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Ajinomoto

藤江 太郎 様
味の素株式会社
取締役代表執行役社長

Best Japan Brands 2024
ブランドリーダーズインタビュー

これまでにない変容を続ける環境の中で、ランクインしたリーディングカンパニーは今後の成長のためにどのようにその変化を捉え、対応しようとしているのか。各社のブランドリーダーが5つの質問に答えるインタビューシリーズ。

この1-2年を振り返ってみて、御社の事業やブランドにとってどのような年でしたでしょうか。

2022年に社長に就任し、ASV経営をしっかり引き継ぐとともに、トコトン本気でASVを追求し長期の高み(目標)に向かう「中期ASV経営」へと進化してきた。現在は構造改革のステージから成長のステージにシフトしたと考えています。志(パーパス)を、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」と進化させ、コーポレートブランディングは経営マターであるという考え方のもと、パーパスブランディングを全社で取り組んでいます。

組織や事業全体として (担当部門として)、対応する領域や範囲はどのように変わってきているでしょうか。

コーポレートブランディングのターゲットは生活者だけではなく、従業員、B2B顧客、投資家・株主等全ステークホルダーであること、そしてB2C事業のみならずB2B事業も含めてグループ一丸でブランディングを推進していくことを決め、スコープを拡大してコーポレートブランディングに取り組んでいます。
また、進化した志(パーパス)含めOur Philosophyへの従業員の共感や自分ごと化がとても重要であり、ブランディングにおいても人事部門との連携をより強化しています。

想定を越える社会や人々の変化に対して、事業として、ブランドとしてどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

生活者のインサイトに寄り添うことも重要だが、VUCAの時代においては、自分たちは何のために存在するのか、世の中に対して何ができるのか、ぶれない軸を持ちコミュニケーションすることが重要です。ぶれない軸として「志(パーパス)」があり、「志(パーパス)」をドライバーとして、アミノサイエンス®でWell-beingを体現するブランドとして認知されることを目指し、各種コミュニケーションを展開しています。また、紛争や人権をはじめEthicsが問われる世の中になってきており、それへの対応如何でブランドへの多大な影響も考えられることから、現在スタディを行っており、今後、議論や具体的検討をスタートさせたいと考えています。
コミュニケーションにおいては、達成出来たことだけでなく、中長期の目標(エベレスト)に向かってどのように進もうとしているのか、その道筋や取り組みを示すことも重要になってくると思います。日本企業は真面目で、欧米企業と比較して、進行中の取り組みや未来について語ることが苦手な印象があります。
サステナビリティの目標も然りですが、トップとしては、これらを日本のみならず積極的に世界に発信し、中長期の高みに向かって進めていることを上手に伝えることで、ステークホルダーの共感を高めていきたいと考えています。

社員の働き方や意識は、どのように変わったと感じているか。ワークライフバランス、効率性やエンゲージメント、社内コミュニケーションといった社内カルチャー、社員の価値観などに、どのような影響があり、それにどのように対応してきていらっしゃるでしょうか。

コロナ禍を経て働き方は大きく変化し、各人がワークライフバランスを考える時代になってきましたが、そのなかで「働き方改革」から進化し「働きがい」がより求められる時代になってきたと思います。人事部門では「すべての従業員が働きがいを感じる会社」を目標に掲げ、多様な人材の活躍推進や手挙げ制度による挑戦する風土の醸成を図っています。
そして最も重要なのは、従業員一人ひとりが志(パーパス)を自分ごと化することであり、各人の志と味の素グループの志(パーパス)の重なりを見出す取り組みを推進しています。私自身も対話を重視し、一方通行の説明ではなく双方向のコミュニケーションに大半の時間を割き、質疑を通して各人が自分なりに理解・共感し、エンゲージメントが高まるように働きかけています。
また、コーポレートブランディングのターゲットは全ステークホルダーであり、部門を超えたER(Employee Relations)・PR・IR・SR(Sustainability Relations)の横連携を常に意識しています。
現在は、2023年に進化させた志(パーパス)を、従業員の間で自分ごと化していくファースト・ステージの段階にあり、志(パーパス)にも含まれる、味の素グループのユニークネス&競争力の源泉である「アミノサイエンス®」についても、共感推進活動は緒についたばかりです。従業員一人ひとりが自分ごと化を図り、理解・共感できるようにすることで、成長加速の礎としていきたいと考えています。

パーパスや経営の理念、ビジョンなどの重要性が論じられていますが、それらを事業活動の中で、どのような形で活かしていらっしゃるでしょうか(実体化に向けてどのような取り組みをされているでしょうか)。

Our Philosophyの最上位に志(パーパス)を掲げ、その志を実現する取り組みとしてASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value, 事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組み)を位置づけ、すべての事業活動はASVの考え方のもと志(パーパス)実現に繋がるものとして推進しています。「中期ASV経営」では、昨年から3ケ年中期計画作成を止め、長期のありたい姿からバックキャストした高い目標にチャレンジする経営に変え、2030ロードマップを策定しました。ローリングフォーキャストを導入し実行力を磨きながら、トコトンASVを追求して高みを目指すことを志向しています。各部門の2030ロードマップもトコトンASVを追求し、高度な目標に向かっているか、取り組みはパーパス実現に繋がっているかという視点で見直しをしています。そして、ブランディングや企業成長の原動力は無形資産、中でも人財資産だと位置づけ、それを豊かにする活動にも注力しています。味の素グループの「志」は、「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」であり、比較的広い概念でもあるので、従業員一人ひとりが自らの人生の「志」との重なる部分を見つけていきませんか…といった、投げかけを行っています。重なりが見つかれば、自然と「志」への「熱意」も向上し、働きがい・生きがいのある人生にもつながるのではないかと考えています。
企業の社会的責任として、ネガティブインパクトの最小化だけでなく、世の中に対してポジティブに貢献していくポジティンブインパクトを追求していますが、そのインパクトの見える化、定量化にチャレンジしていきたいと思います。