「CES 2020」に見るブランド体験の未来とは? | インターブランドジャパン

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「CES 2020」に見るブランド体験の未来とは?

CES(Consumer Electronics Show)は50年以上にわたり、家電・テクノロジー業界やインベンター(発明者)向けの単なる見本市を超えて、世界中の人々が未来を体験する場所となっている。CESは、アイコニックな戦略を模索するブランドに影響を与えそうなギミック(人目を引くような仕掛け)、ガジェット、ゲームチェンジャーのショーケースなのだ。

CES2020の中心的なテーマはAI(人工知能)だった。デバイスやデータベースのインターネット接続は、今ではセンサーや「エッジコンピューティング」を通じて行われている。クラウドや 5G を活用した IoT が、没入感のクオリティやそれによって実現されるブランド体験の両方を飛躍的に向上させている。テクノロジーやデバイスによって、私たちの生活がいかにシームレスにデジタルツールを活用しているかを考えれば、「スマート」という言葉が過去のものになりつつあることがわかる。展示に見られるような 5G、ブロックチェーン、バイオメトリクス、量子技術、ウェブベースのコンピューティングの進歩がもたらした、デバイス、さまざまな環境、ユーザーインターフェース、診断ツール、ビジネスモデルが統合された世界は、企業が今の現実の空間に「サイエンスフィクション」を作り出した結果なのだ。

展示のイノベーションやインベンション(創造)を見ていく中で特に目を引いたのは、コラボレーションやパートナーシップの新たなエコシステムの広がりだ。CESで発表されたブランドパートナーシップがBlackBerryとAmazon、Delta AirlinesとIBM、SamsungとBMW、HyundaiとUber、QuibiとGoogle、MicrosoftとLGなどと聞くと、市場を変革するイノベーションを開発する上で今後、資金や取り組みの重点をどこに置くべきか、その方向を示す役割をCESが担っていることに気づかされる。

ブランディングはもはや、役員会で発表されるスライドにあるような、マーケティングコンテンツやチャネルなどによって決まるような戦略を重視する時代ではない。今の時代のブランディングは、ブランドを体験するその場所で決定される。ユーザー体験はブランドのプロミス(約束)とオファーが交差する場所で、テクノロジーによって実践・強化・実現されている。

イノベーションとは、結果や成果を達成する上で、価値と改善の両方の意味を問い直すことによってさらに良いものを追求することを指す。安いコストでより良い結果を得ることができれば、企業や消費者にとって成長やROI(投資利益率)の原動力となる。投資家や大企業がCESにこぞって参加するのは、企業が自社の将来の成長ストーリーの1エピソードとしてイノベーションを喧伝するためだけではなく、パートナーシップ、リソース、人材を獲得するために自社の信頼性や魅力の根拠を発信するためでもあるのだ。

技術革新の普及がモビリティや輸送の概念を変えつつあることが追い風となり、CESは今や世界の主要なモーターショーの1つに数えられている。スマートシティ計画の中でインフラの整備が進めば、将来私たちが体験する移動手段はよりシームレスで、パーソナライズされつつシェアされるような、環境に優しいものになるだろう。CESのモビリティセクションが強く印象に残る理由は、展示されているコンセプトカーに膨大な技術が統合されているからだけではなく、多種多様なブランドや技術がもたらすさまざまな可能性がCESに集結し、まさにこれから実現していく様を示しているからでもある。

ヘルステックについては今年も、ウェルネスや診断・診療・治療支援に関する選択肢についての考え方を見直し、消費者(患者)が自分たちの健康の追跡・診断・管理を行うための更なる技術革新が見られた。

没入型エンターテイメントの展示も数多く、ゲーム関連各社が手掛けるスクリーン、音響、触覚、音声起動インターフェイスの開発やインテグレーション(統合)が紹介された。2020年は新たなコンテンツの開発や、より高速でクラウドtoクラウド(cloud-to-crowd)の接続を実現する 5G の活用によって、ブランド体験の没入感はさらに増幅されたと言える。

本年のCES2020は、「モノのインテリジェンス(Intelligence of Things)」が実現し、共同パートナーシップやより良い選択を支援する感覚刺激によってブランド体験が本当の意味で提供されたものとなった。「エクステンデッド リアリティ(XR)」や「パラレル リアリティ」、「量子コンピューティング」をはじめとするテクノロジーの新たなテクノロジーバズワードが浸透するようになれば、私たちの期待や行動にも影響が現れ始めるだろう。

 

Authored by Christopher Nurko, Chief Innovation Officer, Interbrand Group.

Translated and edited from “CES 2020: What is the Future Now? ”, posted January 28, 2020 by Maria Barea, in brandchannel.com, Interbrand

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