備えあれば憂いなし | インターブランドジャパン

備えあれば憂いなし

C Space 
Director, Service Innovation & Solution Design
Aidan Borer

備えあれば憂いなし。長期間の自粛に発展する可能性を見越しての大量の日常品のまとめ買いや食料品の備蓄は、今や当たり前の行動といえます。私たちは消費者のインサイトを掘り下げ、それが私たちにとって何を意味するのか、そして将来的には何を暗示しているのかを、日々みつめています。

例えば昨日まで反体制的な考えや行動として捉えられ広まっていたことが、翌日には一転してこれから先の未来において重要な考えとして受け止められています。その様な価値観の変化のスピードはますます早まっていると言えます。そして今まさに、これまでに経験してこなかった、“備える”という文化が形成され、それは急速に普及しはじめています。

これまで、緊急時のための蓄え、つまりここで取り上げる“備える”という行為は、過剰で常軌を逸した行動だと思われてきました。人付き合いが苦手で迷彩服を着用し森の中で生活する人、You Tubeに狂信的な投稿をする陰謀論者、裏庭の地下倉庫に、缶詰や銃器を買い溜めている様な終末論者、このようなイメージでした。

しかし、もはやそんなことはありません。
Journal of Marketing Managementが発表した2019年の研究では、”備えようとする行動、それは、時代に取り残された妄想的なサブカルチャーなどではなく、身の周りの危機に対して不安を感じている人々が、予防のため行動しようとする、一般的であり主流となる現象です。”と発表しました。

英国の子育て情報の掲示板サイトMumsnetをざっと見てみると、515件ほどのトピックがあり、トピック毎に国内で子育てをするお母さんたちの活発なディスカッションが行なわれています。コロナウイルス発生以来、“パンデミックへの備え”に関する14個のスレッドが立ち上がり、議論はスレッドをまたぎ、12,205件ものコメントが投稿されています。また、あなたの母親や、その他大勢の主婦達が現在の体制に対して、批判的なコメントをしているとするなら、既にその考えは、世間で主流となっている話題と容易に想定されます。

顧客の備えておくという行為の結果として、アメリカの手指消毒剤の需要は、12月から1月にかけて1,400%増加しました。また、 2月15日の週の売り上げも、313.4%増加しました。イタリアでは、昨年の同じ週と比較して、売上高が1,807%急増しました。ウイルス感染流行以前、ブレグジットに備えようとする動きの中、2月の消毒剤の売上は225%(前年同期比)まで上昇しました。

そして、トイレットペーパーを取り扱う、オンライン・直販事業者(D2C)も需要が急増しています。“Peach Luxury Bath Tissue”は、“Reel Paper”と同様に、3月に入り200%増加したと発表をしています。“No.2”においては、Amazonにおける売上が1,643%増になりました。48ロールのカートンの在庫が切れ、オーストラリアのブランドである“Who Gives A Crap”は、オーストラリア、アメリカ、イギリス市場ですべてのものが完売してしまいました。

生存主義を唱える第一人者であるイタリアの専門家は、現在の消費者の需要について次のように述べています。”私が予想していたよりもはるかに簡単に人々は、これまで築きあげてきた合理性と理性の喪失に陥ってしまいました。”

しかし、それは合理性の喪失ではなく、信頼性への切望が強まった結果だと言えるのかもしれません。

C Spaceが昨年、ある大手卸売小売企業とのプロジェクトを通じて得た貴重なインサイトの一つとして、購入意向に大きな影響を及ぼしているのは、顧客が“信頼できる”製品であるといえるかどうかということでした。また、”信頼できるカテゴリー”とは、消費者が商品を使い切ってしまうことを気にかけ、常に大量に手元に置いておきたいと欲するものでした。

  • 冷凍食品
  • 家庭用クリーニング製品
  • 家庭用品
  • ペットフード
  • 紙とプラスチック
  • 子供と赤ちゃんのケア用品

これらの商品をまとめて購入できるということは、顧客が重要視する価値観の「利便性」、「信頼性」、「安心感」、「節約」につながります。そして、必需品を切らすことなく、常に家族が使用できる状況を実現することで、安心できる幸せな家庭像そのものを築くことができます。

私たちの愛する人が求めるものを供給する、これは人間の本質的な欲求です。この状況になってから、食料品店の棚を掃除している人を見かけたら、何か綺麗にしなければいけない特別な理由があるのではないかと警戒するかもしれません。しかし、その人は、あなたとあなたの家族が安全であるように商品が清潔であることを心がけ、万が一のことがないように取り組んでいるのです。そのことに想いをはせることも必要ではないでしょうか。

実際には、多くの消費者がまとめ買いをしているかというと、必ずしもそうではないと言えます。多くのアメリカ人、特に低所得者は簡単に実行できる環境ではありません。

まとめ買いは、長期的にみるとコスト削減できるといっても、大きな先行投資の必要があります。そして、給料ギリギリの生活で生活をする低所得者にとっては、より難しい状況といえるでしょう。アメリカ人の40%は、月に400ドルの予期せぬ出費が仮にあったとしても捻出することができません。そのような状況で、一度に数週間分のすべての消耗品を購入するのは、まず不可能でしょう。この観点から鑑みると、生活が豊かな人々だけが、買い溜めをすることができるのです。

若者達は、都会に住む傾向があり、狭い家で生活をしています。あるホワイトカラーの若者は次のようにコメントしています。”私がもし、実際にペーパータオルを大量に注文しても、保管しておく場所が見当りません。ガレージに大きな冷凍庫があり、地下室には缶詰がストックされていた私の両親の頃とは違います。

Judyという企業は60ドルから250ドルの価格帯である4種類の防災キットを販売していますが、有名なインスタグラマーのKhloé Kardashianに安全だと太鼓判を押されました。さらに、同様にKim、Kris、Kourtneyのアカウントからも評価され、更に二人のカリスマ主婦、Olivia Culpo、Haylie Duff、WhoWoreWhatからも支持を得ました。その結果、Judy は、1ヶ月前に創業したスタートアップであるにも関わらず、すでに最も手頃な価格帯の2つのキットがすでに完売してしまいました。

この様な防災キットの大ヒットは、インスタグラムなどのSNSがきっかけではないケースもあります。

先週、株式市場で6%上昇したCostcoでは、4人家族を1年間養うことが可能な、36,000食分もの食料が入った6,000ドルの防災キットを販売しています。このキットは、2010年以降に発売された様々な種類のうちの1つに過ぎませんが、いずれも近年需要が増加しています。

これは極端な例ですが、人々が従来の典型的な購買行動を行わなくなった今、その行動や反応を予測することはできません。例えば、C Spaceコミュニティーのある回答者が、次のように述べました。“私はこの前、初めてスーパーで、手当たり次第、冷凍食品を購入したんです。そして思わずチキンポットパイまで購入しました。(なんてことでしょう。)”

そして、その行動がもたらす興味深い相関関係についても紹介します。もしかしたら、彼女はそのチキンポットパイを気に入って、ロイヤルカスタマーになるかもしれません。また、普段購入するブランドのトイレットペーパーが品切れだったので、今後代替品として選ぶことになる商品のブランドに代えてしまうことになるかも知れません。もしかしたらこの様な変化は、顧客の日常的な購買ルールを改めて見直すきっかけとなり、何か新しいものを試してもらうチャンスといえるのもしれません。私たちの顧客調査(下記抜粋参照)によると、多くの顧客が通常の購買手順とは異なった行動をとることを示唆しています。果たして、彼らはまた元のブランドに戻ってくるのでしょうか?

大きな変化は、脅威と機会をもたらします。それがどのようなものなのか、その詳細に知るには時期尚早かもしれませが(トイレットペーパーや手指消毒剤のメーカーでない限り)、Rita Gunther McGrath教授が述べるように、これは大きな変化点のように感じます。

消費者はこのまま、まとめ買いに慣れるのでしょうか?宅配サービスは活況を続けるのか、それとも衰退するのか?ネット直販(DTC)やサブスクリプションモデルはこれまで以上に成功していくのか?私たちは皆、使いやすいように色分けされたマルチツールや、アップルシナモンバーが入った250ドルの防災キットを購入するのでしょうか?私たちは、まだ答えられないことばかりです。しかしながら、準備をしておくこと自体は賢明なことと言えるでしょう。私たちが皆、備えることを自然な行為と捉え、実践をし始める中、この変化がこれから先、顧客やブランドにとって、どのような意味を持つのか、継続的に観察し、分析をしていきたいと考えています。

顧客としての生活、バイヤーが語ったこと
3月16日以降、Cスペースコミュニティの“Supermarket Sweep”からのメンバーによるコメント。

“私は、自分の生活に必要な数週間分の食料を手に入れようとしてきました。これまでのところ必要な量を入手できていますが、しかし現在、間違いなくこの近辺では、食料品を求める人々が殺到しており手に入りにくくなってきたと感じています。例えば、牛乳、肉、パスタなど様々なものです。“不安な時代だからこそ、過剰な量を仕入れることのないよう、出来る限り準備をしてきました。”
ネブラスカ州  Nathan

“Costcoに行こうとしたけど、駐車場がめちゃくちゃ混んでいて、駐車スペースを探すために行ったり来たりを繰り返す状況なので、買い物をせずに帰りました。大量のまとめ買いによってお店の多くの棚が空になっていたり、知事がレストランを閉鎖すると決めたことから、急いで私たちは食料を買い足しに行くことになってしましました。”
インディアナ州  Kate

“コロナウイルスの影響だからといって、過剰な行動は慎みたかったので、他の人たちが購入できるよう、いつも通り必要な量だけ買う様にしました。”
ニューヨーク州  Ana

“この一週間に何度かWalmartに行きました。 最初に行った土曜日、目ぼしいものを全て購入しようとする人を目撃して、少し気が滅入りました。空っぽの棚だけが、そこにはある、そんな状態でした…”
ノースカロライナ州  Kim

“私が買い物に立ち寄るお店は、いつも品切れの商品がたくさんあるので、普段からそれぞれのお店に置いてある商品や、売り切れ状況に関してメモをしているので、欲しいものを買えています。例えば、私は土曜日に食パンを購入しようとしました。1斤だけ必要だったのですが、私のメモにあるMartin、Aldi、Owenの中で、いつも立ち寄るOwenでは見つからない可能性が高いと考えて、まず最初にMarinのお店に寄ったところ運良く手に入れることが出来ました。私のメモのリストにあるものは、大抵どのようなものでも、どこかで手に入れられます。”
インディアナ州  Carol

“私は普段はWalmartやTargetで買い物をしていますが、最近はAldiをチェックするようになりました。Aldiは, WalmartやTargetほど、人が多くないんです。私は間違いなく、まとめ買いをしてしまっていますね。”
サウスカロライナ州  Shanna

“いつも行くスーパーは、棚が空っぽで品切れになっているため、場所を変えることにしました。コロナウイルスの影響で、少しでも長く家に留まっておけるように、普段よりもいくらか多めに購入し、買い溜めしています。ボードゲームやスポーツ用品、ビデオゲームなど、普段では気に留めないものを購入して、家での気晴らしにしています。”
テネシー州  Jonathan

“普段よりも、たくさん食料品を購入しています。いくつもの商品が欠品しており、うんざりしながらも普段寄らないお店に行かなければなりませんでした。いつもより、パスタ、米、穀物、缶詰、スナック、その他にも購入したので、気分転換しようと思います。”
ノースダコタ州  Madison

 

Translated and edited from “We’re All Preppers Now” in C Space,
Authored by Aidan Borer

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