CES 2019より:Truth, tech and the art of the experience を考える | インターブランドジャパン

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CES 2019より:Truth, tech and the art of the experience を考える

CESは過去55年にわたり、企業、発明家、投資家、業界オピニオンリーダーが一堂に会する、人々の暮らしや未来を形作るイノベーションを学び、ローンチし、マネタイズするための場として、年々拡大を続けている。

1970年のVCR(ビデオカセットレコーダー)の発表から2014年のウェアラブル技術の紹介に至るまで、CESは単なる「テクノロジー」展示会などではなく、ブランドがイノベーションを通じて私たちの現代生活を定義づけてきた舞台だ。

世間をあっと言わせるためにやって来る参加企業にとって、テクノロジーやイノベーションが成長のための生命線である一方、CESを理解するには顧客の世界を理解すること、つまり人々の日常生活や彼らが高く評価する商品・サービス・体験の隅々にまでテクノロジーやイノベーションが浸透していることを理解することが不可欠である。

直感的コンピューティング、人工知能、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、ブロックチェーン、オーディオインターフェイスなど、ここに来ればどのようなテクノロジーも見つけることができる。だがこれらのあらゆるテクノロジーが最もうまく活用されている事例は、進化しつつある顧客の要求に応えたものだ。

 

Customer Truths

筆者の考えでは、成功するイノベーションは「customer truths(顧客の真実)」に対する理解と、「outside in(ビジネスの外側の世界、つまり顧客の生活・期待・信じるものに対する理解からのアプローチ)」の視点に重点を置いていると言える。これら2つのアプローチはイノベーションを導くガイドとして、またそれを活性化させる触媒としての役割を果たしているはずだ。

顧客である私たちは、それが生活を改善してくれる製品・サービス・体験であれば財布を開く。筆者は、成功するイノベーションは以下の点で私たちのニーズに応えていると考える。

1.より簡単であること:シンプルでわかりやすく、直感的な製品。私たちは皆、不必要なものを取り除いたり、進んで問題を解決したり、摩擦を減らしたりするブランドを求めている。

2.より速いこと:人間の集中力は8秒ともたないため、私たちはパフォーマンス、ユーティリティ、レスポンシブネス、トランザクションにかかる時間に苛々させられる。したいことが検索であれ発見であれ、取引であれ楽しむことであれ、私たちは自分たちのニーズを「リアルタイムで」満たすキュレートされた選択肢を歓迎する。ただし、それも正確であることが大前提だ。

3.パーソナライズされている・心を動かされること:私たちは決断の9割を感情によって下している。基準は「どう感じるか」であり、必ずしもどう考えるかではない。ブランドは共感と理解を生み出すことで私たちの決断に手を貸す。顧客との関わりを強めるごとに彼らを知り、口調や語り口、好意を通じた価値の提供の仕方を理解する。

4.美しくあること:私たちはブランド体験やサービス体験のあらゆる局面において、形態・機能両方のデザイン美学を讃える。私たちは細部に至るまで多様な感覚を総動員した配慮がなされていることを望むが、それは同時に差別化に関連した利益や喜びをもたらし、私たちのライフスタイルを引き立ててくれる。私たちが行う処理の9割は「見る」ことを通じて行われるため、退屈で醜悪なテクノロジーは欲しくない。肝心なのは第一印象であり、消費者は細部に気を配るブランドと恋に落ちる。

5.意味があること:顧客は目的を歓迎する。目的とはつまり、個人・団体・地域社会は公共機関に説明責任を果たさせる力を持つという信念のもと、倫理・信頼・安全を実現することだ。顧客は「正しいことをしたい」と考え、正直さ、手工業、透明性、コミュニティの価値を支持している。

以上顧客の5つの「真実」がブランドの感動的な物語に包まれ、適切かつ機能的な有用性によって提供される時、人々は購入に至るのである。

 

Inside Out

伝統的なイノベーションはしばしば大企業の開発研究部門で、あるいは業界の旗振りによってスタートしたが、それらはイノベーターがすでに管理している能力に基づいていた。それはまた、当該セクターで(または複数のセクターで)普及している技術的開発をベースにすることが多かった。

各セクターなりカテゴリーには、消費者が反応してイノベーションを促進するトレンド(またはパターン)がある。これらのトレンドは全てのカテゴリーに当てはまることもあれば、そのカテゴリーまたはセクター特有の場合もある。今日では複数のテクノロジーの融合が、新たなプラットフォームやディスラプションの、クロスオーバーアプリケーションの両方を生む相互接続的な考え方を可能にしている。

テクノロジーのトレンドを支える重要な柱は、AI、5G、センサー、ナノテクノロジー、ブロックチェーンだ。

CESで見られるような新たなトレンドをもたらすイノベーションに、これらの進歩的技術がインサイドアウトのアプローチによってどう適用されているかを見てみよう。

 

5つのテクノロジートレンド

1. ボイス&オーディオ:これら音声要素は、データ転送、制御、ブランドインターフェースの主要手段となっている。私たちはもはや画面やキーボードには縛られない。オーディオによってAlexa、Siri、Cortana、Bixbyなどのバーチャルアシスタンスがパワフルなツールとして台頭し、生活、買い物、仕事のほか、デバイスやデータや日々必要な情報と繋がるために活用されている。

Amazon Alexaは自動車セクターへの進出を発表(CES 2019)Amazon Alexaは自動車セクターへの進出を発表(CES 2019)

 

2.没入型体験:触覚・センサーテクノロジーの活用はより五感に訴える体験を可能にし、教育はもちろんのことエンタテインメントやゲーム、旅行、ウェルネスなどを向上させている。ウェアラブルは今ではコネクテッド体験を日常生活に溶け込ませることを可能にしたと同時に、リアル・バーチャルの日常をやりとりする私たちの能力を拡張している。

Teslaのバーチャル触覚スーツ「Teslasuit」(CES 2019)Teslaのバーチャル触覚スーツ「Teslasuit」(CES 2019)

3.レジリエントテクノロジー:「resilient = 弾力性のある、復元力・回復力のある」という意味合いから、セキュリティ、災害/緊急救援・復旧、市民生活・コミュニティのニーズなどの課題にリアルタイムで対処するためのテクノロジーが注目を集めている。

太陽光と空気から飲料水を作るZero Mass社のHydropanel「SOURCE」(CES 2019)太陽光と空気から飲料水を作るZero Mass社のHydropanel「SOURCE」(CES 2019)

4.ロボティックオートメーション:自動化によって決まった作業や難しいタスクが容易になり、同時に人間がもうやりたくない仕事・する必要のない仕事をロボットがやるようになった。絨毯の掃除機がけやドローン配送、自動運転などを担うロボットは人間の良き友になろうとしている。

LGは巻き取って収納できるテレビや“お手伝いロボット”を発表(CES 2019)LGは巻き取って収納できるテレビや“お手伝いロボット”を発表(CES 2019)

5.サプライチェーンのエコシステムと需要価値:ブランドが互いに手を組み、開発のための共同プラットフォームや新たなテクノロジーによる共同プラットフォームを構築することがテクノロジーにより可能となっている。オープンソースの考え方は、アプリ、サービス、互換性のあるユーティリティの爆発的な広がりに拍車をかけた。これはまた、様々なレベルのカスタマイゼーション、アセットユーティリティ、コネクテッドサービスに対応するサブスクリプションエコノミーを出現させている。

P&Gの社内スタートアップ“P&G Ventures” もCES 2019に出展P&Gの社内スタートアップ“P&G Ventures” もCES 2019に出展

 

さらに、「customer truths」と「テクノロジートレンド」の合流点で次のような消費者観察もなされている。

1.そのデバイスは、ただのデバイスではない。その人の経験、すべてのポータルである。よってシステムは互換性と接続性に影響するため、慎重に選択する必要がある。この分野はGoogle、Microsoft、Apple、Amazon、Alibaba、Samsung、LGなどが群雄割拠の様相を呈している。

2.世界のペーパーレス化は進み、デジタルリビング/アーカイブ/セキュリティはアナログを脱した。リアルタイムかつセンサー主導の監視/統合管理(スクリーン、クラウド、データセット)や予知対策が、よりシンプルで効率的な暮らしに求められている。

3.予測・比較性能の強化を実現するダッシュボード分析は、私たちのライフスタイルや活動におけるさまざまな決断を、効率的かつ効果的にサポートしている。

4.持続可能性の高い暮らしの実現により、私たちは以前より地球への負荷軽減を意識した商品を買うようになっている。とりわけクリーンエネルギーには、家庭・職場・娯楽施設で機能的なユーティリティを提供することが求められている。

5.オンデマンド・サブスクリプションビジネスモデルは、さまざまな業界全体で需要・供給両方の革新を可能にし、顧客に価値を与えている。所有の概念は変化しながら新たな需要・供給の価値提案を生み出し、究極的に産業を転換している。

6.家族、個人、社会の構成概念の再定義が進んでいることは、旧態依然としたセグメンテーションのモデルがますます時代遅れになっていることを意味する。人々は個人として扱われることを望んでおり、「自己(self)」の定義が変化する中、個人性を認識しそれに報いる金融モデルが強く待ち望まれている。

7.家庭/職場/学校/小売におけるバーチャル/リアルの接点の再定義が、B2B/B2C/D2C/C2Cの境界線や意思決定の文脈を曖昧にしている。

8.テクノロジーが生活に及ぼす影響に関する法律を変更し、プライバシー、セキュリティ、アイデンティティ、市民であることなどの問題に対する私たちの見方を変える規則や規制を策定する必要がある。

9.ヘルスケア・金融サービスでは規制緩和が進んでおり、制度的でなくなり説明責任も軽減している。より総体的で生涯価値や介護と一体化しつつある。

まとめとして、以下の2つの点を挙げたいと思う。1つめは、イノベーションをoutside in展開の切り口で行うにせよinside out展開の切り口で行うにせよ、顧客・ユーザー体験が非常に重要であるということだ。より多くの顧客を取り込むブランドは、顧客の新たなニーズに合致する魅力的な提案を打ち出す方向に向かっている。また2つめは、ブランドは、破壊的で価値を再定義し差別化をもたらす象徴的な動きをサポートするためにも、テクノロジーを使うべきであるということ。テクノロジーは不可能を可能にする。まだいくつかチェックを入れるべき項目はある。消費者価値のパーソナライゼーションだ。彼らは選択肢が多くて複雑でないものを高く評価する。シンプルで簡単でスピーディーなものを作ろう。美しくて誰もが欲しがるようなものにしよう。注意を払いながら個人のデータを使う一方で、個人の信頼と信憑性の価値観に前向きで有益で意識的であって欲しい。

これら全ての項目にチェックを入れることができたブランドは、顧客から見た知覚価値を高められるはずだ。そうすれば、これほどまでに必要とされている「成長」に対する疑問への答えも得られるだろう。

 

Translated and edited from “CES 2019: Truth, tech and the art of experience” January 15, 2019, brandchannel.com

Authored by Christopher Nurko, Chief Innovation Officer, Interbrand Group.

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