Kirinキリンホールディングス株式会社常務執行役員 坪井 純子 様 | インターブランドジャパン

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Kirin

坪井 純子 様

キリンホールディングス株式会社
常務執行役員

Best Japan Brands 2021
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが4つの質問に答えるインタビューシリーズ。

これからの経営において、ブランドをどのような存在として位置付けていますか?

ブランドは様々なステークホルダーとのエンゲージメントによって築かれる信頼と評判です。重要なのはブランドの“社会での存在意義”つまり“パーパス”と捉えています。
キリングループは、自社の強みを活かし事業を通じて社会課題解決に貢献するCSV経営を2013年から掲げています。社会価値と経済価値の創出を両立することで、持続的に企業価値向上を目指します。これは様々なステークホルダーにとってなぜKIRINが存在するか、KIRINの社会での存在意義は何かを問い続ける“パーパス・ブランディング”そのものです。
COVID-19を経て社会は大きく変容しています。無くてはならないものは何か、本当に意味のあるものは何か、政治、経済そして社会全体で問いなおされています。企業経営においても、ステークホルダーにとっての存在意義を改めて捉えなおし、パーパス・ブランディングを推進していく必要があると考えます。

これからの時代を考えたときに、ブランド成長を目指すうえで、これまでと比較して変えなければならない視点、変えない視点についてお知らせください。

個々の変化の多くは以前から指摘されておりCOVID-19で顕在化、加速したものですが、それらが複層的にもたらすダイナミックな変化やスピードは先が読みにくいまさにVUCA。経営もブランドも、変えること/変えないことの意思を持った様々な再選択が必要です。
一つ目は、変化の中で何が不可逆で重要かの再選択です。世界経済フォーラム(ダボス会議)シュワブ会長が2021年アジェンダに掲げられたのは“Great Reset”。マルチステークホルダー資本主義、気候変動、第4次産業革命、バリューチェーン、健康・・問われる人間性、豊かさ等々。未来への想像力を持ち、自社に重要なファクターを見極めなければなりません。
二つ目は、社会課題を踏まえたブランド・パーパスの再定義と戦略の再選択です。存在意義のないブランドは淘汰されます。パーパスが大きな社会課題の解決につながっているか見つめなおし、そのパーパス(why)をブレない軸としつつ、戦略(how)にはアジャイルマインドを持つことも重要だと思います。
三つ目は、組織能力の在り方の再選択・再設定です。デジタルトランスフォーメーションで人間に求められる能力が大きく変わり、課題解決力だけでなく課題そのものをつかみ取 る力がクローズアップされています。また自社に閉じず業界をも超える共創や協調でイノベーション力を高める視点もますます必要になると思います。

今後、ブランド価値をさらに高めていくためには、どのようなことが大切だとお考えでしょうか?

パーパスをブラさず、一方で時代を先取りして進化し続ける、基本のブランディングが今こそ真価を問われます。気になっているキーワードを挙げてみます。
最初に“インサイト”。生活者や社会の行動や価値観の背景にあるインサイトをいかに深く理解するか。変化の時代にはなおさらです。その上で何を変えず何を進化させるかステークホルダー目線で”見極めたいと考えます。
次に“社会課題に応えるイノベーション”。社会課題を解決するイノベーションはまさに社会的存在意義=“パーパス”につながります。ブランドの共感の源泉になるはずです。
またこれらを推進する組織能力についても“深化と多様化”の両面でふれたいと思います。インターナルブランディングの大事さはNew Normalでますますスポットを浴びています。組織内でのブランドの“深化”は重要なキーだと思っています。キリングループも“働き方改革”を一歩進め、“働きがい改革”に取り組んでいます。“多様化”は、Diversity & Inclusionの真の目的がイノベーション創出である理解、マインドが重要だと思います。またオープンに社内外で多様な力を持ち寄り、共創していくカルチャーも育てたいと考えます。

今後、ブランド成長を目指し、具体的に予定されているアクションがありますか?

キリングループは2027年までの長期経営構想(KV2027)で、医から食にわたる領域で世界のCSV先進企業を目指すことを掲げました。COVID-19を受けパーパス、ビジョンから戦略まで総点検し、目指す方向性を変えない一方、全事業の戦略で加速/変革/縮小/中止の再選択を行いました。パーパス(why)再定義と、戦略(how)の見直しです。
KIRINは基盤の食事業に加え、ヘルスサイエンスや医薬含むブランド価値の拡張を目指しています。ステークホルダー目線で何を変えず何を進化させるか、徹底議論しています。
具体的事業では、COVID-19で健康、中でも免疫への関心が大きく高まる中、昨年8月グループ35年の免疫研究を結集したプラズマ乳酸菌配合の各商品が、免疫分野で初めて機能性表示食品として受理されました。協和発酵バイオ社や資本提携したFANCLなどグループの力を結集し、早期のシナジー創出を目指します。
環境分野では“キリングループ環境ビジョン2050”を新たに策定。ネガティブインパクトを最小化しニュートラルにするに留まらず、自社の枠組みを超えて社会にポジティブなインパクトを与えることを目指します。
変化のスピードは速く、進化を止めて立ち止まったら時代が先に行ってしまいます。企業のパーパスをブラさず、これからもアジャイルに進化し続けたいと思います。

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