We give our clients the confidence to make Iconic Moves

ブランドのフォーカスは、エクスプレス・アリーナへ

ビジョンやリチュアル(祭祀)、イメージ、そして古くからの慣習と同様、コンセプトや言葉は、シンボルである。その中には揺るぎない真実が映し出されているように見えるが、そこに安住すべきではない。
私たちは、それぞれの文明や時代に応じて、固有のシンボルを生み出すべきである。ハインリッヒ・ツィマー(ドイツのインド言語学者/1890–1943)

複雑な概念やモノ、関係性を伝えるためにシンボルを使用することは、人間を人間たらしめる要因の一つです。コミュニケーションに欠かせないシンボルは、知識を伝達するために不可欠な手段であり、私たち人間が、自身をサピエンス、すなわち「知る者」と定義する所以でもあります。

知の巨人として知られるユヴァル・ノア・ハラリが、ベストセラーを記録した著作「サピエンス全史」(河出書房新社)で、「サピエンスだけが見たことも触ったこともない物事(フィクション)について語ることができる。その能力はサピエンスの言語の最もユニークな特徴であり、さらにフィクションは単に物事を想像するだけでなく、それを集団で行うことを可能にした(要約)」と言及するとおり、たしかに、太古の洞窟美術、古墳、宗教的儀式に至るまで、人類の歴史には、人種の差を超えた意味と力を持つアートや祭祀、シンボルが常に存在しています。

今日、これらのアート、祭祀、シンボルは、かつてないほど多種多様となっています。それらは商業の世界で製品、体験、ブランドへと進化し、その需要と価値は、単に「それが何であるか」だけでなく、「そこに何が込められているか」によって左右されるようになりました。

それらはストーリーを紡ぎ、共感や反発を誘発します。そこには、思想、功績、伝統、起源などの複雑な概念が内包されています。まさに、創造神話そのものです。それらは、ブランドのありたい姿、あるべき姿をユーザーに示します。一足のスニーカーに、それらが込められているのです。

時にそれらは、古代魔法の伝統を踏襲し、自己変革をもたらすかのようです。高級誌を手に取れば、そこには、自信やパワーを満たしてくれる製品や体験が溢れています。

変化する世界の中で自分らしさを形成し、表現したいという人々の基本的欲求に応える製品、体験、ブランドからなる、この幅広く複雑でダイナミックな空間を、インターブランドでは「エクスプレス・アリーナ」と命名しました。
エクスプレス・アリーナを探求することで、ブランドは時代錯誤なラグジュアリーの迷宮や陳腐化から抜け出すことができるのです。

かつて、製品、体験、ブランドは、「経済的資本」を意味していました。しかし、知識経済の到来と2008年の金融危機は、表現の「知的資本」へのシフトをもたらしました。また、ここ数年のインクルージョン(社会的包摂)、エクイティ(公平性)、気候変動に関する議論により、現在は「倫理的資本」を体現できる製品、体験、ブランドの創出が急務となっています。

その結果、自分らしさを表現するための選択肢は、従来の「ラグジュアリー」の概念をはるかに超えるものとなったのです。

エクスプレス・アリーナのレンズは、絞りを開き、硬直した産業都合の視点を捨てて、自己表現に対する人間の根源的な欲求へフォーカスを当てます。

そうすることで、手垢の付いた「ラグジュアリー」というカテゴリーを破り、独創的でグローバル、そして信じられないほど複雑で変化に富んだ魅力的な空間(アリーナ)を明らかにし、アート、場所、サブカルチャー、フェスティバル、そしてサイエンスや持続可能性、デジタル・アーティファクトに至るまで、目を見張るような世界を浮かび上がらせます。

エクスプレス・アリーナに対する私たちの継続的な探求は、常にブランドリーダーにインスピレーションと喚起をもたらすでしょう。その重要性を理解し、個人が自分らしさを表現することを支援するブランドだけが、そのブランドを支持するコミュニティとの共生関係を築き、需要を欲求に、忠誠心を帰属に、関連性を象徴性に高めることができるでしょう。
その追求こそが、今の時代にふさわしい固有のシンボル=ブランドの創造に続く道なのかもしれません。

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