画期的ソリューション: 「無形資産」の価値が初めて認められてから30年、ブランド価値評価の歴史を振り返る | インターブランドジャパン

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画期的ソリューション:
「無形資産」の価値が初めて認められてから30年、ブランド価値評価の歴史を振り返る

ブランドの本当の価値はどのように測るのだろうか? 私たちInterbrandは1988年にそのための画期的なソリューションを生み出した。

1988年の世界は、現在とは何もかも違って見える。Dell Computersはやっと販売を開始したばかり。BlackRock Asset Managementは創業したばかりだ。この年1番の大ヒット映画は「Die Hard」。欧州原子核研究機構(CERN)ではWorld Wide Webの構想が初めて議論されていた。

1988年はまた、Interbrandが世界のビジネス環境を永遠に変えることになる極めて重要な一歩を踏み出した年でもある。有形資産と同様の価値を、全くの無形資産である「ブランド」にも初めて認めたのだ。

それから30年を迎えたのを機に、「ブランド価値評価(Brand Valuation)」の歩みを振り返ってみよう。誕生のきっかけとなったエピソードから、及ぼした影響、さらには今後の展望までを見ていきたい。

物語は英国の食品会社 Rank Hovis McDougall(RHM)の役員室の場面から始まる。当時RHMには英国で最も人気の食品ブランドからなるポートフォリオがあり、どのブランドも潤沢な広告予算のおかげで数多くのキャラクターやキャッチフレーズを世に送り出した。1980年代当時を知る英国人の大半は、それらを今でも口ずさむことができる。中でも「Mr Kipling」(”見事なケーキ”を作った人懐こいシェフ)や「Bisto Gravy」(グレービーソースがかかった肉料理を前に‘Ah Bisto!’と歓声をあげる家族) 、「Hovis Bread」(パン焼き職人や働き者の農夫など、素朴で健全な北部の人々)などは有名だ。

RHMは、当時”買収屋”とも評された豪食品会社 Goodman Fielder Wattie(GFW)から敵対的買収提案を仕掛けられていた。その提示金額があまりにも安いと考えたRHMの幹部が助けを求めた先が、Interbrandだった。Interbrandはマネジメントメンバーを挙げて財務とマーケティング両方の観点から課題を検討し、生産施設や設備などのような有形資産だけでなく、無形資産についても企業価値に反映させる評価法を開発する。これが世界で初めて行われたブランド価値評価であり、GFWの提案額にRHMのブランドポートフォリオの多大な価値が反映されていないことを明らかにしてみせたのである。結果、買収提案は拒絶された。

これはブランドにとって、ひいてはブランディング、広告、マーケティング業界にとって、地味ながらも象徴的な瞬間となった。Interbrandが開発したこのブランド価値評価のコンセプトは、早くも翌年にロンドン証券取引所のお墨付きを得る。これはまた、バランスシート上のブランド価値を意識する大手企業が急増する契機ともなった。知的財産権関連のコンサルティングを行うOcean Tomo社の分析によると、企業価値を決定する要因は有形資産から無形資産へと大きくシフトしており、現在ではその割合は無形資産が80%、有形資産が20%になっているという。The Economistによる「The Financial Value of Brands」には、この初めてのブランド価値評価がその後のトレンドの先駆けとなったと記されている。

Interbrandのブランド価値評価は「ブランドが提供している製品/サービスに関する財務分析」、「購買決定時におけるブランドの役割分析」、「ブランド強度分析」という3つの包括的なアプローチから構成されている。このうち「ブランド強度分析」の評価モデル指標は、以下の合計10の社内要素・社外要素からなる。

【社内要素】

* Clarity(概念明瞭度): ブランドの中核概念(価値観・パーソナリティ・需要喚起要因・提供価値の総体)が明瞭になっており、社内で理解、共有されているか。

* Commitment(関与浸透度): 経営層や社員が、ブランドは事業戦略の中核を為すと信じ、組織全体のあらゆる意思決定、行動、活動にブランドの中核概念を反映させており、ブランドに対する愛着・誇りが生まれているか。

*Governance(統治管理度): ブランドを防御・コントロールするための役割・責任が明確に定められているか。ブランド戦略を効果的かつ効率的に実行するために必要な組織能力・仕組みを有しているか。

* Responsiveness(変化対応度): 市場環境やビジネスチャレンジの変化・発生を予測し、タイムリーに対応しながら、ブランド・組織・戦略を継続的に進化させ、ビジネスを成長に導いているか。

【社外要素】

*Authenticity(信頼確実度): ブランドの中核概念を確実に実現するための、オペレーション・組織文化・組織能力などを備えていると、既存・潜在顧客に信じられているか。

*Relevance(要求充足度): 機能ベネフィット・情緒ベネフィットの両面で、既存・潜在顧客のニーズ、欲求、意思決定基準を満たしているか。

* Differentiation(差別特有度): 競合と比較して差別性のある特有の価値やブランド体験を提供しているか。その差別特有な価値や体験が、既存・潜在顧客に認識されているか。

* Consistency(体験一貫度):既存・潜在顧客が、ブランドと接する全ての機会を通して、一貫したブランドの中核概念と、それに基づくストーリーを感じているか。

* Presence(存在影響度): ソーシャルメディアを含むあらゆる媒体やコミュニケーションチャネルで、既存・潜在顧客に好意的に語られているか。既存・潜在顧客、またオピニオンリーダーの中で、際立った存在と認められているか。

* Engagement(共感共創度): 既存・潜在顧客がブランドの中核概念を正確に理解し、強く共感しているか。また、愛着や一体感をもって、ブランドの価値創造に参加しているか。

 

現在Interbrandは、戦略的ブランドマネジメントからブランドにまつわるビジネス係争の解決、交渉における情報提供などのサポートまで、広範な目的のためにブランド価値評価を実施している。過去19年間、世の中に広く知られている「Best Global Brands」レポートを通じて、強力なビジネス資産としてのブランド価値の推進に力を注いできた。Interbrandは2010年に国際標準化機構(ISO)からISO10668の認定を受けた初めての会社だ。ISO 10668はブランド価値評価の新たな国際基準で、策定にあたっては当社が中心的役割を担った。効果的なブランド価値評価に重要なのは、ブランドやビジネス価値の成長の方向性をはっきりさせることであることがわかっている。この課題に取り組むため、当社では戦略、デザイン、分析のほか、知見を示し提言を行うためのビジネス分析など、多様な分野で連携している。

例えばSamsungのようなクライアントでは、ブランド価値そのものを、事業変革を起こす手段として利用している。Interbrandは1998年から毎年Samsungのブランド価値評価を実施しており、世界的レベルのブランドの構築や革新的で優れた技術を用いた製品の重要性を高めるサポートを行うとともに、彼らが戦略を遂行できるよう指針を示すことで「Best Global Brands Top 100」入りする道筋をつけた(2018年のランキングでは6位にランクインしている)。

言うまでもなく、世界はかつてないほど顧客/クライアント中心になっているため、当社もそれに合わせて評価法を進化させ再調整を続けている。クライアントは常に変化の速い世界の一歩先を行こうと、市場トレンド、競合、テクノロジーを常時モニタリングする方法を探し求めている。彼らは顧客とのつながりを継続的に保って最重要事項であるブランド体験を絶えず改善する必要があり、そのために、定量的・定性的データによって得られた信頼性の高いファクトベースをもとにROI重視の決断を下している。”Always-on”のブランドマネジメントのニーズこそ、Interbrandが今一度先駆けになろうとしている未開拓分野なのである。

Translated and edited from “An Exceedingly Good Solution: Looking back on 30 years of Brand Valuation”、 interbrand.com

Authored by Mike Rocha、 Managing Director、 Interbrand Economics
mike.rocha@interbrand.com

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