地域に根差し、暮らしの中にそっと息づく“しあわせ“を感じるブランドを目指して。 | インターブランドジャパン

地域に根差し、暮らしの中にそっと息づく
“しあわせ“を感じるブランドを目指して。

ブランドリーダーズインタビュー

ますます先の読めないコロナ禍において、各社のブランドリーダーはどのように変化の波を捉えているのか。変わるもの、変わらないものを浮き彫りにするインタビューシリーズ。 

第4回:浅野 高弘氏

株式会社久原本家グループ本社 常務取締役

 

変化するリアル店舗の役割―買い物をする場所から“お馴染みさま”が“集う場所”へ。

― ここ3~4カ月の中で、お客さまに関する変化や気づきはありましたか? 

より大切にしなくてはならないと感じている点は、大きく2つあります。1つは、“お馴染みさま”です。お馴染みさまを大切にしたビジネスがいま改めて必要とされていると感じています。もう1つは“地域で支持される”ということです。この数か月間、百貨店をはじめ、店舗での売り上げダウンに関するニュースを目にすることも多く、「茅乃舎」の店舗でも、空港のターミナル店や、観光客・インバウンドのお客さまが多い店舗の売り上げは落ち込みました。そうした状況下でも、“地域一番店”では、あまりマイナスの影響を受けておらず、地域で支持されているということの重要性を改めて再認識しています。

また、「茅乃舎」は、直営店と通販チャネルでビジネスを展開しており、これまでは、お客さまがチャネル毎に固定されている傾向がありました。しかし、外出自粛の中で、お店に行かずに通販で購入されるお客さまが増え、店舗でのマイナス部分を、ある程度、通販チャネルでカバーするような形になったことも、コロナ禍での特徴的なお客さまの変化であると思います。

 

― 特に、地域で支持される店舗には、お客さまとの関係性に特長がありますか?

“地域一番店”では、コンサルテーション型の接客に積極的で、ギフトや贈答品を選ぶ際に、いろいろと相談しながら決めるお客さまが多い傾向があります。店舗とお客様との繋がりはより強固ですし、お客様にとって、単に買い物をする場所というだけでなく、“集う場所”にもなっている。そうした店舗には、日常的に、何度も利用していただけるお馴染みさまも増えていきますし、やはり長いお付き合いをして頂けるような関係性を築いているお店ほど、多くの方から支持されているのではないかと思います。

また、この数か月間、自宅で過ごす時間が増えた分、お客さまの間で、料理にひと手間かける・手づくりしてみようという気持ちが高まったように思います。例えば、通信販売では、お味噌を手づくりできるキットを販売しています。これまでは、小学校の食育の授業でご利用いただくような限定的な商品でしたが、お馴染みさまにご案内したところ、あっという間に完売になりました。完成品のお味噌を買う方が手間を省くことができますが、増えた時間を自分たちで手づくりする時間にする—そんな気持ちを持つお客さまが増えたのかもしれません。

コロナ禍での外出自粛もあり、消費全体に贅沢品の買い控えや価格志向が強まった印象がありますが、食生活においては必ずしもそれが全てではなく、週末には、ご家庭でいつもよりちょっとプロっぽい味を楽しみたい、あるいは、こういう状況だからこそ、前向きに食を楽しもうという気運が高まったのではないかと感じます。

 

― 今後の成長に向けて「久原本家」「茅乃舎」への期待やニーズにどのように応えていこうとお考えですか?

今後の成長を考えると、ブランド資産を有効に使いながら、敢えてブランドを否定するようなことにもチャレンジする。ブランド資産を包み込むようなチャレンジが必要ではないかと考えています。

ブランドであるためには、変えてはならない部分がある。一方で、どこまで振れ幅を持つか。

例えば、「茅乃舎」ブランドには、おいしさにこだわり、日々の暮らしの中で食を楽しんでいただけるような“手のとどく本物“をご提供するという核となる考え方があります。これまでは「だし」を中心に、余計なものを入れていない”和”の商品を展開してきました。しかし、例えば、お馴染みさまに注目してみると、より長いお付き合いをしていただくために、和食以外のジャンルへの拡張や加工食品などへの商品拡大も必要かもしれません。

他社の領域までは踏み込まずに、この会社、このブランドがなくなったら困ると思われる領域であれば、チャレンジしても良いのではないかという気持ちもありますし、「久原本家」全体の今後の成長のためにも、次のステージを考えなくてはならないターニングポイントではないかと思っています。

 

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