ASICS株式会社アシックス代表取締役社長COO 廣田康人 様 | インターブランドジャパン

57

ASICS

廣田康人 様

株式会社アシックス
代表取締役社長COO

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

ブランドとは、我々の約束をお客様や社会に対して発信していくツールであり、経営の中心になるものだと考えています。
我々は物を作ったり、サービスを提供させていただいたりしていますが、それらが依って立つところは何かを理解いただいて、我々の商品を買っていただく、サービスを楽しんでいただくことが大切です。そのために、創業哲学をはじめ、経営そのものを伝えるのがブランドであり、それらに基づいた発信をしていくことがブランドの一貫性につながると考えています。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

2020年10月に「VISION2030」を打ち出しました。誰もが一生涯、運動・スポーツを通じて心も身体も健康でい続けられる社会の実現。これが創業哲学「健全な身体に健全な精神あれかし(A sound mind in a sound body)」を掲げるアシックスが2030年に向かって目指していることであり、我々の願いです。今までアシックスはモノを作って売ることを生業にしてきました。さらにこれからはシューズやウエア、道具を使って、どういう風にすると健康になれるのか、どこでスポーツをするといいのかという社会課題に、ファシリティー(施設)やコミュニティーを提供するといったことでも貢献したい。また、デジタル技術を活用して、より多くの人々がスポーツを楽しめるようにサポートしていきたい。今までの「モノ中心」から「コト中心」に領域を広げていこうという考え方が、「VISION2030」の中核となっています。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

社員はブランドの体現者であり伝道師です。アシックスの創業哲学である「健全な身体に健全な精神があれかし」を頭で理解するだけではなく、一人ひとりの行動がそれに沿うことが重要です。例えば、社員向けに発信をしているブログにおいて「運動をしない、喫煙をする、といったことが”Sound Mind, Sound Body” かどうか」といった投げかけ行ったところ、いつもの10倍くらいの反響がありました。アシックス社員の意識の高さを実感しました。アシックスらしさを社員が体現していくことは、ブランドを伝播していく上で非常に重要であると思います。
日本人の場合は、なんとなく阿吽の呼吸で理解ができてしまいますが、海外の場合はしっかりと言葉で伝えないと伝わりません。言い切りの形で伝えていくことが、極めて重要だと思います。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

SDGsやサステナビリティに関わる課題については、頭で理解することよりも、いかに自分たちに引き付けられるかが大事だと思います。我々の場合は、「温暖化や砂漠化が進んだりしたらスポーツができない。だから、我々にとっては地球環境が重要だ」というアプローチをしています。
他にも様々な社会課題はありますが、我々の”Sound Mind, Sound Body”を実現するため、スポーツを通じて健康な社会を実現するために必要なことへコミットメントするという考え方です。
とくに環境問題は非常に重要だと思っているので、いかに環境負荷の低い材料で商品を作ることができるかというチャレンジもしています。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

一つは環境に優しい、サステナブルな材料を使った商品の開発をしていきたいと思っています。例えば、クモの糸から作る繊維の実用化にも着手しています。また材料のみでなく、デジタルを活用した開発や生産の推進にも力を入れたいと思っています。
東京2020オリンピック・パラリンピックはアシックスブランドにとってとても大きなイベントでした。それで終わりではなく、例えば障がいのある方へのサポートも含め、場所や道具に制約されずに体を動かすことができる機会を世の中にもっと増やすために、デジタル×スポーツも進化させていきたい。
また、若いアスリート達の活躍も注目されましたが、スケードボードに対してもチャレンジをしていきたい。若い人達との接点を持つことで、新しいカルチャーをブランドの中に取り込んでいきたいと思っています。
このような形でイノベーションを生み出すことで、新しいアシックスを創っていきたいと考えています。

Brand Value Chart

一覧に戻る

Article
Best Japan ​Brands
2022​ Article
Brand Leader’s Interview​
Best Japan ​Brands
2022​ Interview​​