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Japan Branding Awards 2025 贈賞式レポート

SILVER:JTB(株式会社JTB )
コロナ禍で売上7割消失から新たな成長軌道への転換へ  

「Japan Branding Awards(JBA)」は、優れたブランディングの取り組みを形式知化し、企業が共通軸で学び合う場をつくることを目的とした、日本初のブランディング専門アワードだ。新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、未曾有の危機に直面したツーリズム業界において、1912年創立という長い歴史を持つJTBグループもまた、売上の約7割が消失し、創立以来ともいえる厳しい局面を経験することとなる。その中で同社は、単なる事業回復にとどまらず、これからの時代にふさわしい企業のあり方を問い直し、事業とブランドの両面からの変革に踏み出した。 

旅行会社から「交流創造企業」へ
人・地域・組織をつなぎ、感動を生み出すJTBの挑戦

JTBグループは、旅行という枠組みにとどまらず、人と人、人と地域、人と組織をつなぐことで価値を生み出す「交流創造事業」を新たな事業ドメインとして再定義した。
コロナ禍を契機に策定された新経営ビジョン「地球を舞台に、『新』交流時代を切り拓く」は、その方向性を社内外に明確に示すメッセージとなった。

しかし、社内外調査を通じて浮かび上がったのは、JTBグループが目指す姿と社会からの認知との間に存在するギャップであった。
旅行以外の事業領域の認知不足や、「交流創造企業」としてのイメージの弱さなど、ブランドの再構築が不可欠であることが明らかになったのである。
この課題認識を起点に、JTBグループは2022年から本格的なリブランディングに着手した。 

JTB 執行役員 ブランディング・マーケティング担当 広報担当(CMO) 
風口 悦子氏 

変革を支えた「The JTB Way(MVV)」の再整理

この変革の中核となったのが、2022年の新経営ビジョンのもとで再整理された「The JTB Way(MVV)」である。これはJTBグループとしてのありたい姿と、そこに至るための価値観や行動指針を明確にしたものだ。ブランドの中核概念であるブランド・プロミスでは、従来の「感動や喜び」に加え、「成果の実現」や「サステナブルな社会への貢献」を、JTBグループが社会に対して約束する価値として位置づけ直した。
さらに、その実践を支える社員共通の価値観として「ONE JTB Values(信頼を創る/挑戦し続ける/笑顔をつなぐ)」を新たに策定した。約9,000名の社員アンケートや経営層による議論を通じて、企業活動と社員一人ひとりの判断・行動の指針を言語化したのである。
トップダウンの方針提示に終わらせるのではなく、現場での自律的な実践を後押しする基盤づくり。それこそが、JTBグループのリブランディングの大きな特徴といえる。

荒井寛子氏(当時JTBグループ本社 ブランド推進担当部長)

社員の自発的な行動から生まれるブランド体験

The JTB Wayを体現するにあたり、社内ではさまざまな取り組みが展開された。
経営層向けの勉強会や中間管理職へのブランド・ワークショップ、全社員向けeラーニングを通じて、「交流創造事業」を経営と文化の両面から全社に浸透させていった。
全国150以上の各組織で行われている「Smile活動」では、社員一人ひとりが自組織の課題に向き合い、小さな実践を積み重ねることで、ブランドの価値を自ら体現している。
また、ステークホルダーとの共創を体現する取り組みとして、2024年には「JTB交流創造キャンバス」を始動。スポーツ×交流をテーマに実施された第1回には、364件のアイデアが寄せられ、社員投票には770名以上が参加した。社内外の多様な視点を起点に、交流の可能性を社会へとひらく試みである。
地域共創の分野では、高松市中央卸売市場内に開設された「SICSサステナブルラウンジ/クセモノズ」が特徴的な事例だ。未利用魚など地域資源に新たな価値を加え、フードロス削減や地域の持続可能性向上に貢献するこの拠点は、交流創造事業を具体的な体験として示している。

長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」へ

JTB 執行役員 ブランディング・マーケティング担当 広報担当(CMO)の風口 悦子氏は、
「2026年1月に発表した長期ビジョン『OPEN FRONTIER 2035』のもと、私たちは交流創造事業の価値をさらに磨き上げていきます。人や地域、組織をつなぐ力を通じて、社会課題の解決と豊かな未来づくりに貢献していきたいと考えています。」と語る。
危機をきっかけに自らを問い直し、価値観・事業・ブランドを一体で再構築してきたJTBグループ。
社員の実践と社会との共創を重ねながら進められてきた同社のリブランディングは、「交流創造企業」という新たなアイデンティティを、着実に社会へと根付かせつつある。