第三次世界大戦勃発。敵はCOVID-19 | インターブランドジャパン

第三次世界大戦勃発。敵はCOVID-19

エグゼクティブ・ディレクター 戦略グループ
田中 英富

これまでにない大きな危機を体験すると、人々の人生観や価値観は大きく変わる。2011年の東日本大震災の時、震災前と震災後で日本人の価値観は大きく変わった。エネルギーに対する考え方が大きく変わり、再生エネルギーへの関心が高まった。また、日本国内だけでなく世界中から多くの支援が集まる中で、人の出会いやつながり(絆)を大事にしたいという価値観も高まった。

しばしば、①仕事が変わる、②住まいが変わる、③人間関係が変わるとき、人々の価値観も変わると言われる。新型コロナウイルスの感染拡大により、大企業を中心に導入が急速に進んでいる「テレワーク」ひとつを取っても、勤務先は変わらないまでも、①「在宅勤務」という仕事の仕方が大きく変わった。また、②住居の引っ越しには至らずとも、書斎やロフトを仕事用スペースとしてレイアウト変更したり、中には東京を離れ、地方に疎開した人もいるかもしれない。③自宅にいる時間が長くなったお陰で家族やペットとの関係性が変化した方々も多いだろう。「自宅待機」は一時的である(であって欲しい)が、「自宅にいても仕事ができる」ことが証明された「在宅勤務」は、今後のワークスタイルとして一般化するのは確実だろう。

現在進行中の新型コロナパンデミックが東日本大震災と大きく違うのは、その状況が日本に限ったことではなく、既に、グローバル全体の危機となっていることと、火元の中国では沈静化しているという見方があるものの、世界的にみると、今後の見通しやその経済的・社会的インパクトが把握できていないことにある。現時点での危機の内容と規模からみて、東日本大震災やリーマンショックは言うに及ばす、第二次世界大戦級のインパクトがあるのではないだろうか。

第二次世界大戦当時の状況になぞらえて、現状をとらえてみたい。もちろん、第二次世界大戦の悲劇を軽く扱うものではないし、当時の出来事と今回の新型コロナウイルスに関連する出来事との間には何ら関係が無いのは言うまでもない。まず、東京における新型コロナウイルス感染の急拡大は、第二次世界大戦当時でいえば「東京大空襲」に相当するだろう。さらに状況が悪化し、オーバーシュートやロックダウンに至れば、それは「原子爆弾投下」の地獄絵にたとえられるかもしれない。戦時下にある現在、最重要課題は「生き残り」であり、人々は防空頭巾(マスク)を被って防空壕(在宅勤務)で息をひそめている。いつ爆弾投下が止むのか、また、それによってどれくらいの被害が発生するのかも今は全く分からない。

第二次世界大戦と新型コロナパンデミック

 

それがいつになるのか分からないが、「WHOのCOVID-19収束宣言」公表は、第二次世界大戦で言えば「ポツダム宣言」受諾である。この宣言後、「復興準備」が開始される。戦後の新しい日本の社会のあり方を検討した「東京裁判」や「財閥解体」のように、「COVID-19収束宣言」後、新しいビジネスやブランドのあり方が検討されるだろう。さまざまな検討項目の中でも、ブランドの視点では、復興後の展開事業選定が最も重要になろう。その際、「事業継続性」(収益性のある事業として継続できるか)と「ブランド適合性」(ブランドとして相応しい事業か)の2つの軸で、「①復興後のコア事業候補」、「②事業存続検討」、「③復興資金とする売却事業」、「④事業廃止」を決定する。新型コロナウイルスによる経済的な大打撃を考慮すると、ほとんどが「事業継続性がない」中から「ブランド適合性」をベースに「わずかな希望」を選び出すことになるかもしれない。

また、新型コロナウイルスを経験した世界における人々の価値観はそれまでのものと全く違うものになっているから、ブランドコンセプトもそれに合わせる必要がある。戦後の価値観をベースに新しい日本のあり方を決めた「日本国憲法」を制定したように。

「真の改革は危機的状況によってのみ可能となる」とはアメリカの著名な経済学者ミルトン・フリードマンの言葉である。戦後になって真の「民主化」が実現したように、真の「カスタマーセントリシティ」もアフターコロナの極厳の競争環境の下で実現されるかもしれない。ただ、こうした状況を生き抜いたブランドは「所得倍増計画」で体験したような「戦後復興」による利益を享受できるだろう。

戦後に生き残るブランドになるために、第二次世界大戦級の価値観の変化をどのようにして把握すればよいのだろう。新型コロナウイルスは人類が初めて経験する脅威であり、それによる行動や態度の変化が複雑すぎ、また、自身の感情や認識を理解できず、それらを言語化するのも難しいだろう。そうなると、これまでのような単純な調査では、価値観の変化を正確に把握できないため、長期もしくは常設型のオンラインコミュニティでインサイトを導出することが望ましい。この手法であれば、当初はうまく表現できなかった考えや気づきが、一定期間の内省の後、表現できるようになり、それまでコミュニティで議論してきたテーマに関する知識や情報を関連する新しいテーマに活用することや繰り返しの対話によってより深いインサイトを導出できるだろう。また、価値観が変化するのは分かっているが、変化しきるタイミングは分からないため、この点でも、継続的に価値観の変化トレンドを押さえられる長期もしくは常設型のオンラインコミュニティが有効だと考えられる。

現在、筆者も「戦時下」にあり、新型コロナウイルスの影響を把握できておらず、本稿で考察した「第二次世界大戦級のインパクト」を確実に及ぼすといえる科学的な根拠を持っているわけではない。筆者の単なる「妄想」と言えるし、むしろそうあって欲しいと考えている。ただ、程度の差があるとはいえ、今後、我々は、新型コロナウイルスの世界的流行の収束が見えない「Phase1戦時下」の「戦中期」、収束宣言が出た後の「Phase2終戦前後」の「動乱期」、そして「Phase3戦後」の「復興期」3つの局面を経験することになろう。ブランドの観点から各局面で何をすべきなのか、「防空壕」の中で息をひそめながら考えるかどうかが、アフターコロナのブランドとビジネスのあり方を決めるに違いない。

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