
「NECのマーケティング&セールストランスフォーメーションは、セールスパーソンの動き方を大きく変える」
コロナによって変化が加速。ずっと仕込んできたことが花開いた。
―サプライヤーのニーズ、顧客のニーズが加速度的に変わる中、質的変換を図ることで、顧客のパーセプションの変化も早くなると思われますか。
お付き合いの長いお客様から「どうしたの、NEC?!」「NECらしくない」と驚かれ、いい意味で「やってみよう!」と言ってくださるお客様も出てきています。パーセプションを塗り替えるチャンスという意味では、COVID-19の影響が良くも悪くも働いていると思います。事業遂行という観点で様々な困難にも直面していますが、一方でDXがさらに加速することは大きなチャンスでもあります。お客様は創業120年/社員数10万人超の典型的な日本の大企業であるNECが、自社のDXを推進する上でどう振る舞っていくのかを注目されている状況は、我々自身の変革力を見せつけてお客様からの新しいご期待を獲得するチャンスそのものです。市場から新しいご期待を頂戴するということは、つまりNECというコーポレートブランドが持つブランド力、市場を創出する力が上がったということになります。
一見マーケティングとは関係なさそうなIR(投資家説明)も塗り替えのチャンスです。当たり前ですが、当期受注、当期売上、当期純利益等々の国際会計基準に則り正しく報告しています。これがセールスフォースなどに代表されるようなSaaSベンダーなどは、当期売上等々の財務の観点に加え、「顧客満足度」「顧客契約継続率」といったKPIを発信し、事業成長への期待を獲得することで高い時価総額を維持しています。当社も、ソリューション/製品の製造販売ベンダーからaaS(as a Service)的なサービス提供を通じて顧客企業の成長のパートナーとなるために、既存事業のaaS化を進めてきました。今年度にはデジタルビジネスを推進する専門部署も立ち上げます。マーケティングという観点では、顧客満足度と契約継続率はこれまで以上に重要な指標となると考え、2年前に顧客満足度向上を推進する部署を、品質保証部門からマーケティング部門に移管しました。顧客との関係性の強化こそ事業の永続的な発展に欠かせない、という考えからです。
他にも様々なDXシフトのための仕込みを3年位前からやっていました。今回、COVID-19でDXはさらにブーストがかかったと思われますが、様々な仕込みがあったおかげでその波に乗れていると感じています。
コロナが収束しても、もとには戻らない。新たな環境下で働き方も変化していく。
― COVID-19や緊急事態宣言などの状況下で皆が動き出し、会社の本質的な部分に対して議論が加速したことは、元のようには戻らない要素なのではないでしょうか。
この状況は、コロナが収まってももとには戻らないと思います。
例えば、副業というのがありますよね。弊社も、コンフリクトがない限り認めるように変わってきましたが、デジタル環境が整備された中で働くということになれば、その人の本当に尖った能力だけで、3社、4社で同じ仕事をすることが可能になります。ワークシェアリングというのとは違うかもしれませんが、そうした働き方がさらに出てくるのではないかと思います。いくつかの専門職では、活躍の場を複数に求めて、価値ベースでフィーをもらう、”Pay for performance“ができるのではないかと思います。
マーケティングの部署でも生産性は上がっていると感じています。限られた時間の中、自分の創意工夫で、できることをさっと仕上げる。これを見ると、弊社のマーケティングの中だけではなく、社会全体として、自分の得意分野を生かして対価を得るということが増えていくのではないかと思います。いま流行りのスキルマッチング系のことが、デジタル下では起こりやすくなっていると思います。
今まで以上に、これからは、パーパスや価値観を共有するブランドが強くなる。
―インターナルブランディングという観点から考えると、ブランドオーナー側が、かなり大きなパラダイムシフトを求められるのではないでしょうか。
そうですね。ブランドロイヤリティーという意味で、プロフェッションというものを、働いている会社に持つのではなく、自分の中に持つということになると思うのです。腕に自信を持つ専門家や、特に今の若い世代ほど、社会に対する大義、例えばSDGssもそうですが、そのようなものに対するシンパシーが高いですよね。「NECの〇〇だからすごい」とか、「NECの◇◇◇がこう言っているから」―ではなく、自分自身も、NECの思う社会活動に共感する。だからNECの大きな事業のためにスキルを発揮するということになるのだと思います。パーパスや価値観の下に人が集まるブランドは強いと思うのです。明確なパーパスや価値観を持つブランドには、いい人が集まるし、いい仕事をしてくれる。いい人が集まれば、いい仕事が出来、業績が伸びてブランド価値も高まるといった、好循環の健全なスパイラルが回りだすと思います。