We give our clients the confidence to make Iconic Moves

Move Arenaをつくる5つの消費者力

1. We Before Me(自分よりも、まず人のために)

人々は、自身が他者に与える影響、そして他者から自身に与えられる影響をますます意識するようになっています。かつて経験したことのない速さで、そして世界的な規模で。自己責任か連帯責任かという議論を超えて、人々の間に、生存のための相互依存の認識が高まっているのです。これは非常に高次元の話であり、同時に極めてシンプルなことでもあります。自身の生存率が他者の生存率に依存しているとき、人は自分のために他者もまた順調に事が進む必要があります。自身の健康のために、他者も健康であることが必要なのです。自身が健康でいられるように、他者には距離を置き、手を洗い、病気の時には職場に来ないことを求めます。そして自身がレストランや旅行、交際を楽しめるように、他者が仕事に復帰してくれることを望みます。私たちはお互いを必要としているのです。感情も愛も所属も超え、私たちはいわば「自立した相互依存」によって成立する社会への転換の局面に立たされています。言い換えれば、私は私自身の生存を最大化するために自分の義務を果たさなければなりませんが、あなたも、私の生存を最大化するために、同じように努力しなければならないのです(それが、あなた自身が生き残るためであることはいうまでもありません)。個々の行動が、より大きな集団の結果に直結し、より良い個人の結果をもたらすのです。

CITIES: NOW
世界中の都市が、市民ニーズに合わせて変化しつつあります。バルセロナでは、スーパーブロック再生プロジェクトにより、700万平方メートル(セントラルパークの約2倍の面積)が、車で渋滞する道路から、人々が働き、移動し、遊ぶことができるオープンなコミュニティスペースに生まれ変わりました。パリでは、車が支配する混雑した都心で7万台のスペースを占めていた路面駐車場を撤去し、跡地を公園や緑地、畑へと転換する「職住近接都市」の創造を目指しています。

LOGISTICS: NOW
カスタマーエージェンシー、C Spaceのデータによると、物流企業は顧客とのより情緒的なつながりを模索しています。UPSのドライバーは、地域社会に根ざした存在となるべく、必需品の配送だけでなく、簡単な会話を交わしたり、地元の子供たちと街頭でゲームをするなど、顧客と積極的に交流する時間をとっています。

SHARED OWNERSHIP: NOW
自動車のシェアサービスは、自動車保有による環境負荷に大きな変革をもたらしています。フランスのライドシェアサービス、BlaBlaCarの会員は、約1億回の移動を実現。空席によって排出されるはずだったCO2を89万4,000トン分も削減しました。アメリカでは、カーシェアリングサービスのZipcar 1台につき、13台の自家用車が路上から姿を消しました。ボストンでは、Zipcarによって自動車保有台数が15万台削減されています。

MICRO-MOBILITY: NEXT
超小型EVによる近距離移動サービスの増加は、私たちの移動の多くが、地域社会や地域コミュニティと交流するためであったことを物語っています。マイクロモビリティの投資家にして伝道者でもあるオリバー・ブルース氏は、米国の年間旅客移動距離の1兆4千億マイル分以上、全世界では4兆マイル分以上がマイクロモビリティに転換される可能性があり、この市場は数千億ドルの価値を秘めている可能性があると見積もっています。

CITIES: NEXT
都市計画家やデザイナーは、「ケア」というコンセプトを軸に、モビリティ、インフラ、労働、医療・社会サービスを繋げようとしています。ニューヨーク市では、交通と健康サービスをコーディネートする新しいケア部門の設立が検討されています。

AUTOMOTIVE: NEXT
自動車は伝統的に個人の自由の象徴ですが、コミュニティを重視する都市では、自動車規制や個人レベルでの利用制限などを実施し、自動車のあり方を問い直しています。

2. Survival of the Simplest(究極のシンプルという生存戦略)

近年の強制的な外出・行動制限は、人々が改めて、安全、愛、帰属といった人間の本質的な欲求を見つめ直し、感謝するきっかけとなりました。この状況下で、私たちはシンプルさを求める戦いもシンプルさへの逃避も目撃しています。人々は、すべての決断ややりとりはもとより、接触するあらゆる面に気を配り、削減することを余儀なくされています。

私たちのライフスタイルは、便利さの追求から、機能的・情緒的なニーズを満たす、よりマインドフルなアプローチへとシフトしています。大きな勝利より小さな勝利。取り残されることへの不安を、「みんな一緒」という現実の中での結束に置き換えています。

自分が望むことは何でもできる自由は、誰かとともに正しいことをするチャンスへと切り替えられました。課せられた制限は一時的であっても、生存への挑戦と、これを乗り切ったという満足感は続きます。地球規模で。生き延びることは、それ自体が適応なのです。私たちが物事をシンプルにしたために、この影響は、ずっと尾を引くでしょう。

CITIES: NOW
デンマークのデザイナー、起業家、作家としても知られるイェンス・マーティン・スキブステッド氏は、世界経済フォーラムでの講演で、地球上のあらゆる都市が、他の都市と交通エコシステムを標準化するにはあまりにも独特だが、「どのモデルでも常にシンプルさと歩きやすさが求められている」と語っています。
LOGISTICS: NOW
ダッバーワーラーとは、インド最大の都市・ムンバイで、家庭で調理した弁当を個別に集め、オフィスワーカーの勤務先へ届ける伝統的な配達人のこと。シンプルさに徹した彼らのネットワークは、世界で最も効率的なロジスティクスシステムの一つとして認識されています。だからこそ、フェデックスやアマゾンの幹部が時間を割いてその秘密を学んでいるのです。

TRAVEL: NOW
サイクリングアプリ「Strava」を利用し、自宅周辺のあらゆる道路を走破する「Burbing」がトレンドになっています。メルボルン出身のベン・ロークさんは、自宅の半径3マイルから一歩も出ずに852マイルをBurbingしたそうです。彼は「この旅の醍醐味は、近所の小さな場所を発見することにある」と語っています。

TRAVEL: NOW
2019年、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂は、過去最高の約35万人の巡礼者を記録しました。人々は、旅を決意した大きな要因として、ストレスや鬱の軽減、シンプルさへの憧れなどを挙げています。

LOGISTICS: NEXT
消費者が日常の買い物や食事作りのストレスを軽減しようとする中、ダークストア(ネットスーパー専用の物流センター)対応の「超高速」配送業者が資金を調達し、欧州、アジア、ロシア、南米、米国で拡大しています。人口が密集する都市のバックエンドにダークストアを配し、ラストワンマイルを自転車やスクーターに乗った配達員軍団に託すことで、わずか15分で商品配送を実現するモデルが、2005年にAmazonが実現した2日配送のように、顧客との強い絆になり得ることに賭けているのです。

CITIES: NEXT
プライスウォーターハウスクーパースによる2021年の英国経済見通しでは、ロンドンの人口は21世紀に入り、初めて減少に転じると予測されています。一方で、発展途上国では依然として都市化が進み、2050年には世界人口の2/3が都市に住むと予測されています(現在は50%)。

CITIES: NEXT
パリでは、あらゆる都市機能に徒歩や自転車でアクセスできるようにすることで生活の質を向上させる「15分シティ構想」が計画されています。この都市モデルには、地域内の移動にかかる時間を削減し、近隣での社会活動を促進するだけでなく、市民のプライドや帰属意識を高める狙いがあります。

3. The Sustainability Disconnect(持続可能性の、不可能性)

「持続可能性」を抽象的な議論に埋没させておくことは、「気候変動の危機」の緊急性を人々の日常生活から遠ざけることです。私たちが、地球を「自分ごと」と捉えるために必要なのは、科学、正確な情報、政治的な姿勢、企業の専門用語のすべてを、より多くの人々に届く言葉、感情、行動に置き換えること。そうすれば、抽象的な「環境ではなく、私の環境」として地球を捉えられるでしょう。しかし人々は、企業や政治家、専門家の発言を通して、「私の環境」ではなく「抽象的な環境」についてばかり聞かされています。その会話の中に自分の姿はありません。消費者は行動したくても、どうすればいいかわからないのです。

PEOPLE: NOW
イギリスの調査会社、YouGovとケンブリッジ大学の世論調査によると、67%の人が、政治家が語る気候変動に関する真実を信用していないことがわかりました。さらに71%はネット上のインフルエンサーを信用しないと回答。67%は科学者を信頼すると回答しています。

BRAND: NOW
中国の成人130人を対象としたオンライン消費者パネルから得られた調査結果によると、消費者は企業の環境に対する形式的なアクションや「グリーンウォッシュ」に対して懐疑的である一方で、目に見える環境活動に対してはポジティブに反応することがわかりました。

EVs: NEXT
投資家は、資金調達にとって持続可能性は不可避であると語っています。自動車会社で世界最大の時価総額を誇るテスラは、EVのみを販売し、今年、3倍近いブランド成長を記録しました。

INDUSTRY: NOW
カーボンオフセットは、温室効果ガスの実質ゼロ排出社会の実現に貢献しているのでしょうか?消費者は混乱しており、調査では、49%がカーボンオフセットによる環境への影響がプラスなのかマイナスなのかが分からないと回答しています。

4. Humanity in the Balance(バランスの取れた人間らしさ)

「時間は贅沢品」という時代を生きてきた人々は、隔離や制限によって経験できたはずの可能性や自由な動きが奪われ、時間が盗まれたように感じています。しかし、トンネルの終わりに光が見えてきた今、すべての行動、すべての動き、すべての瞬間を良心と目的を持って生きる「オールイン」という新たなマインドセットが芽生え始めています。

人々は今、消費から創造へ、搾取から貢献へと、行動様式を変えようとしています。制約だらけだったこれまでの日々を無価値にしないためには、自分の生き方を見直す必要があるのです。あるブランドを選ぶうえで大切なのは、もはや「何を得るか」ではなく、「何を創造するか」です。それは「小さな行動が大きな変化をもたらす」バタフライ効果そのものです。つまり、失われた時間を取り戻し、日々の行動から高揚感を創造する方法として、あらゆる選択から意味を見出すことが重要なのです。

PEOPLE: NOW
アメリカの調査会社、ハリス・ポールの調査によると、大多数のアメリカ人は、ブランドがより有意義な生活を送る手助けをしてくれると信じていますが、3分の2は、ブランドの多くはその手助けをする製品を提供していないと感じているようです。ブランドはマーケティング発想を脱し、人々にとって重要な存在へと進化する必要があります。

AIRLINE: NOW
飛行機で旅する人は、飛行機が気候変動にもたらす悪影響を軽減する新たな方法を求めています。フライト情報を一元管理できるアプリ、「App in the Air」で航空券を予約すると、1フライトごとに植樹が行われ、ユーザーは炭素計算機を利用して、フライトによる真の影響を把握することができます。 

MOBILITY: NOW
シェアード・モビリティもまた、交通機関の最大の問題である渋滞や公害を減らすために重要な役割を果たすようになりました。相乗りには、利便性と節約というメリットを凌ぐプラスアルファがあり、コンシャス・ムーブメントの重要な役割を担っています。「空席ゼロ」をモットーとするBlaBlaCarは、その事業が地球規模の貢献を果たせる規模に到達したことを発表しています。

LOGISTICS: NEXT
アメリカの大手調査出版会社、MarketsandMarketsは、世界の水溶性包装市場は2025年までに37億ドルに達し、CAGR(年平均成長率)5.0%を記録すると予測しています。2014年、米国の地方自治体で発生した固形廃棄物の63%は包装材であり、リサイクルや堆肥化されたのはわずか35%でした。

ENVIRONMENT: NEXT
中国は今後、深刻な水不足に悩まされる可能性があります。その対策として、中国の若者は「ウォーターフットプリント(モノやサービスを消費する過程で使用された水量)」を減らす新しい方法に熱心に取り組んでいます。

AIRLINE: NEXT
コンシャス・ムーブメントが持続可能性を重視する中、電動エアタクシーの展開を目指すジョビー・アビエーションはライドシェアの新しい未来として、空中ライドシェアを提唱しています。ジョビー社の航空機は、パイロット付きの4人乗りの航空機で、飛行中はほぼ無音。アプリをタッチするだけで予約可能で、乗客は1回ごとの料金で利用できることを想定しています。ジョビー社は、航空機を大量生産し、パイロット付きのオンデマンドエアタクシーサービスを運営する計画です。航空機は電気駆動で、ゼロエミッションで走行する予定です。

5. Heightened Expectations(高まる期待)

消費者は、これまで以上にブランドが自分たちの背中を押してくれること、個人レベルだけでなく、これまで想像もしなかったスケールで影響を与えてくれることを期待しています。ブランドには、より良いものを作り、改善するだけでなく、人々の生活と関わり続けることで、人生を豊かにすることが求められているのです。

企業の発言と実際の行動には大きな乖離があり、人々はそれに気づいています。差別や不公正を許容しない「ウォークカルチャー」は、ブランドに対して、利益を超え、より大きな善のための無私の行為を通して、人々を魅了することを求めています。

LOGISTICS: NOW
インターブランドのブランド・ベンチマークのうち、あるカテゴリーが他のカテゴリーより先に変化することは珍しいことではありません。しかし、ロジスティクスの加速は劇的で、カテゴリー全体の情緒的なつながりに、突然の大きな変化が見られました。従来、配送は外出中に発生することがほとんどでしたが、ステイホームが強いられる世界で、配達が重要な意味を持つようになったのです。お店に行けないとき、お店がどうやって商品を自分に届けるのかを、より大きく意識することになります。その中で、お客様とドライバーとのやりとりは、社会的・感情的なタッチポイントとなりました。

PEOPLE: NOW
2019年、日本の公共交通機関の利用者数は300億人を突破。10年間で20億人増加しました。

CITIES: NOW
シンガポールは最近、その「ユーザーフレンドリーな建築環境」によって国連から表彰されました。ワシントンDCは、世界で最も利用しやすい公共交通網を持ち、91の地下鉄駅すべてが完全なバリアフリー化を達成しています。

AIRLINES: NOW
2021年、アメリカン、ユナイテッド、デルタなどの航空会社は、アフガニスタン難民の避難を支援し、賞賛を浴びました。

AUTO: NOW
日産は脱石油の戦いに加わるために、10億ドルの「ギガファクトリー」を発表しました。EVの生産を増強し、数千人の雇用を創出する計画です。

LOGISTICS: NEXT
DHLは、パリ協定の目標へのコミットメントに基づき、2030年までに8万台以上の電気自動車を導入する予定です。

MOBILITY: NEXT
多くのブランドが、積極的に社会に貢献するよう、自らを規定しています。トヨタは、クルマだけでなく、持続可能な生活へとその範囲を広げています。静岡に計画中の実験都市「ウーブン・シティ」は、人類の幸福度を高めることを目標に、人々のニーズや好みを尊重し、優先させることに集中する「ヒト中心の街」。人、モノ、情報を取り込んだ新たな次元のモビリティの実現をめざしています。


Translated and edited from “INSIDER VIEW – Five Consumer Forces Shaping Move”:
https://interbrand.com/thinking/five-consumer-forces-shaping-move/