「取引より思いやり重視」のブランディング:Interbrand Global CEO Charles Trevail からBrandless共同創業者/CEO Tina Sharkeyへの5 Questions | インターブランドジャパン

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「取引より思いやり重視」のブランディング:Interbrand Global CEO Charles Trevail からBrandless共同創業者/CEO Tina Sharkeyへの5 Questions

サンフランシスコにあるBrandlessの本社を訪れると、そこにはいつも急成長中のeコマーススタートアップらしからぬ光景が広がっている。どの事業部でも見られるのは、デスクで顧客宛てに手書きの礼状を書く社員の姿だ。

「私は、スタッフ全員にサービスを提供している顧客とのリレーションを持って欲しいと考えています。こうして礼状を書くこと自体はマーケティング活動と位置付けていませんので、その反応までは把握していませんが」と、Brandlessの共同創業者・CEOのTina Sharkeyは語る。「これは、私を含めスタッフの誰かと、当社の顧客であるコミュニティの誰かとの間における個人的なつながりであるべきです。コンピュータの画面から離れて、誰かに”ありがとう”というシンプルな言葉を紙に書いて伝えることは何か特別なことなのです」

BrandlessはFast Companyが選ぶ2019年の最も革新的な小売企業上位10社の1つだ(Brandlessは販売している全製品のメーカーでもある)。Brandlessはスナック菓子からハンドクリーム、家庭用品に至るまで、あらゆる製品を自社のウェブサイトで3ドルで販売する会社としてスタートし、以来、価格体系を修正しながら製品ラインを拡大してきた。しかし「より良い製品を身近なものに、手頃な価格で、より多くの人々に」届けるというBrandlessのミッションは変わっていない。

ソーシャルメディア、オンラインコミュニティ分野の先駆者であるSharkeyは、キャリアを通じて数々の成功を収めている。1990年代に女性向けオンラインコミュニティiVillageを共同設立した後、AOLやJohnson & Johnsonなどで上級職を務め、中でもJohnson & Johnsonでは母親向けコミュニティ「BabyCenter」の指揮を執った。

現在はそのコミュニティ構築の専門性を、運営している消費財eコマースサイトに活かしている。SharkeyがBrandlessの中心に据えるのは、カスタマーリレーションシップ、透明性、信頼性などだ。先日National Retail Federation 2019の“Retail’s Big Show”でOutside Inのpodcastのライブ配信に出演したSharkeyは、Interbrand Global CEOのCharles Trevailと対談し、BrandlessのDNAについて、またブランドが「根底から」変わる必要がある理由などについて語った。

 

以下のインタビューは、podcastの内容を一部編集・要約したものである。

Charles Trevail(以下CT): あなたはBrandlessで小売やメーカー、広告業界、ブランドビルダーなどあらゆる役目を担っています。その通りだと思いますか?

Tina Sharkey(以下TS) 「実際にはその逆のように感じています。私がしていることは世の中で起きているさまざまな出来事の観察です。昨年米国で目の当たりにしたのは、消費財の上位90ブランドの売上の落ち込みでした。政府に対する拒否反応も垣間見ましたし、産業やブランドへの信頼も失われつつあります。ブランドは信頼の証であるにも関わらず、私たちは信頼を失ったのです。自分たちのために声を上げる人が増えており、ミレニアル世代の大多数は、”いや待てよ。親が買っていたものなんか買いたくない”と言い始めています。また国民の大半は、自分の価値観を反映したブランドと取引をしたいと考えています。そうした中で、会社を設立し、生産体制を整え、人々と直接関係を結ぶためのより良いやり方があるはずです。真実、信頼、透明性、コミュニティ主導といった価値観に根ざしたブランドを構築するためのもっと優れた方法があると思うのです。そうした意味で、個々の製品やサービスの取引ではなく、思いやりを拡大することに全力を注いでいます」

CT: Brandlessを「ありのままのブランド」であるとおっしゃっていますが、どういうことでしょうか?

TS 「当社には商品名を考案するチームがありません。Brandlessブランドのポリシーとその厳密さに関して非常に良いと思う点は、商品が”それそのもの”であるということです。レンズ豆スープはレンズ豆スープであり、アーモンドバターはアーモンドバターなのです。つまり、私たちはBrandlessを商品によって属性化しているとも言えます」

「例えば、当社はグルテンフリーのハンドクリームを販売しています。ハンドクリームがなぜグルテンフリーなのか? 食用に買われている訳ではありませんが、これは非常に重要な知見です。食品以外の一部の製品がグルテンフリーであるかどうかについての問い合わせが初めて寄せられた時、私は”この製品は食用ではないのに”と思ったものです。しかしこの問い合わせをしてきた人たちは、小麦が含まれるものにただ触れるだけでアレルギー反応を引き起こしかねないセリアック病を患っていたことがわかりました。一般的には食品以外の製品はグルテンの有無を調べるのが非常に困難であるため、当社ではウェブサイト上やサイト内の検索結果で、また製品パッケージ上で、グルテンフリーであることを明確に伝える必要があると考えました。このように、コミュニティは自分たちの欲しい製品を私たちにリクエストするだけでなく、ライフスタイルに関連した具体的な選択肢や世の中が進むべき方向性についてのインサイトを与えてくれます。そこでは消費者に直接つながり、関係が構築されていきます。私たちはブランドであることの意味、つまりサービスを提供しているコミュニティとのパートナーシップについて、再定義しているのです」

CT: コミュニティや目的に対するそうした意識をBrandlessブランドや文化に確実に浸透させるのに、どのようなことを行っていますか?

TS 「それは当社のチームから始まります。チームとして、会社が向上し、その価値に全力を注げるような目的を設定するのです。私は社員一人ひとりに目的を設定するよう呼びかける一方で、私自身の目的を伝えています。その後彼らに対して、その目的を設定した理由を聞きます。そしてより重要なことですが、その目的に向かっていく彼らを、会社がその年にどうサポートできるか尋ねるのです。そして、会社にいる全員が署名した後に壁に貼りだします。コミュニティに対しても私たちが設定している目的を伝え、彼らが私たちと共にそれを達成したいか、問いかけます。目的は設定しない限り達成できません。さらに、誰もが自分の周りにコミュニティを持っていること、人は究極的には善であることを忘れないことが最も重要です。Brandlessでの購入/支払が発生するごとに、その顧客に代わってBrandlessが慈善団体に食事1回分の寄付をするのは、そういった理由からです。思いやりを示す具体的な行動は誰もが望んでいることだからです」

CT: すでにPB(プライベート・ブランド)商品を提供している他の小売企業とBrandlessの違いは何でしょうか。Brandlessに対するニーズは何でしょうか?

TS 「オーガニック等を中心とした最近の健康志向の店(better-for you stores)は、ほとんどブティックのようであり、その価格帯からみて大半の人々は言わば招かれざる客です。私たちはこうした風潮を打ち破り、そこにスポットライトを当てました。私は“良いものにはコストがかかる”という考え方を変えたいのです。良いものを使う資格は誰にでもあり、そこに高いコストがかかるべきではありません。そしてより重要なのは、誰もが尊重され、その人自身として認識される資格があるということです。あなたはこうあるべきとか、あなた以外の人物にならなくてはいけないというのは間違っています。フェアではありません。私はそういったことにはうんざりなのです」

CT: あなたはベンチャーキャピタルを後ろ盾として、この人間的なムーブメントを作り上げた有名起業家です。しかし人々はこう言うかも知れません。「彼女は5年もすれば会社を売却するんだろう」と。実際にそうなれば、あなたがコミュニティで築いた信頼は失われてしまいますが、そうした可能性はあるのでしょうか?

TS 「それが世界的な上場企業であれ小規模なスタートアップであれ、人々は真の意味で良い会社とは何かについて、改めて考えるようになっています。また、人々は“良くありたい”と願っています。先ほどお話しした通り、企業への信頼が失われてきているという危機感があります。そうした危機感を持っているのは自らを立て直し、問い直しを始めている企業です。Brandlessで築き上げた信念(ethos)は当社のムーブメントにとどまりません。人々によるムーブメントです。私たちはそこで小さな役割を果たせるよう望むだけです。それが私の手を離れるということは予期していません。実際、会社は拡大するでしょう。私たちに売却するつもりはありませんが、そういったことが外部でささやかれていることは認識しています。ですがブランドのDNAを理解していれば、この絆、私たちがサービスを提供している人々との繋がりを壊すことなど不可能です」

 

Translated and edited from ”Branding with Soul: 5 Questions with Tina Sharkey, co-founder & CEO, Brandless”, March 27, 2019, brandchannel.com

Authored by brandchannel

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