義であり、SDGsもサステナビリティも、中外製薬の事業活動の根幹にあります。トップイノベーター像として、「世界の患者さんに期待される企業であること」、「世界の人財とプレーヤーを惹きつける企業であること」だけでなく、「世界のロールモデルと讃えられる企業であること」と定めています。つまり、論語と算盤の両方のバランスが大事だと考えており、それが、企業ブランドの維持・発展のベースになると思います。
具体的な取り組みから一つ挙げるとすれば、ミャンマーやカンボジアにおける医療環境整備や保健医療アクセス向上の支援や教育に取り組んでおります。こうした地道な活動を継続的に実施してきたことで、世界の代表的なESG投資指数「DJSI World」の構成銘柄に継続選定されるなど、外部からも高い評価をいただいております。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

これまで同様、画期的な新薬開発を今後も愚直に取り組み続けることが、私たちの使命であり、終わりのないチャレンジです。世の中には治療法が確立されていない病気がたくさんあり、アンメット・メディカル・ニーズが数多く存在します。画期的な新薬を待ち望んでいる世界中の患者さんに、いち早くお届けしたい。この思いとそれに向けた取り組みを、幅広いステークホルダーに分かりやすく伝えていくことで、共感と賛同、参画と連携、そしてご支援をいただくことが出来れば、ブランディング活動に価値があったことになりますし、その結果がブランド価値向上につながるのだと思います。

Brand Value Chart

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