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Ready Player 2.0

Covid-19は、私たちを取り巻く物理的な世界の認識を抜本的に変えてしまいました。今や外に出ることは本質的に危険なことであり、親しい⼈との握⼿がきっかけとなり、スタジアムや劇場がスーパースプレッダー現象のグラウンド・ゼロとなり得るのです。こうした中で、物理的な世界が今後なくなることはもちろんありませんし、完全に避けられるものでもありませんが、その必要性は、かつて考えられていたほどではなくなってきているのではないでしょうか。バーチャルな世界は、⼈にとってもブランドにとっても、従来よりも受け⼊れられる、あるいは好ましい選択肢になりつつあるのではないでしょうか。
私たちはすでに映画の「Matrix」の中にいて、まだそれに気づいていないだけなのかも知れません。

昨年以降、拘束されて時間を持て余した状態の中で、「Minecraft」や「Grand Theft Auto V」などの昔から⼈気のあるゲームから新作まで、プレイヤーが急激に流⼊・増加しました。中でもブレイクしたのは、教育的な空間創出や多数のキャラクターのカスタマイズまで、ユーザーが開発・制作までできて⾦銭的な報酬も得られるオンラインプラットフォーム「Roblox」や、Nintendoの「あつまれ どうぶつの森」などのブランドでした。「あつまれ どうぶつの森」では、プレイヤーは静かな島を作って飾ることができるだけでなく、他の⼈を招待してバーチャルな交流を楽しむことができます。この2つのブランドは、ユーザーとの共同制作を可能にし、⼈々は会議や結婚式、コンサートなど、あらゆる場⾯でバーチャルな楽しみ⽅や共有⽅法を⾒出しました。

また「あつまれ どうぶつの森」では、さまざまなブランドをマイデザインとしてゲーム内のアイテムに簡単にカスタマイズすることができ、Marc JacobsやValentinoなどのファッションブランドは、ゲーム内でバーチャルファッションショーを開催しました。
こうしたバーチャルワールドはあつ森の島だけに留まらず、他のメタバースでも同じような状況が起きています。著名ラッパーのTravis Scottや⼈気DJ兼プロデューサーのKascadeはコンサート会場をFortniteに移し、Warnerはストリーミングサービスを⽴ち上げ、eSportsは前年⽐9%という驚異的なペースで新しいファンを獲得し続けています。Amazonが提供する、世界最⼤のゲームストリーミングプラットフォームの Twitchの視聴時間は、2020年には全世界で170億時間を超え、実に前年⽐83%増を記録しました。

メタバースは、⼈々にとって時間を費やすだけでなく、お⾦を費やすための選択肢としても、ますます魅⼒的になってきています。プレイヤーの87%は、スキン、バッジ、DLC(ダウンロードコンテンツ)などのゲーム内のデジタルアセットにお⾦を払った経験があり、こうしたゲーム内のマイクロトランザクション(いわゆる課⾦サービス)市場はゲーム業界の成⻑を牽引し、2022年には全世界で2,000億ドル近くに達すると予想されています。またゲーム内アイテムは、ゲームを続けるための⾦銭的なインセンティブにもなります。NFT(Non-Fungible Token:ブロックチェーンを利⽤した⾮代替性トークン)のブームが起こる前から、デジタルアイテムのマーケットプレイスでは、レアなアイテムが熱⼼なコレクターの間で数⼗万ドルで取引されています。

また、ブランド側も、ロックダウンの影響を受けない仮想世界での第⼆の⼈⽣を求めるゲーマーの思考を利⽤し始めています。意外かもしれませんが、ハイテクに精通し、⼈間の欲求を利⽤し体験を構築する専⾨家であるラグジュアリーブランドは、既に⾏動を起こしています。Burberryは、中国で1億⼈のアクティブプレイヤーを抱えるTencentのMOBA(多⼈数同時参加型オンラインバトルアリーナゲーム)「王者榮耀(Honor of Kings)」とコラボレーションし、Burberryのデザインをベースにした2つのスキンを発売しました。クリエイティブ・ディレクターのリカルド・ティッシはこの決定について、「個⼈的で感情的なつながりを持つ、という⼈間の中核的なニーズを構築し、育成するための⽅法」であり、「オンラインだけでなくオフラインにおいても⾃分の周りを探索する⼒をコミュニティに与えるため」と説明しています。中国はこうした最先端のラグジュアリーブランドにとって魅⼒的な市場であるとともに、巨⼤なゲーマー市場(6億4千万⼈がビデオゲームをプレイし、そのうち3億⼈が⼥性)でもあると⾔う、ユニークな組み合わせを提供しています。

またGucciが、VRを活⽤したスニーカー試着アプリWanna Kicksを使って、バーチャルスニーカーを有料で販売を開始するなど、さまざまなものが仮想化されつつある中で、今後ブランドが販売するフィジカルな製品はどこまで必要なのでしょうか?絶対的な必需品を除いて、⽣活者がポスト・コロナの⽣活の中で本当に必要とする商品はどれくらいあるのでしょうか?

その答えは、世代によって異なるでしょう。ミレニアル世代とZ世代にとって、価値の認識は、ステータスからサステナビリティへ、消費から利便性へと、⼀貫して変化しています。新品のAir Jordanを持っている⼈に最初にする質問は、「どこで買えるのか」ではなく「どこで作られたのか」ということです。フィジカルなモノには、社会や環境に対する真のコストを知ることが必然的に求められます。買った製品は、誇りではなく、取り返しのつかない⽣態系の破壊に向かってゆっくりと進⾏していることに⾃ら進んで参加していることを常に思い出させるのです。

プロダクトレス化は、リテールブランドにとって究極のソリューションです。現物がないことで、環境への負荷は⼀気に軽減され、NFTによって、それぞれの商品のユニークさや希少性といった価値を従来通りに保つことができます。またデジタルアイテムは、アルゴリズムによってアバターにバーチャル展開されたり、インスタグラムの写真に3Dレンダリングされたりしても、価値が下がることはありません。

こうした動きは、すでにさまざまな分野で始まっています。スタートアップ企業のDapper Labs、The Fabricantと、ベルリンのアーティストJohanna Jaskowskaがコラボした世界初のブロックチェーンで作成されたデジタルドレス iridescenceは、2019年5⽉に9,500ドルで落札されました。またNianticは、SoftBank、Deutsche Telekom, Orange, SK Telecom,Telus, VerisonなどとともにPlanet-Scale AR Allianceを⽴ち上げ、 5G対応のARコンテンツを独占的に提供し、5Gの世界でのイノベーションが何を意味するかの基準となる消費者向けのAR体験(Niantic Real-World Platform)を実証することを試みています。Microsoftは、⽶陸軍に12万台のHoloLens ARヘッドセットを提供する10年契約を結ぶと発表しています。全てを実現するテクノロジーは、すぐそこにあります。
プレイヤーの準備もできています。
“メタバースの世界”は、もう⽬の前なのです。

Seppo Kruki
Director, Interbrand Japan
Taisuke Kiyono
Senior Designer, Interbrand Japan
Mayleen Yang
Associate Director, Interbrand Seoul

Translated and edited from “Ready Player 2.0”:
https://www.interbrand.com/thinking/ready-player-2-0/