ブランドリーダーズ インタビュー

青谷 宣孝

株式会社NTTドコモ
プロモーション部長

※部署名・役職名は、Best Japan Brands 2017インタビュー当時のものです。

ブランド戦略は、ビジネスの事業領域の変化とともに変わります。NTTドコモは携帯通信事業を基盤に人々の生活を豊かにする新しいプラットホームの構築を進めており、「協創」の考え方を基にパートナーと共に社会課題を解決していく新しいブランドを目指しています。

NTTドコモでは、「いつか、あたりまえになることを。」というブランドスローガンを掲げられています。
これには、どのような背景や着想があったのでしょうか?

NTTドコモは、「新しいコミュニケーション文化の世界を創造する」を企業理念としており、この企業理念がブランドスローガンの前提となっています。2017年は創立25周年を迎えますが、これまで、iモードをはじめとして新しいコミュニケーションの世界をつくってきた自負があります。一方で、この先の2020年と、さらにその先を見据えると、今後私たちがどのような事業を通し、どのような価値を提供していくのか、改めて定義する必要が出てきました。2015年の中期戦略が契機でした。
スマートフォンは急激に普及し、社会インフラの一つになりました。24時間、365日、半径5メートル以内にずっと置いているものは、携帯端末以外にありません。人々のいちばん身近にあるサービスを提供していますので、広く社会や世の中全体に役立つコミュニケーションを創造していきたいというのが根本的な想いであり、これからのIT社会、IoT社会の中で、今までにない便利さ、快適さ、心に響く感動、生活の価値を提供する会社になっていくことを改めて定義したのが、ブランドスローガンの背景です。

ブランドスローガンは、どのような役割を果たしているのでしょうか?

2015年の中期戦略発表時には、携帯通信市場が縮小していくことが予見されており、新しいビジネスの柱をつくる必要がありました。そこで、「協創」の概念の下、様々なパートナーの方と一緒になって、新しいサービスや今までにない価値を創造していく取り組みを「+d」として始めました。このブランドスローガンは、その旗印なのです。
協創である以上、NTTドコモだけのブランド価値が問われるものではなくなりました。一緒に取り組むパートナーの方々と共に、社会価値を創造するブランドとなる必要があります。2015年12月からdポイントをスタートさせ、現在ではコンビニエンスストアやファストフード業界など、多岐にわたる分野の企業さまと一緒にプロモーションを展開しています。パートナーの方々と上手くコラボレーションしながら、新しい社会価値をつくっていくことが必要です。これは、自社サービスを自社のお客様だけに提供していたこれまでとは、大きく異なる考え方です。ブランドスローガンは、この考え方を推進する役割を果たしています。

今後、どのようにブランドとビジネスを共に成長させていこうとお考えでしょうか?

NTTドコモでは、協創の概念を基にした「スマートライフ事業」で、エンターテインメントの分野はもとより、さらに人々の暮らしに密着したサービスを拡充していく計画です。健康管理や未病対策、決済サービスなど、より多くの人々の生活が、より便利になり、より豊かになるサービスをワンストップで提供していきます。また、通信ネットワークやセンサー、認識技術などを、農業や漁業などに応用していく試みも行っています。スマートフォン上のサービスだけでなく、事業や産業そのものを支援していく考え方です。ですので、d系サービスはキャリアフリーを基本に提供していますし、スマートライフ事業はBtoBtoCの性質を持ったビジネスです。その点で、NTTドコモは、携帯電話会社というよりも、総合商社に近い存在になりつつあるかもしれません。そして、とてもありがたいことに、いろいろな業種、業態の方々から「何か一緒にやりませんか」と、お声がけをいただけるようになってきました。NTTドコモとなら何か新しいことができるのではないか、という期待をしていただいているのだと思います。ブランドの外からの見え方が、少しずつ変わってきたことを実感しています。


NTTドコモ:社会的課題の解決をめざす +dの挑戦
https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/about/philosophy_vision/strategy/challenge/index.html

一方で、それは、これまで培ってきたものを変えることではありません。コミュニケーションサービスは社会インフラであり、安定的に提供されなければいけません。通信がつながるというのはサービスの根幹で、特に災害時には顕著です。「あのとき携帯電話がつながって助かった」という声を耳にするたび、私たちの仕事がいかに人々の生活の根幹を支えているかを実感します。
いつも身近にあることの安心感と、社会的課題の解決を目指し、新しい分野を切り拓いていく考え方は、NTTドコモのブランドの基盤です。2016年から「style’20」というプロモーションをスタートさせ、新しい街づくりや社会のあり方、新たな産業の発展とその支援について訴求していますが、単純ないちサービス企業ではないことを正確にお伝えすることで、NTTドコモとしてのアイデンティティの強化やブランドの差別化につながると考えています。

事業とブランドの変化によって、競合環境やNTTドコモのポジショニングも変わっていくのでしょうか?

その通りです。これまでは、自社でサービスを開発・提供し、収益を上げる考え方でしたが、協創の概念によって、協業体制が広がり、顧客の捉え方も広がります。例えば、ドローンを使った輸送事業では、宅配会社さまと協創するとことになります。お客様へ最終サービスを提供するのは宅配会社さまですが、バックヤードの通信インフラはNTTドコモが支援しているイメージです。自動運転では、クルマ自体は自動車メーカーさまが製造を行いますが、NTTドコモが自動運転を実現する通信モジュールを提供する形です。サービスをご利用になるお客様からは直接見えなくても、その後ろにはいつもNTTドコモが支えている、ということが増えていくのではないかと思います。先にも述べましたが、BtoBtoCブランドの側面が増していくでしょう。。

最後になりますが、今後のブランディングについての取り組みをお伺いさせてください。

「いつか、あたりまえになることを。」というスローガンを、共通の価値観として持つことが大切です。従来の通信事業で培ってきた価値観やブランド価値と、これからつくりあげていくNTTドコモの価値は異なるものになっていきます。通信事業とスマートライフ事業で両立するブランドを、お客様やパートナーの方々とのコミュニケーションを含めて、上手くバランスを取り、つくりあげていく必要がありますが、「言うは易く行うは難し」といった感があり、一朝一夕にはいきません。まずは、社会課題を解決する「+d」の姿勢や取り組みを外に向かって積極的に実践・発信していくことで、それを見聞きした社員一人ひとりが「いつか、あたりまえになることを。」の意味を感じ取っていく、良い循環をつくっていきたいと考えています。
私が率いるプロモーション部では、「視点を変える」がスローガンです。着任以来、もう3年ほど言い続けています。NTTドコモ全体の事業構造そのものが変わりつつある中で、社員一人ひとりの意識も変化していかなければなりません。つまりそれはブランドそのものが変わっていくこととイコールですので、常に視点を変えていきながら、ブランドを構築していきたいと思います。

青谷 宣孝
株式会社NTTドコモ
プロモーション部長