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Pigeon

北澤 憲政 様
ピジョン株式会社
代表取締役社長

Best Japan Brands 2024
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

この1-2年を振り返ってみて、御社の事業やブランドにとってどのような年でしたでしょうか。

各地でコロナ明けとなる中、日本事業においては、コロナ禍は出生数の減少だけでなくインバウンドによる売上も減少していましたが、昨年から高額商品に力を入れていることもあり、国内売上は増加に転じてきています。一方、シンガポール事業は一昨年の好調から一転して昨年は伸び悩み、中国事業も一昨年からの上昇基調から、昨年第4四半期に発生した原発処理水の問題による「日本ブランド」へのネガティブキャンペーンの影響に加え、中国ブランドが力をつけていることもあり、売上を落とす形となりました。
また、欧米中心にランシノ(Lansinoh)ブランドで展開しているランシノ事業に関しては、欧米の方のコロナに対する捉え方の違い等もあったせいか、コロナ禍でも堅調に推移しました。社会環境の変化に対する各国・各エリアの人々の意識の違いが、ビジネスに少なからず影響してきていることを改めて感じた1年でした。

組織や事業全体として (担当部門として)、対応する領域や範囲はどのように変わってきているでしょうか。

子育てをするママやパパ、特に共働き夫婦のライフスタイルや志向に合わせた電動製品(電動鼻吸い器、電動さく乳器、哺乳びんスチーム除菌乾燥器など)など、高付加価値な高額商品にも注力しており、自社製造に拘らず外部とのパートナーシップも進めながら、ピジョンブランドがカバーする領域を広げてきています。
また、エイジアップで対象を広げて、中国で3歳以上のキッズ向けスキンケア商品を昨年発売しましたが、今後グローバルでも展開していきたいと考えています。ママの産後ケア製品などについても昨年日本で発売しましたが、出生率が低下するエリアが世界中で多くなってきている中で、このようにビジネスの領域を広げていくことは 当社にとって重要な課題であると捉えています。

想定を越える社会や人々の変化に対して、事業として、ブランドとしてどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

エリアによって多少のばらつきはあるものの、各地のローカル企業製品のクオリティの底上げにより「日本ブランド」「日本製」であることが、以前ほどポジティブに働かなくなってきました。改めてしっかりとピジョンブランドを打ち出しながら戦っていく必要があると感じています。
また、従来の商品ラインアップに関しても、お客様の好みが多様化してきており、「個」を意識したビジネスが重要になってきていると感じます。小ロットでSKUを増やし、さらに売り方も工夫する。そうすることで高い売価でも直感的に興味を持って買ってもらえるようなモノづくり、売り方に注力していかねばなりません。
また、防災時への対応として、赤ちゃんのための防災に役立つ商品「sonaetta(ソナエッタ)」シリーズの備蓄を日本の各自治体に提案しています。年始の能登半島地震の際には経済産業省からの要請を受け、被災地へ災害用授乳カップを提供するなど、どんな時にも赤ちゃんの笑顔が守れるような活動を行っています。
さらに、AIなど新技術に対しても、商品開発からコミュニケーションまで、幅広い領域で可能性を感じており、今後の高付加価値化に向けて検討するテーマの一つになっています。

社員の働き方や意識は、どのように変わったと感じているか。ワークライフバランス、効率性やエンゲージメント、社内コミュニケーションといった社内カルチャー、社員の価値観などに、どのような影響があり、それにどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

当社の存在意義「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」が、社員に根付き、さまざまな発想や企画、行動につながってきています。昨年当社が社員に実施したエンゲージメント調査でも、存在意義への共感は非常に高いスコアとなって現れています。
昨年は、企業理念やその中心にある存在意義の社員へのさらなる理解・浸透のために、8カ国16拠点で合計21回、組織のキーパーソンである管理職向けに体験型説明会を開催しました。また、我々が参加する経営会議の中でも、さまざまな活動や施策が存在意義に則ったものとなっているかを常に意識して議論するようにしています。
存在意義の浸透に大事なのは、会社が社員に押し付けるのではなく、存在意義に即した活動によって、社員が感動を体験しそれを共有することだと考えます。2019年に導入し、現在は日本事業にだけ展開している『Pigeon Frontier Awards』では、有志の社員が自部署の仕事や組織に関係なく、楽しみながらアイデアを出して商品化や様々な活動に取り組むことができ、さらに優れたものは表彰をしています。今後も、こうした社員が存在意義を体現し、そこで得た感動体験を共有できるようなことを強化していきたいと考えています。

パーパスや経営の理念、ビジョンなどの重要性が論じられていますが、それらを事業活動の中で、どのような形で活かしていらっしゃるでしょうか(実体化に向けてどのような取り組みをされているでしょうか)。

環境負荷軽減や社会課題への貢献、存在意義実現のための人材・組織風土など、存在意義に紐づく5つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、それらの達成度合いによって、存在意義の実現を測っています。
昨年は「Pigeon Green Action Plan」を策定し、赤ちゃんの未来に豊かな地球を残すために、ピジョンができること、やるべきことに落とし込み、活動を開始しました。
今後も存在意義の実現に向けて活動を進めていくことで、赤ちゃんのため、より良い社会の実現のため、貢献するブランドとして進化していきたいと考えています。