Shiseido株式会社 資生堂代表取締役 社長 兼 CEO 魚谷 雅彦 様 | インターブランドジャパン

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Shiseido

魚谷 雅彦 様

株式会社 資生堂
代表取締役 社長 兼 CEO

Best Japan Brands 2021
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが4つの質問に答えるインタビューシリーズ。

これからの経営において、ブランドをどのような存在として位置付けていますか?

これからは、商品・サービスそのものの価値以上に、その背景にあるフィロソフィーが問われる時代になります。とりわけ我々のように、お客様のライフタイムバリューにおいて、継続的なお付き合いをしていただくことでビジネスの持続可能性が支えられる消費財ブランドにとって、フィロソフィーを体現するブランドは、企業価値そのもの。お客様と企業を繋ぐ絆です。
今回のコロナ禍で、もうひとつ再認識したことがあります。化粧品産業は大変な苦境にありますが、その難局において我々が最優先課題としたのは「社員をどう守るか」。当社では、社員に対して「全世界がOne Shiseidoとなって、難局を乗り越えよう」というメッセージを発信し、従来以上に結束力と共感を高めることができました。ここでも、ブランドが果たす、絆としての役割は非常に大きかったと思います。

これからの時代を考えたときに、ブランド成長を目指すうえで、これまでと比較して変えなければならない視点、変えない視点についてお知らせください。

企業成長における継続性・持続性に関わる重要な要素がブランドであり、ブランドバリューを成長の源泉、拠り所とする考え方は変わりません。
変えなければならないのは、マーケティングのスタイルでしょう。これからの新たな視点としては、サステナビリティとデジタルが不可欠で、デジタルによってエンゲージメントの作り方も変わってきています。ことに世の中が沈み気味で、不安感が高まっている中では、ソーシャルにメッセージを発信していくことの重要性が、極めて大きくなっています。単純に認知度を上げるといった古い価値観にとらわれず、ブランドのバックグランドやフィロソフィー、どんな人たちに価値や喜びを提供したいのかを設計・デザインし、発信していくことが大切です。
そしてまた、日本の経営層も変わらなければなりません。大量消費時代に現場を経験してきた現在の日本の経営層の多くは、ブランドの重要性をまだ実感できていないように感じます。「ブランド価値を高めることは、企業価値を高めること」とはっきり認識し、ブランドのマネジメントチームやCMOを設置するなどして、自らリーダーシップをとってブランド成長をめざすべきです。これは、B to B企業も例外ではありません。

今後、ブランド価値をさらに高めていくためには、どのようなことが大切だとお考えでしょうか?

これまで以上にコーポレートブランドの活動が重要になると思います。コーポレートブランドの活動はオモテに見えにくいものですが、そこに対する共感や信頼がなければ、プロダクトブランドを支持することはできません。
コーポレートブランドが共感や信頼を得るためには、マーケティングメッセージ以上に、SNSやPRを通したコーポレートコミュニケーションにおいて、トップが発信するメッセージの果たす役割が大きくなると思います。最後は、ブランドの責任者がどんな人で、どんな価値観を持ち、どんな立ち居振る舞いをするのかを伝えることによってブランドに対する評価は変わるはずですから。

今後、ブランド成長を目指し、具体的に予定されているアクションがありますか?

当社の最高級ライン「クレ・ド・ポー ボーテ」は、ユニセフとの間で複数年にわたるグローバル・パートナーシップを結び、世界中の女の子たちの教育とエンパワーメントの支援を行っていますが、こうしたソーシャルな取り組みを全社に拡大していきます。
従来のマスマーケティング発想で考えると、こうしたソーシャルな取り組みは認知度やROIに貢献できないと判断され、実現が難しいかもしれません。しかし、これからは「広さ」でなく「深さ」をとる時代。長期的な関係を築いていきたいお客様たちとの間に、共鳴し合える深い信頼を築くためは、腹を据えてやり続けなければならないと考え、社員にも覚悟を伝えています。特に高価格帯のブランドは、そういった姿勢が成長の基盤になってくるでしょう。

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