We give our clients the confidence to make Iconic Moves

Japan Branding Awards 2025 贈賞式レポート

SILVER:Kanadevia(カナデビア株式会社)
技術の力で人類と自然の調和に挑む企業グループへの145年目の変革 

2002年の造船分離から20年余り、「Hitz日立造船」というブランドのもとで事業展開を行ってきたが、その事業実態は「環境」「機械」「インフラ」を中心としたSDGsやESGに貢献する事業。こうしたブランドと事業実態の乖離を埋めるべく、「自分たちは何者か?」という議論からスタートした。「Japan Branding Awards(JBA)」は、優れたブランディングの取り組みを形式知化し、企業が共通軸で学び合う場をつくることを目的とした、日本初のブランディング専門アワードだ。本稿では、実際の業務内容との乖離が大きくなったブランドを、今後の事業成長の方向性に合わせて再構築を行い、ブランディングの目的を企業理念体系を体現できる人材づくり、人的資本経営に資する取り組みと位置づけ、経営課題の一つでもあった優秀な理系人材の獲得増加につなげたカナデビアに注目する。

「造船会社」からの脱却
新社名に込めた伝統と革新とは 

カナデビアは今年で創業145周年を迎える資源循環・脱炭素化などの分野で展開する企業だ。幕末に北アイルランドから来日したE.H.ハンター氏が造船所として設立した「大阪鉄工所」が始まりで、その後に事業を拡大し、創業から約60年を経過した戦時中に日立製作所の傘下に入り、社名を「日立造船」に変更した。それから約80年を経過した2024年に2度目の社名変更を行い、現在の名称になった。

伝統のある企業でありながら2度目の社名変更に踏み切った理由は、脱炭素や資源循環という事業実態と「造船」という名称の乖離、BtoB企業であるためそもそも業務内容が外部に見えにくいことから、認知不足による採用活動への支障という切実な課題があったことだ。 ここでのポイントは、決して「社名変更ありき」だったのではなく、ブランド戦略を構築して初めてそのギャップを埋めるための手段として社名変更に踏み切ったという点だ。
今回の受賞では、同じ悩みを抱えるBtoB企業が多い中で、企業の存在理由を明確化するとともにブランドコンセプトを「技術の力で、人類と自然の調和に挑む」と定義。社内外への丁寧な浸透により、2026年卒の大卒以上の新卒応募数は昨対比4割アップ等の実利に繋げた点が評価された。カナデビア専務執行役員でCPO(Chief People & Culture Officer)の土肥太郎氏は、「当社は社名や事業内容は変化しましたが、技術力をベースとした挑戦と調和を重視する姿勢は大事に守ってきましたので、新社名を通じたブランディングではその思いを結実させました」と受賞の喜びをにじませた。 

カナデビア 専務執行役員 ピープル&カルチャー本部長 兼
Group Chief People & Culture Officer 
土肥 太郎氏

「ブランド作りは人作り」
大胆な変革が社内に新しい風を吹かせる 

実は、同社は戦後の財閥解体によって日立製作所の傘下から外れていたが、日立の名前は社名にそのまま残されていた。加えて、祖業で主力だった「造船」は2022年に分離、事業の実態は「環境」「機械」「インフラ」を中心としたSDGsやESGに貢献する内容へと進化しており、「造船」を含むコーポレートブランドと事業実態に乖離が生じていた。

そこで、事業内容を再整理したうえで、まずは今後の継続した事業成長に向けて、企業の存在意義を改めて明確化した。近年は「脱炭素化」「資源循環」「安全で豊かな街づくり」といった領域でも、BtoBやBtoG(自治体向け)の事業が中心となっている。いずれの事業も船の建造に必要な要素技術から派生していることから、ブランディングに当たってはその高い技術力を前面に押し出すことにした。 

そして、ブランドコンセプトを「技術の力で、人類と自然の調和に挑む」に決定、同社が掲げる企業理念「私達は、技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し、豊かな未来に貢献します。」の解像度をより高める方向で新社名・新ブランドの検討を進めた。その結果、「奏でる」という日本語と、道を意味するラテン語の「Via」を組み合わせた造語として、人類と自然の調和を意味する「カナデビア」を採用したのである。

まずは社員への新ブランドの認知拡大とエンゲージメント向上を目指して、商号変更日の2024年10月1日には当時の会長、社長、労働組合委員長などが参加する記念イベントを本社エントランスの展示スペースで開催した。約500名の社員が参加し、この様子は国内外の事業所・グループ会社に中継された。また、2025年10月にはブランド変更から1周年記念イベント「Kanadevia Day」を東京で開催し、さらに同12月にはファミリーイベントも催した。また、商号変更に当たって、まずは社員に対してその理解と共感を得るべく、今後の成長戦略も併せてトップ自らがすべての事業を訪問し、丁寧に対話を重ねてから2024年10月の商号変更を迎えたということも特筆すべき事項である。

社外に対しては、特に優秀な理系人材の確保が重要な経営課題となっていたため、企業の存在意義を伝えるCMや、YouTubeと連動させた理系人材にリーチするコミュニケーション施策を展開した。その結果、2026年卒の大卒以上の新卒応募数は昨対比4割アップ、特に注力した技術系採用はここ数年で最も多い人数と充足率を確保、キャリア採用においても過去最多の採用数を記録するなどの劇的な成果を確認でき、その効果は「Kanadevia」ブランドをともにするグループ各社の採用面にも波及している。 
土肥氏は「ブランド作りは人作りである」と述べ、人的資本経営を軸としたこの変革が、同社の新しい文化を創り出しつつあることを強調した。