Ajinomoto味の素株式会社取締役代表執行役社長 最高経営責任者 西井 孝明 様 | インターブランドジャパン

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Ajinomoto

西井 孝明 様

味の素株式会社
取締役代表執行役社長 最高経営責任者

Best Japan Brands 2022
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

貴社における経営において、ブランドとはどのような位置づけでしょうか?

味の素グループは、事業を通じて社会課題を解決し、地域や社会とともに価値を創造することで経済価値を創出する「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」という概念を持っています。これを単なる概念ではなく、ビジネスのシステムとして確立するための軸足になったのがブランドです。
わたしは、無形資産として「蓄積」できるものこそがブランドだと考えています。その蓄積を推進するために、パーパスを定め、ビジョンを一新。その上でASVという概念を仕組みに落とし込み、「企業価値向上サイクル」を回し続けることを推進してきました。
2017年の中期経営計画からは「ブランド強度スコア(BSS)」に基づくブランド価値の可視化によって、ブランドを、概念からシステムに変革することができたと考えています。

近年、顧客起点、LTV (Lifetime Value) という概念がより重要視されてきている傾向にありますが、そうした既存顧客だけではなく将来の顧客、あるいはより幅広い生活者、社会との関係構築やそれに基づくブランドの在り方について、どのようにお考えでしょうか?

デジタル化の進展やコミュニケーションツールの飛躍的な進化によって、コミュニケーションの手法や伝わり方は大きく変化しています。それに伴い、コーポレートブランドの重要度はますます大きくなっていますが、現在はまだ、コーポレートブランドに蓄積されるべき大事なものー健康への貢献やサステナビリティへの貢献ーは、まだ十分に積み上がってはいません。
今後は、これまでサステナビリティや次世代を意識していなかった商品ブランドにおいても、コーポレートブランドが体現したい価値を担っていく必要があるでしょう。そこに気付けたことは、大きな成果だったと思います。
そして、現在の購買力とLTVを見誤ってはいけないと思います。これからの時代の主役となるZ世代やミレニアム世代の影響力の大きさは、凄いものがあります。彼らに代表される潜在顧客層に取り組まないこと自体がリスクであり、非常に重要だと考えています。

事業・ブランド成長に向けて、社員の存在がより重要になってきている中で、ブランドに基づく企業のカルチャーづくり、それに基づく社員のエンゲージメントについて、どのようにお考えでしょうか?

経営とマーケットを繋ぐのが従業員であり、その重要性は言うまでもありませんが、ブランドを実現するカルチャーを作るためには、組織の変革が必要です。各部門が異なるKPIを持っている中で進めようとしても、前に進むのは困難です。
とはいえ、組織論でカルチャーは変わりません。味の素グループでは、組織を変えるのではなく、機能別タスクを強化し、仕事のあり方の改革を推進することで、企業のカルチャー変革を推進してきました。具体的には各事業部門の責任者で構成される「ブランド会議」メンバーで「企業価値向上サイクル」を共有し、全社のKPIとしてブランド強度スコア(BSS)を共通言語化したのです。システムは、変える必然性が理解されれば、自走していきます。

SDGsやサステナビリティが必須課題として設定されるような時代背景を踏まえて、ブランドの存在や役割は、どのように進化・変化が求められると思いますか? ブランドのパーパスに関するお考え、取組、ご検討状況なども交えて、お教えください

多くの企業では、プロフィットとSDGsやサステナビリティは、トレードオフの関係だと捉えられています。味の素グループでは、パーパスに掲げる「アミノ酸のはたらきによる食と健康の課題解決」(=プロフィット)と、環境負荷低減等(=SDGsやサステナビリティ)に「ブランド価値」という視点を加えることで、トレードオンになったと考えています。
環境や社会へのコミットメントも、サステナビリティをめぐる課題への取り組みも、蓄積されればやがてブランド価値になります。「非財務」ではなく「未財務」なのです。この位置付けによって目標がシンクロするようになり、投資家にも高くご評価いただいています。

このような環境の中で、今後さらにブランド価値を高め続けていくために、どの様なチャレンジを行うことをお考えでしょうか?

まだ道半ばですが「企業価値向上サイクル」の仕組みが構築でき、検証も可能な形も整ってきました。これからは、より大胆なコミュニケーションで、本来のブランド価値を発揮させていくフェーズになるでしょう。次世代や海外の勢いのあるマーケットなどへのシフトも必要です。それができれば、味の素ブランドの価値はさらに増していくと確信しています。

Brand Value Chart

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