"共感"を"行動"につなぐ。KIRINのパーパス・ブランディング | インターブランドジャパン

“共感”を“行動“につなぐ。
KIRINのパーパス・ブランディング

ブランドリーダーズインタビュー

ますます先の読めないコロナ禍において、各社のブランドリーダーはどのように変化の波を捉えているのか。変わるもの、変わらないものを浮き彫りにするインタビューシリーズ。 

第7回:坪井 純子氏

キリンホールディングス株式会社 常務執行役員

―社会やビジネスにおいて様々な変化がありましたが、コロナ禍の現状をどのように捉えていらっしゃいますか。

これまでの社会やビジネスの常識が一気に覆るような大きなインパクトを受けたと思いますし、あらゆる場面で大規模なパラダイムシフトが起こったと捉えています。特に、多くの人が行動を制限される状況に置かれたことで、本当に欲しいもの、必要なものは何かを改めて考えるようになり、“ブランドの再選択”が始まったように思います。
また、意識だけでなく、行動が変化したことで、コミュニケーション方法や売れるモノ・売れる場所にも、大きな影響がありました。これまでは、改革しよう、変えようとしても、戻ろうとする意識が働き、できない理由を探す傾向もありましたが、コロナ禍ではまず行動から先に変えざるを得ず、後から意識が変わっていく—そんな構造変化が起こったのではないでしょうか。
そう考えると、実は、コロナによってこれまでになかった変化が起こったというよりも、バリアが外れて、既にあった流れが加速した、あるいは課題が顕在化したと捉えるべきかもしれません。働き方の変化についても当てはまる部分がありますし、私たちKIRINのビジネス領域においても、アルコールに対するメガトレンドや、飲食する場所や時間の変化など、これまで変わりつつあったことが顕在化したという捉え方もできます。また、ファンケルとの資本提携をはじめ、強化しているヘルスサイエンス事業においては、健康・安全志向—特にKIRINの得意分野である“免疫”への注目度が高まり、大きな追い風になりました。健康志向はこれまでもありましたが、これまで以上に安全や健康に対する関心が高まったことは明らかです。

一方、一時的な動きも散見されます。世界ではニューノーマルという言葉が定着化しつつありますが、私たちは、ある程度の揺り戻しもあることを視野に入れながら、何が不可逆なのかを、これまで以上に見極める力が求められています。社会や人々の意識と行動はどう動いているのか、お客さまや社会が何を大事にして、何を望んでいるのか—いま一度、原点に立ち返る必要性があると思っています。

 

 “働きがい”に踏み込み、真の社内改革を目指す。

—コロナ禍における変化の中で、特に、注目している・大きな影響を受けたと思う動きはありますか。

やはり、“働き方の変化/ワーク・フロム・ホーム”でしょうか。いろいろな理由を付けて、これまではなかなかできなかったことにも取り組まざるを得なくなりました。当初、KIRINでは“働き方改革” という表現をしていましたが、“働き方”と“働きがい”では、意味の違いが非常に大きいことから、“働きがい改革”という呼び方に変更しました。
“働き方”の改革では、環境を整える―つまり、ITインフラや制度・仕組みといった外的要因を整えることが主体になりますが、“働きがい”の改革では、人間の内面が重要になってくるはずです。何のために・誰のために働いているか、自分がこの会社のために働いている理由や誇りとは何か。自分が働いている会社は、社会の中でどんな役に立っているのか等、その焦点は、意識の内面に向かっていくのではないでしょうか。

シビアな環境下で働く人にとっては、時間の管理以上に、“働く意味”が重要になると思いますし、自身の仕事がどれだけバリューを出せるかという思考を持って働くことが求められる。当然、評価軸も人事制度も変えなくてはならい。新たな課題も生じると思いますが、やはり“働き方”を整えるだけでは改革は難しいと思っています。
KIRINでも、まず営業や内勤部門の環境を整えるなど働き方改革に取り組みましたが、工場や物流など、メーカーとしての供給責任を果たすため、緊急事態宣言の厳しい環境下でも出社を続けてきた部門もあります。社長自ら「もはや“働き方”ではなく、“働きがい”だ」と宣言し、グローバル含むグループ全体で取り組むことになりました。
人の気持ちに関わる部分もあり、“働きがい”に本当の意味で踏み込めるには、まだ時間を要するかもしれません。これまでとは違う打ち手も必要になってくるはずですが、今後は、人間の内面にある“働きがい”まで踏み込んでいかないと会社も変われないだろうという考えのもと、社内でも試行錯誤しながら、いろいろな打ち手を検討し始めたところです。

 

—社内では、ポジティブな動きや変化につながるような活動に取り組まれていますか。

緊急事態宣言が出た直後は、物流や製造部門はリスクがあっても出社が必要な一方、管理部門などスムーズにリモートワークに移行した部署もあり、業務による差が生じていました。そうした中で、営業部門の社員が自主的に製造部門にエールを送るような施策や、KIRIN商品の『iMUSE(イミューズ)』を、製造や物流部門の全員に配布するような活動に取り組みました。それぞれの役割や持ち場の中から、自発的なアイデアが生まれ、行動に結びつけることができました。

 

—リモートワークに移行された後の社内の状況はいかがでしたか。

4月頃はまだ先が見えない状況もあり、みんなで我慢して乗り切ろうというムードが強かったのですが、早い段階で、これは元の働き方には戻らないと判断をしました。
そこで、社内には、リモートワークに変わったからこそ享受できるメリットや、良い面に目を向けて、「仕方なくオンライン」「仕方なくリモート」ではなくて、「リモートだからできることは何か」を考えて欲しいということ、そして、「リアルの本当の意味・価値とは何かを見つめ直そう」というメッセージを発信しました。
リアルの価値のキーワードは、“間と場と身体性” と個人的に考えています。 “間”は、余白といってもよいかもしれません。リアルだからできる雑談、会話と会話の間・余白の部分です。“場”は、同じ空気を共有することで生まれるコミュニティ感。これは、リアルならではの感覚ではないかと思います。3つめの“身体性”というのは、例えば、リアルでないと試飲はできない、といったこともありますが、人間も生き物なので、どんなにAIやロボットが発達しても最後は身体性にいきつくのではないかと思っています。 “間と場と身体性”。他にもあるかもしれませんが、リアルでなければならないことは何か見つめ直し、より高いバリューを生みだすために何をすべきかという視点を持って行動して欲しいと思っています。

また、「WhyとHowを取り違えないように」、「Howを目的化せず、まずWhyから始めよう」というメッセージも繰り返し伝えています。不確実性の時代には、“問う力”が重要です。特に日本では、問いを与えられ、答えをつくる能力は優れていますが、問いをつくる力に課題があると指摘されることが多い。WhyがないのにHowばかりを追求しても、本質的に変われないのではないかと考えています。

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