地域に根差し、暮らしの中にそっと息づく“しあわせ“を感じるブランドを目指して。 | インターブランドジャパン - Part 2

地域に根差し、暮らしの中にそっと息づく
“しあわせ“を感じるブランドを目指して。

「茅乃舎」らしいブランドの進化とイノベーションの在り方を問い続ける。

―社員の方には、ブランドの考え方がしっかりと浸透されているのではないですか?

大切な部分は理解していると思いますが、次世代の社員が本質的なところまで深く理解できているかと問われると、そう簡単ではなく、難しい―というのが実情ではないかと思います。

「茅乃舎」は、市場やお客様からは「ブランド」として捉えていただいていますが、そういう認識が社内で当たり前のようになってしまうと、どうしても楽な方に流れてしまいます。次のステージに向けては、やはり、違った価値を持つブランドをつくり続けていかないと、ブランドの継承も難しい。少なくとも、茅乃舎に続くような新しいブランドで、商品ジャンルやカテゴリーを拡大していくチャレンジが必要ではないかと考えています。

ここ数年、「茅乃舎」ブランドには、新しいニュースが少ないのではないかという懸念もありますし、やはり、新しいニュースを発信し続け、“守り”と両面のアクションを起こしていかないと、進化し続けることはできないと思っています。

 

―ブランドを進化させていくには、イノベーションが必要だと思いますが、どのような取り組みをされていますか?

新商品開発、新業態開発など、テーマを設けてプロジェクト体制を組んでいます。結果が出ているものもありますが、まだまだ道半ばです。

先日、社長から新入社員に対して「ブランドとは、驚き・感動である」という話がありました。私は、さらにもうひとつ、「しあわせ」が感じられるかどうかということが大切ではないかと思っています。モノの価値から体験価値へ、さらにその先にある「感動」。そして「しあわせ」—という流れがあるのではないかと。

人の「しあわせ」というのは、やはり、自分だけでなく、周りの人や地域、社会、地球のために、といった幅広い視点で捉えたときにこそ、見えてくるのではないかと考えています。CSRや社会貢献といった範疇や枠組みではなく、地域や環境から自分の「しあわせ」につながる、もっと身近な部分の「しあわせ」を考えてみることが、「茅乃舎」らしいのではないかと思っています。ブランドは、結果ではありますが、そうした思考や考え方も含めて価値を積み重ねていくことが、ブランドを進化させていく上で重要なキーワードではないでしょうか。

 

― 「茅乃舎」が届ける「しあわせ」を突き詰めた先に、あるべきブランドの活動が見えてくるのかもしれませんね。

九州に根付いたブランドであるということをベースに活動を掘り下げ、どういう「しあわせ」が提供できるのか―そういう視点を持って、これからを考えていきたいという思いはあります。

私たちの本社は、福岡市ではなく、久山町というところにあります。ここでは、50年以上にわたり、久山町・九州大学・地域開業医が連携し、「ひさやま方式」と呼ばれる住民の健康管理が行われており、1万人ほどの住民を対象に、疫学調査が続けられています。

こうした場所とつながりもあることから、もっと食生活から地域に貢献し、地域のためになるような活動をすることで、ブランド価値を高めていくような活動に取り組んでみたいと思っています。これまでであれば、CSR活動の一貫と考えられていたかもしれませんが、これをビジネスモデルにするようなことが、これからは大切なのではないかと考えています。

 

―「しあわせ」を事業イノベーションのドライバーと考えると、大企業がやっている欧米的なSDGsとは違う形、異なるレイヤーで、社会貢献ができるのではないでしょうか。

コロナ禍においては、人間性が問われていると感じます。一般的には、健康志向がさらに高まるといわれていますが、健康志向の意味合いも変わってきており、いま改めて、人間性を取り戻そうという思考の流れが生まれている気がしています。

社長は「久原本家の商品は、家族の思い出づくりのためにある」というお話をされることが多々あります。私は、企業やモノの価値、ベネフィットといったものではなく、やはり、お客さまの生活の場の中で、その商品があることによって、人の「しあわせ」があるということではないかと理解しています。

 

―「茅乃舎」から「しあわせ」をつくるというのは、今までもずっと取り組まれてきたことであると思いますが、店頭の在り方も変わっていく、変えられるかもしれませんね。

アメリカなどでは、もう既に始まっているのかもしれませんが、“商品を販売しない店舗・予約制でホスピタリティーのみを提供する店舗”といった展開方法は考えられると思いますし、お客さまに“場”を提供し、学びの空間にして頂くといったこともできるかもしれません。今までの狭い業態とは異なる、業態を革新するようなことを検討してもよいのではないかという話はしています。新しい店舗や業態を形としてつくるというより、その場所に行く、動機や期待をつくる。

まだまだ、社内には進化のために加速させなくてはならないことはたくさんありますし、オムニチャネルやDXへの対応も、さらに進めて行く必要性があると考えています。

 

―人と人とをつないでいくことが非常に難しい時期にある中で、「茅乃舎」ブランドが持っている温もりや優しさ、つながり・会話など、フィジカルのタッチポイントについては、今後どのような展開を考えていらっしゃりますか?

直営店では、味を体験できるというところが売りなのですが、それが叶わないのは非常に厳しい状況です。別の手段として、100円でサンプルを販売し、味を体験してもらう有料試飲をやっています。また、他にもサンプルをつくり、店舗だけでなく通販でもサンプリングするような試みにも取り組んでいます。イベントもできない状況下では、リモートでイベントを実施し、リアルタイムで動画を配信するような活動にもチャレンジしていますが、早くリアルなお客さまとの触れ合い・コミュニケーションを取り戻せるようになることを願っています。

 

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