デジタル共創ブランディングと真の顧客主義への転換 | インターブランドジャパン

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デジタル共創ブランディングと真の顧客主義への転換

インターブランドジャパン
エグセクティブ・ディレクター 戦略グループ 岡崎 恒

日本企業の短命化をどう捉えるか

日本企業の寿命は短命化している。多くの日本企業の経営トップが、「顧客主義」を強く提唱し、経営の全ては顧客のためにあり、経営戦略のトッププライオリティは顧客であるというメッセージを繰り返しているにも関わらず、この短命化に歯止めがかかる兆しは感じられない。事実、日経ビジネスは特集記事を組み、日本企業1社あたりの売上高と総資産額が100社に留まり続けた平均年数を、1983年と2013年に発表している。前者は平均30年、後者は18.7年という結果になっている。この数値だけを鑑みると、明らかに短命化に拍車が掛かっていることになるが、一方ではその短命化に向かう厳しい環境の中でも、生き残り、成長を続けている日本企業も存在していることになる。

その大きな違いは、どこから来ているのであろうか、或いは、成長を続けている企業と、短命に終わる企業の分岐点はどこにあるのであろうか。我々は、その違いが顧客主義とブランドの理想の関係性を追求しているかどうか、そして、テクノロジー進化に伴い、デジタル対応がどこまで実践的なものになっているかによるのではないかと考えている。本稿は、その違いを紐解き、日本企業の持続的成長の可能性を拡げるには、何をするべきかを論じてみたい。

 

顧客主義とブランド戦略の関係性

まず、最初に顧客主義の意味を紐解いてみたい。その意味には様々な学説や論説があり、勿論、企業によってもその解釈は異なる。しかしながら、その本質は、顕在、潜在に関わらず、顧客の中にあるニーズや欲求を明確に定義し、自社の存在意義をベースに、競合他社が成し得ない技術革新、事業、サービスにより、その欲求を満たすことが、顧客主義の本質であり、時代や顧客意識の変化を捉え続け、彼らのニーズや欲求を常に満たし続けることでもある。
 一方、ブランド戦略とはどういうものであろうか。ブランド戦略の基本は、企業がその存在意義や存在価値を掛け実現させた、競合他社が成し得ない技術革新、事業、サービスが提供する価値を、顧客が欲する便益に集約させ、彼らが最も魅力的に感じる約束事に転換することである。そして更には、顧客の変化に応じて、その約束事の価値を常に進化させることが、顧客主義とブランド戦略の理想的関係である。そして、その関係を継続している企業こそが、企業の寿命が短命になりがちな厳しい環境の中でも、成長を続けられる企業の姿なのである。

 

顧客主義とブランド戦略を上手く両立させる企業の共通点とは何か

顧客主義とブランド戦略の理想的関係性を追求し、厳しい経営環境の中でも成長を続ける企業は、何を実践しているのだろうか。デジタルネイティブ特徴を上手く生かし、彼らが積極的に参加したくなる実践的なデジタル対応を行っていることが、最大の共通点である。

そのデジタルネイティブとは、どんな世代なのであろうか。デジタルの世界に身を置き、その利便性や有効性を知り尽くしている彼らは、デジタルを媒介にし、より人間的でパーソナルに自分を1人の人格として認めてくれるコミュニケーションを求める世代でもある。デジタルの一見、無機的な閉ざされた世界だけでは物足りないからこそ、オープンで血の通ったダイレクトな言葉を欲しているのであり、企業にも人間的な側面を求める人たちである。

彼らの特徴を上手く生かし、彼らが積極的に参加したくなる実践的なデジタル対応とは、何を意味しているのであろうか。企業が直接、顧客と商品やサービスに関する意見交換を行い、そのプロセスを通して彼らの深いインサイトなどを定義することができるものであり、同時に彼ら同士で企業の評判、批判、噂などを即時に交換し、意見形成をする役割も果たすことができるプラットフォームを持つこと。それが、顧客主義とブランドの理想的関係を追求する企業の要諦になってきている。

 

デジタルプラットフォームの最大活用と共創ブランディング

では、デジタルネイティブのインサイトを把握し、彼らのニーズや欲求に応え続ける顧客主義を経営の根幹に据えるために、企業のデジタルプラットフォームはどんな機能を持つべきであろうか、そして、その機能を活用して、より魅力的に進化したブランドであり続けるには、何をするべきであろうか。

前提になるのは、自社の問題や課題意識がどこにあるか、その解決のためにどんな協力が必要か、そして最終的に何を達成したいのかを、彼らに率直に話すことである。 その上で、以下の課題解決へのヒントを導くことが可能で、彼らとの意見交換もできる場所を現実的に開発することが必要である。

1. 自社のブランドのあるべき姿へのヒント

最終的に彼らに届いているブランドを、彼らはどう思っているのか、どう認識しているのか、それは自社が意図した通りの受け入れられ方になっているのかどうか、ギャップが生じているのであれば、そのギャップはどこから来ているのかなど

2. 自社の技術、事業、サービスへのインサイト定義

通り一遍のオンライン調査やフォーカスグループインタビューでは把握し難い自社の技術、事業、サービスなどへの顧客インサイトの把握。その技術、事業、サービスを購入することで、どんなことを解決したいと考えていたのか、その技術やサービスを利用することで、どんな感覚的便益を感じるのか、競合ではなく自社の技術やサービスを利用した本質的な理由は何かなど

3. 自社の技術、事業、サービスの改良点の把握

自社の技術、事業、サービスそのものへの積極的な意見交換。彼らはその技術、事業、サービスを、彼らの友人に勧めるのかどうか、勧められないのであれば、どんな障害があるのか、何を解決すれば、どんな人に積極的に勧めることができるのかなど

このような3点の把握を中心に据え、自社のデジタルプラットフォームを彼らに開放し、積極的な意見交換によりブランド戦略の進化を試みたり、インサイトの定義から新たな事業イノベーションのヒントを得たり、彼らの意見を通じて更に進化したサービスや技術を開発するヒントを入手する。こうした共同作業、つまり共創ブランディングのアクションの積み重ねこそが、顧客のニーズや欲求に本質的に応えられる顧客主義への転換を可能にするのである。そのことを深く認識している企業だけが、成長を継続できる時代になっていると考えていいのではないだろうか。

 

真の顧客主義への転換のために

 個々の企業によって経営の課題、ブランドの課題は異なるし、勿論、顧客主義の意味も多様である。しかしながら、それぞれの企業の現実に即した最適解のために、共創ブランディングのプロセスを構築し、顧客主義に転換させること、更には、その企業の社員一人ひとりが納得できるプロセスで、その転換を可能にすることが、我々インターブランドのコンサルティングの本質である。その本質的コンサルティングを更に進化させるために、我々は全く新たなサービスを導入し、より本質的な経営課題に資する展開を開始している。

 

 

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