Calbeeカルビー株式会社執行役員 海外カンパニー グローバルブランディンググループ グループ長 小泉 貴紀 様 | インターブランドジャパン

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Calbee

小泉 貴紀 様

カルビー株式会社
執行役員 海外カンパニー グローバルブランディンググループ グループ長

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

1960年代の4P (Product、Promotion、Price、Place)戦略、D2Cが急成長を遂げた2000年代の4C (Customer Value, Cost, Convenience, Communication)戦略を経て、SNS時代を迎えた今、マーケティングの基本は、4E (Experience, Exchange, Every place, Evangelism) 戦略へと移り変わっています。Calbeeも、グローバル展開の推進に合わせてフレームワークを変化させていきますが、それらの目的は、お客様の心にブランドを浸透させるために他なりません。やはりブランドは、すべての活動の中心にあるべきものだと考えています。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

日本国内では、「1才からのかっぱえびせん」「1才からのサッポロポテト」といった幼児向け商品をエントリー商品と位置付け、お子さまの成長とともに主力のロングセラー商品につなげて、さらにはお客様が家族をもった時にその子へと食べてもらえるよう世代を超えてつなぎ留め、新たなお客様を獲得し続ける「エイジ(Age)戦略」を展開し、LTVの最大化を図っています。現在、これを海外においても展開・強化することを進めております。海外には、幼児向けのスナック菓子というカテゴリーが存在しておらず、大きなビジネスチャンスになり得ると考えています。特に中国では「日本ブランド」の持つ安全・安心イメージとともに、その成果に手応えを感じています。
こうした長期かつプロダクトブランドを横断する戦略において、コーポレートブランドの持つ意味は大きく、さまざま体験をブランドに結びつけていくことが非常に重要です。特にグローバル展開においては、コミュニケーション効率や投資体力の観点からもコーポレートブランドの活用を主眼として考えるべきでしょう。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

グローバルブランディンググループと、関連グループ会社とのコミュニケーションで重視しているのは、まず「現場主義」です。製造、流通、店頭などの現場は、良いアイデアの宝庫。現場に行かないと理解できないことも少なくありません。現在はオンライン中心の環境下ではありますが、移動時間がかからない分、やり方を変えてコミュニケーションの量や質を高めることで、カバーをしています。二点目は「一体感」です。ブランドが実現しようとしていることは、関係者の協力があって初めて成し遂げられるものです。一方的な伝達にならないよう、常に相手の目線に合わせることを意識して対話し、合意形成を得るようにすることで、より良い品質の実現につなげています。最後は「情熱」です。新しいことに挑戦する時には、すべてを検証しながら進めることは不可能です。このような不確実な環境下だからこそ、情熱が関係する人々の心に火を付け、推進力を高めると思っています。こうしたことを伝える場の一環として、月1回「ロングセラー勉強会」を実施して、メンバー同士の想いを共有し、意識を高め合うことも実践しています。歴代の先輩達が築き上げてきたものを学び、押しつけではなく、自分なりのやり方を見つけてもらうのが、その最大の狙いです。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

先進国における肥満の増加、新興国における栄養不良など、社会には多岐にわたる課題が存在していますが、Calbeeは創業以来、創業の精神である「健康に役立ち、安全で安価な商品づくりと、未利用な食糧資源を活かした商品づくりを目指して、社内の英知を結集するために企業を組織する」ことに基づいて、人と自然の間に立って、社会課題を解決してきた企業であると思っています。これからも、時代に沿ってさまざまな価値を創造し、次々と行動に移していきます。
SDGsへの取り組みとしては、2030年までに、石油由来プラスチック包材の削減し、包装容器の50%に環境配慮型素材を使用するというアグレッシブな目標を掲げ、プラスチック容器代替・削減への取り組みをスタートさせています。
食品企業として気候変動や資源枯渇などの環境問題への対応は喫緊の課題です。また、サプライチェーンにおける労働負荷や人権問題、世界的な原料価格の高騰などにも長期的な視点で対応しなければなりません。当社グループの事業においても、昨夏の不順な天候により北海道産原料馬鈴しょの収量が減少するなど、気候変動の影響を受けました。これら直面する課題に対応しつつ、中長期的には、環境に配慮した持続的な調達、大切な資源を活かした生産によって、バリューチェーンに正しい循環を構築していきます。そうした活動の積み重ねが、お客様にとってはブランド選択の手がかりとなり、信頼の根拠となる時代になってくると感じています。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

グローバル展開を進めていく上で、(1) エイジ(Age)戦略の推進によるLTVの獲得、(2) 英国のHFSS (High in Fat, Sugar or Salt) 食品に対するマーケティング規制に象徴されるような、世界的な健康意識の高まりに対してソリューションできるようなブランドへの進化、(3) これらを実現しながら、単なる多国展開ではない「真のグローバルブランド」を創り上げることが大きなチャレンジだと思っています。ローカライズの視点は持ちつつも、日本で培い、蓄積してきた「知の泉」を、現地でどう活かしていくのかが成功の鍵になると思っております。

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