brandchannel:japan
brandchannel:japan
ブランド価値経営のプラットフォームをアップグレードする
インターブランドジャパン
代表取締役社長兼CEO 並木 将仁
本日、我々はBest Japan BrandsをTop100のランキングとして発表した。これは、これまでの「日本のグローバルブランド」Top 40と「日本の国内ブランド」Top 40の2つのランキングから構成されていたものを統合し、Top 1からTop100までを示すことで、よりわかり易く、より簡潔に、より使い易くするという変革である。
この変革には、ランキングが2つあることによる混乱の解消や、グローバルと国内のランキングの連続性というテクニカルな問題への対応など、みなさまにとってより良いランキングを提供するという意図にある。
しかし、それ以上にこの変革は「日本企業がブランド価値経営を実行するためのプラットフォームをより強固なものにする」という、大きなミッションを担っている点で大きな意義を有している。
1. ブランド価値経営のプラットフォームとしてのBest Japan Brands
ブランドという得体の知れないものをCEOアジェンダとして経営していくことを議論する際、「何をもって成否を評価するか」が必ず問題となる。
成否が認知やイメージ、そしてNPSだけでは充分測れないものであることについては多くの経営者が知っている。そこで代替案として浮上するのが、「ブランド価値評価」ではないだろうか。達成目標をブランド価値の向上そのものに限定しても良いが、ブランドを経営することを考えると、社内ではその構成要素であり外的影響に左右されにくいブランド強度を軸に、社外に対しては結果指標としてのブランド価値をコミットメントとして、使い分けることを、我々は推奨している。
グローバルで言えば、Samsungやなど、国内では味の素やキリン、ヤマハなどが、弊社のランキングで発表されるブランド価値の上昇を経営目標として掲げている。さらに言えば、ブランドを経営目標に掲げる企業が示す対外的な指標として、インターブランドが発表しているブランド価値ランキング以上に活用されている対外指標は存在しない*1。
これは即ち、Best Japan Brandsは日本においてブランドを経営として追求する時に欠かせないプラットフォームになっていると言えるのではないだろうか。
*1., インターブランドジャパン調べ
2. プラットフォームの機能強化が、ブランド価値経営を後押しする
プラットフォームが一般的に充分な役割を担うために重要な要素とは、① 使い易い、② 理解し易い、③ 機能の幅がある、④ 必要な機能が揃っている、⑤ 継続性が堅牢・確実である、の5点があるだろう。
そこで、Best Japan Brands 2019を前述のプラットフォームの要素という観点で見ると、① 定点かつ定量的であることから容易に比較がし易く、② ランキング形式をとっていることから一目して理解が可能であり、③ グローバル・国内共にTop40まで発表されており、④ 結果を活用する為の価値構成要素が開示されており、⑤ 今年で早12年目を迎える点に加え、ブランドの本質をとらえているため結果の乱高下が限定的である点からランキングとしての継続性が担保されている。したがって、これらの点からプラットフォームとして充分に機能していると言えよう。Best Japan Brands 2020では、この中でも特に②の「理解し易さ」と③の「機能の幅」にフォーカスしてアップグレードしている。
まず、「理解し易さ」に関してだが、今まで発表していた2つのランキングテーブルは、ある程度の前提理解(=Branded Revenueの海外売上高比率など)を読者に要求していた。更に、例えばNTT DATAは2017時点ではブランド価値が556百万USドルで国内ブランドランキングでは26位であったにも関わらず、翌年に海外売上高比率が30%を越えた事でグローバルブランドランキングにランクインするには不十分だったためにランキングから消えてしまった、という現象もおきていた。これらの課題はグローバルランキングと国内ランキングが統合された今回のアップデートにより解消された。
次に、「機能の幅」に関してはランクインする企業が20社増えた事で、より広範囲に日本企業におけるブランド価値の全体像が見える様になった。Best Japan Brands 2019で最もブランド価値が低い状態でランクインしたのはmercariの28.2百万USドルであったのに対して、Best Japan Brands 2020ではKewpieの21.8百万USドルであった。これは、事業規模に限らずブランド力が高い会社のブランド価値がランキングで示される様になったと言える。また、過去ランキングから外れていたが今回再ランクインした11ブランドのうち10ブランドがグローバルブランドである。これらのブランドも一定のブランド価値を持ちつつもランキングの構造の制約から抜け落ちていたのだ。
この様に、今回のアップグレードは、ブランド価値経営を推し進めるためのプラットフォームとしてBest Japan Brandsの機能を飛躍的に高めたと言えるだろう。

3. Best Japan Brand 2020では、あるべき姿がより鮮明になった
では、最後にBest Japan Brands 2020の結果から、ビッグトレンドを読み解いていく。今回の結果は、大きな流れとしては、① グローバルブランドの躍進、② 底力のあるブランドの表出、③ ブランドへの注力の結果、が見えていると言える。
まず「グローバルブランドの躍進」だが、追加となる20ブランドのうち16ブランドがグローバルブランドとなる。また、昨年同ブランド比*2でもグローバルブランドは全体として2.5%の伸びを示したのに対して、国内ブランドは-2.7%となった。これはグローバルブランドだから、ではなく、グローバルで闘っているからこそブランド価値の伸長につながる適切な取り組みが出来ている、と読み解くべきである。
次に、「底力のあるブランドの表出」であるが、これは今回94位にランクインしたWORKMANや100位にランクインしたKewpieに代表される。事業全体での取り組みがしっかりとブランド価値につながり、Iconic MovesTMに等しい結果を残したWORKMAN。そして弊社グループ企業であるC Spaceが、Forbes Japanとのコラボレーションで初めて発表したCXランキングで、3位にランクインした、顧客に愛されているKewpie。これらのブランドがランクインしていることの意味合いは大きい。
最後の「ブランドへの注力の結果」とは、詰まるところブランド価値経営を行っているブランドが結果を残している、ということである。今回のTop Growing Brandである資生堂は、「ブランドとは体験である」を突き詰めたShiseido Forest Valley at Jewel Changi Airport、「ブランドとは利益の源泉である」を実現しているSHISEIDOによる利益創出、というブランドの本質をとらえた経営が明確になっている。またTop Growing Brandsの一角を占めるYamahaは、Yamaha (music) はブランド価値を中期経営計画の目標に掲げ、またYamaha Motorではブランドを経営の一丁目一番地として複数年にわたってCEOアジェンダとしてブランドに取り組んでいる。
*2., 昨年Best Japan Brands 2019にランクインしているブランドに限定してのブランド価値の伸長率の比較
最後に:ブランド価値経営のプラットフォームの上に建てる三本柱
Best Japan Brandsが整備されている事で、見えてくる景色があると信じている。これから日本企業がビッグトレンドという濁流の中を生き抜き、新たなエクセレントカンパニーと渡り合う為、このプラットフォームが役立てられることを期待している。
その為には、プラットフォームがその名の通り果たすべき基盤としての機能の上に、各企業がブランド構築の太い柱を立てなければならない。それには、我々がInterbrand Thinking と定義している、ブランディングのアプローチが参考になると思われる。それは、全ての意思決定を人の真理に立脚するための「Human Truth」、人々の行動を変える「Experience」、そして意思決定に自信を与える「Economics」である。各日本企業のみなさまが、Best Japan Brandsという基盤の上に、強固なブランド構築の柱を立てていくことを、楽しみにしている。